本日(4月29日)は「昭和の日」で国民の休日。もともとは先帝陛下(=昭和天皇)の「天皇誕生日」として休日でありました。
わたくしも「昭和時代・後期」に生まれ育ったので、「昭和時代」はリアルタイムで体験しております。
とはいっても自分が生まれる前の「昭和時代・前期」は親や教師の話を聞いただけで実体験をもっているわけではありません。いまいちリアリティをもっておりません。「平成時代」も26年目なので、平成生まれの若い世代ならなおさらでありましょう。
先日、ようやく東京・九段の「昭和館」にいってみました。近くにいく用事があったので立ち寄った次第です。
「昭和時代」、とくに「戦前」と「戦中」そして「戦後復興期」が常設展示の中心です。入場料は300円。平日でしたのでかなりすいてました。
たまたま、同時に開催されていたのが昭和館特別企画展の「昭和の働く女性 夢と希望と困難と」(入場無料)。会期は、2014年3月15日~5月11日)。これはたいへんよい企画展でした。
「戦前」と「戦中」そして「戦後復興期」が展示の中心になるのは昭和館の常設展示と同じですが、戦時下の「総動員体制」のもとで女性の社会進出が促進されたことがよく理解できる内容になっています。
徴兵制のもと男が出征して不在となった労働現場に、代替労働力として女性が活用されたことによって、社会進出が進展したというわけですね。男子が大量に戦死し、男女比率が極端に隔たってしまった戦後ソ連も同じ状況でありました。
その後、戦後の「高度成長期」に「専業主婦」という形態が一般化したことは最近では一般的な知識になってきたと思いますが、基本的に日本女性は有史以来、一貫して働いてきたわけです。
戦争によってファッションなどライフスタイル変革が中断してしまったのは残念ですが、ワーク(労働)にかんしては戦時中の総動員体制のもとでかえって女性の社会進出が進展したということは記憶しておくべきことだと思います。
組織人事からビジネスキャリアを開始し、しかも「男女雇用機会均等法」施行一年前にその研究を命じられたということもある「均等法世代」のわたくしにとっては、大いに関心のある内容の企画展でありました。
「戦時中」の勤労動員については常設展もあわせて見るとよいでしょう。勤労動員で旋盤の前で働く女学生の写真はけっこうインパクトありますね。常設展で勤労奉仕の女学生たちの写真をみると、なんと工作機械や溶接作業までそこまでやっていたのかというオドロキも!
「昭和の働く女性-夢と希望と困難と-」(昭和館・東京九段下)-「昭和」に限定されているのがちょっと残念ですが、ぜひ見ておく価値のある企画展です。会期は、2014年3月15日から5月11日まで。
<企画展概要>
特別企画展 「夢と希望と困難と~昭和の働く女性~」
開催期間: 3月15日(土)~5月11日(日)まで
※月曜日休館(4月28日(月)、5月5日(月)は開館)、5月6日(火)は 開館、5月7日(水)は休館
時間: 10:00~5:30(入館は5:00まで)
場所: 昭和館3階(東京都千代田区九段南1-6-1)
地下鉄「九段下」駅4番出口から徒歩1分
入場料 : 無料(常設展示室は有料)
<参考>
『モダンガール論』(斎藤美奈子、文春文庫、2003)の単行本初版(2000年)は、副題に「女の子には出世の道が二つある」とあった。
立派な職業人になることと、立派な家庭人になること。職業的な達成(労働市場で自分を高く売ること)と家庭的な幸福(結婚市場で自分を高く売ること)は、女性の場合、どっちも「出世」なのである。したがって、女の子はいつも「二つの出世の道」の間で揺れてきた(単行本 P.8)
なお、『モダンガール論』(斎藤美奈子)でも指摘されているが、「良妻賢母」は前近代のものではないのだ。あくまでも「近代イデオロギー」の産物だということには注意しておく必要がある。「良妻賢母主義」を国是とすべしと提唱したのは、伊藤博文内閣で初代文部大臣となった森有礼である(1885年)。
<関連サイト>
フォトレポート 来館者から「戦中、戦後の女性の力強さを感じることができた」との声も。「夢と希望と困難と~昭和の働く女性~」特別企画展開催中。(厚生労働省)
昭和館 公式サイト
<ブログ内関連記事>
日本が「近代化」に邁進した明治時代初期、アメリカで教育を受けた元祖「帰国子女」たちが日本帰国後に体験した苦悩と苦闘-津田梅子と大山捨松について
NHKの連続テレビ小説 『カーネーション』が面白い-商売のなんたるかを終えてくれる番組だ
『聡明な女は料理がうまい』(桐島洋子、文春文庫、1990 単行本初版 1976) は、明確な思想をもった実用書だ
「移動図書館」-これもまたぜひ後世に遺したい戦後日本の「昭和遺産」だ!
電気をつかわないシンプルな機械(マシン)は美しい-手動式ポンプをひさびさに発見して思うこと
書評 『村から工場へ-東南アジア女性の近代化経験-』(平井京之介、NTT出版、2011)-タイ北部の工業団地でのフィールドワークの記録が面白い
(2012年7月3日発売の拙著です)
Tweet
ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。
ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。
禁無断転載!
end