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2014年4月20日日曜日

書評 『自爆する若者たち-人口学が警告する驚愕の未来-』(グナル・ハインゾーン、猪俣和夫訳、新潮選書、2008)-25歳以下の過剰な男子が生み出す「ユース・バルジ」問題で世界を読み解く


「ユース・バルジ」(Youth Bulge)というコトバと概念が本書のキモである。「ユース・バルジ」とは、増大する若年層が人口構成に偏りを生み出した状態を指した表現である。

しかるべきポジションをゲットできず居場所がない野心的な若者たち過剰にあふれかえる彼らこそ、暴力やテロを生み出し、社会問題の根源となっている。これは現在だけでない、歴史的に見てもそうなのだ。「少子高齢化」ばかり耳にする現在の日本では考えにくい事態であるが、これが世界の現実だ。イデオロギーや主義も、しょせん跡付けの理由に過ぎないのだ。

こんなインパクトある内容を、これでもかこれでもかと描いた本書は、日本語訳が出版されてからすでに6年、原著のドイツ語版が出版されてから8年になる。だが、もしまだ読んでいないのであれば、いまからでも遅くない、ぜひ読むべきだと強く薦めたい一冊だ。


過剰にあふれかえる「息子たち」が問題だ

ドイツ語版のタイトルは、》 Söhne und Weltmacht: Terror im Aufstieg und Fall der Nationen 《 の全訳である。直訳すれば『息子たちとワールドーパワー-諸国家の興亡におけるテロル-』となる。

日本語のタイトルだと気づきにくいが、ドイツ語 Sohn(ゾーン)の複数形 Söhne(ゼーネ)に意味がある。「若者たち」ではない、「息子たち」なのだ。複数形ではあるが、「娘たち」は含まれないのが著者の強調するところだ。

もちろん、男子もまた母親から生まれる以上、出生率という観点から女子もかかわってくるのだが、暴力行為がその本質であるテロにかんしては、直接的に大きく関係しているのは「息子たち」である。しかも、長子相続の対象からはずれた二男・三男以下の息子たちだ。

そういえば、日本にも『楢山節考』で有名な深沢七郎という作家に『東北の神武たち』という作品があったと思いだす。『楢山節考』は「姥捨て山」をテーマにした作品だが、『東北の神武たち』は神武(ずんむ)と呼ばれていた東北の農家の二男・三男を扱ったものだ。土地を相続できない二男・三男たちは、「口減らし」(・・あまりにも直截な表現だ)のため追い出される。

だが、「ユース・バルジ」(Youth Bulge)とは、増大する若年層が人口構成に偏りを生み出した状態を指した表現だ。貧しさから追い出される『東北の神武たち』とは異なり、「食糧革命」以後の状態で出生率が高いと、地位やポジションを求めた野心的若い男子があふれかえることになる。25歳以下の男子が暴力的な存在で死亡率も高いことは、世界的な「常識」である。

「9-11」の同時多発テロの背景には、この「ユース・バルジ」がある。これはまた、アメリカの軍事戦略家の発想だと著者はいう。すでに少子高齢化が始まっている中国は、その観点においては、アメリカの軍事戦略家にとって「敵」ではないのだ。

ビジネス面だけではなく、軍事面においても中国はアメリカの敵ではないという指摘、これはきわめて重要だろう。

 (ドイツ語ペーパーバック版2008年 現代の危機に焦点をあてたカバー)

この点がフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドとの視点と力点の置きどころの違いだろう。文化論や文明論で説明しない点は共通しているが、ドイツ人社会学者ハインゾーンは、「人口爆発」とその規模にに焦点を置いている。トッドのように「家族制度」ではなく、過剰にあふれかえる「息子たち」の規模が問題なのだとしている。

フランス的発想とドイツ的発想の違いだと一般化することはできないが、人口減少問題を移民受け入れで解消してきた「普遍主義志向」の強いフランスとは異なり、「排他的で自民族中心志向」が強く、つねに過剰な人口に悩まされてきたドイツならではの違いではある。

中世においては「人口爆発」問題をスラブ圏への「東方植民運動」、初期近代以降は新大陸である南米と北米への「移民」で解消してきたのがドイツである。いや、そもそもの欧州域内で発生した「ゲルマン民族大移動」(4~5世紀)からして「人口爆発」がその原因であった。


「ユース・バルジ」問題を歴史的に跡づける

「ユース・バルジ」問題は、いま現在の問題だけではない。歴史的に跡づけとさまざまなことが見えてくる。

その意味では「Ⅲ 人口統計に見る征服者の出自とヨーロッパの世界征服という「奇蹟」」という章が、きわめて示唆的な内容である。

いまイスラーム世界で起こっていることは、16世紀から始まる初期近代(=近世)にヨーロッパで起こったことそのものだ。この指摘が意味することは歴史的イマジネーションを鍛えるうえでもきわめて重要だ。

15世紀末の1492年、レコンキスタを完成したスペイン王国はムスリムとユダヤ人を追放したが、その同じ年にはジェノヴァ人コロンブスがアメリカを「発見」するための航海に出発している。この年に欧州域内と欧州域外への巨大な人口移動が開始されたのである。

ヨーロッパで「人口爆発」が起こった理由として著者が指摘しているのは、ペスト(黒死病)で人口激減した結果、産児制限が撤廃され、自慰が禁止されて、「生めよ殖やせ」が奨励されたことである。1648年に終結した三十年戦争では、とくにドイツは人口が1/3に激減したが、その後は「人口増大」政策に大転換している。

この結果、ヨーロッパでは第一次世界大戦が勃発する1914年頃まで人口増が続いたのである。

(ドイツ語ハードカバー初版2006年 欧州もユースバルジが・・・を表現)

ヨーロッパの「ユース・バルジ」はアメリカ新大陸に向かった。スペインとポルトガルからは主に南米へ、英国とフランスからは北米とカリブに向かう。先住民を暴力的に押しのけ殺戮し、ヨーロッパ世界がアメリカ大陸を蹂躙して収奪の限りを尽くしたことは歴史的事実である。さらに、19世紀にはドイツ人とイタリア人も北米と南米に移民する。

ヨーロッパが世界を征服したのは。この「人口爆発」が背景にあったことはきわめて重要だ。

これについては、書評 『1492 西欧文明の世界支配 』(ジャック・アタリ、斎藤広信訳、ちくま学芸文庫、2009 原著1991)-「西欧主導のグローバリゼーション」の「最初の500年」を振り返り、未来を考察するために を参照されたいが、アタリの議論に「人口統計学」を重ね合わせると、よく理解できるのである。また、ハインゾーンが「所有権概念の確立」(所有権≠占有権)を重視している点も興味深い。

1900年まではヨーロッパの人口は総計4億6千万人、すなわち世界人口の 1/4 がヨーロッパ人だった(!)のだが、いまや世界におけるムスリム人口は 2010 年に 16 億 人を超え、2030 年には世界人口の 26% に達すると推計されている。2030年には世界人口の 1/4 がイスラームを信じるムスリムとなるのである! この状況を前提に思考しなくてはならないのだ。

世界全体の総人口が83億人を超えるなかで、ヨーロッパの占める比率がさらに大幅に低下するということである。相対的な位置が大幅に低下するのである。

世界の人口の1/4がヨーロッパ人だったからこそあり得たのが、ヨーロッパによる世界征服だっとことを考えれば、ヨーロッパ人がムスリム人口増大に「心理的な圧迫感」を感じるのは不思議でもなんでもない。非白人人口が増大するアメリカも同様だが、それ以上にヨーロッパ人の圧迫感は大きいことが推察される。

いま欧州各地で蔓延する極右も、思想的なものというよりも、労働力過剰による失業率高止まりが原因と考えるべきだろう。「人口増大」はなくても仕事が減れば労働力過剰となる。そう考えれば、日本でも同様の状況にならないという保証もない。

もちろん、ムスリム人口の増大がそのまま世界のイスラーム化になるわけではないだろう。だが、「グローバル化」の意味は、イスラーム圏における「ユース・バルジ」という人口爆発」問題を抜きにして考えることがナンセンスであることがわかるはずだ。

いまは「ハラール」という点でビジネス面でのポジティブな面ばかりを見ている日本のビジネスパーソンも、ムスリム人口増大は、複眼的に見る必要があるだろう。「少子高齢化」は先進国の「常識」であっても、先進国以外では「常識」ではないのである。

人口統計だけが確実に信頼できる未来予測の素材だということは、口を酸っぱくして強調しておきたい。これはビジネスに限らず、ほぼすべての事象について適用可能なのだ。

だからこそ、この本は絶対に読んでおくべきなのである。





目 次

はじめに
日本語版に寄せて
本書のテーマについて

Ⅰ 古くて新しい世界敵-ユース・バルジ(Youth Bulge)からの過剰な若者たち
Ⅱ 若者たちはどこに住んでいるか?
Ⅲ 人口統計に見る征服者の出自とヨーロッパの世界征服という「奇蹟」
Ⅳ 超大国の昨日と明日-若者の増加と厳格な所有権構造
Ⅴ ユース・バルジと国境なきテロリズム
Ⅵ 入れてもらえる者、もらえない者
参考文献


著者プロフィール  

グナル・ハインゾーン(Gunmnar Heinsohn)
1943年ポーランド生れ。ベルリン自由大学で社会学、歴史学、心理学、経済学、宗教学、ジャーナリズムを学ぶ。社会学・経済学博士。1984年にブレーメン大学終身教授に招聘され、1993年から同大学でヨーロッパ初の「ジェノサイド研究所」を主宰。現代文明の底に流れるものを探ろうと、『なぜアウシュヴィッツか』(1995)、『神々の創造』(1997)、『ジェノサイド事典』(1998)などのほか著作は多岐にわたる。(出版社サイトより)。

訳者プロフィール  

猪股和夫(いのまた・かずお)
1954年生れ。静岡大学でドイツ文学を専攻。卒業後、『小学館独和大辞典』の校正に従事。校正スタッフのチーフを務めた。訳書に『父の国ドイツ・プロイセン』(W・ブルーンス)がある。(出版社サイトより)。





<関連サイト>

Gunnar Heinsohn - Die Jugendblase (Söhne und Weltmacht)
・・「ユースバルジ」(youth bulge)は、ドイツ語では die Jugendblase

「ユースバルジ」(youth bulge)とは?(wikipedia英語版)
The expansive case was described as youth bulge by Gary Fuller (1995). Gunnar Heinsohn (2003) argues that an excess in especially young adult male population predictably leads to social unrest, war and terrorism, as the "third and fourth sons" that find no prestigious positions in their existing societies rationalize their impetus to compete by religion or political ideology. Heinsohn claims that most historical periods of social unrest lacking external triggers (such as rapid climatic changes or other catastrophic changes of the environment) and most genocides can be readily explained as a result of a built-up youth bulge, including European colonialism, 20th-century fascism, rise of Communism during the Cold War, and ongoing conflicts such as that in Darfur and terrorism.


<ブログ内関連記事>

書評 『民衆の大英帝国-近世イギリス社会とアメリカ移民-』(川北 稔、岩波現代文庫、2008 単行本初版 1990)-大英帝国はなぜ英国にとって必要だったのか?
・・本国で雇用がつくりだせない以上、増大する失業者が社会問題にも発展しかねない。そこで活用されたのが、植民地だったのである。そして、この基本姿勢は、大英帝国がもはや存在しなくなった現在も続いているのである。現在もっとも人口過剰、とくに若年層の失業問題に悩んでいるのは中近東諸国であるが、かつての大英帝国や大日本帝国のように、植民地に失業者を大量に送り出すことは、もはや叶わない話である。自国の意のままになる植民地もつことは、21世紀の現在はありえないからだ。

書評 『アラブ革命はなぜ起きたか-デモグラフィーとデモクラシー-』(エマニュエル・トッド、石崎晴己訳、藤原書店、2011)-宗教でも文化でもなく「デモグラフィー(人口動態)で考えよ!

書評 『中東激変-石油とマネーが創る新世界地図-』(脇 祐三、日本経済新聞出版社、2008) 
・・過剰人口、とくに若年層の失業問題をかかえる現在の中近東諸国は、大英帝国とおなじ問題をかかえているのだが、はたして解決策は・・・?

書評 『中東新秩序の形成-「アラブの春」を超えて-』(山内昌之、NHKブックス、2012)-チュニジアにはじまった「革命」の意味を中東世界のなかに位置づける
・・「ユース・バルジ」の議論をつかって中東情勢を読み解く歴史家の現代史記述

書評 『世界史の中の資本主義-エネルギー、食料、国家はどうなるか-』(水野和夫+川島博之=編著、東洋経済新報社、2013)-「常識」を疑い、異端とされている著者たちの発言に耳を傾けることが重要だ
・・「食料は一般人の常識とは異なり、1910年代の化学肥料の発明というテクノロジーによってむしろ過剰な状態が続いている。だからこそ食料価格が下落しがちなのであり、そのために先進国は補助金によって農家の所得補償を行わざるを得ないのである。そもそも食料が過剰でなければ地球全体で人口が増加するはずがないという川島氏の主張には説得力がある」

(2014年6月17日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)





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