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2012年4月2日月曜日

福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、いまから140年前に出版された「自己啓発書」の大ベストセラーだ!


「天は人の上に人を造らずして人に下に人を造らず」といえり。

このフレーズではじめる福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、開化時代の明治日本を切り開いた超重要な一冊であるだけでなく、慶應義塾の枠組みを超えて、ひろく日本全体を啓蒙、啓発してきた一冊である。

慶應義塾の関係者でないわたしが、このフレーズをはじめて知ったのは小学生高学年(?)のとき、たまたま熱心な担任教師が教育界ではひじょうに有名であった林先生(?)を招いて行われた「研究授業」のなかで知ったものである。

「独立自尊」。これもまた、もうひとつ重要な福澤諭吉のフレーズである。現在にいたるまで、この「独立自尊」の精神で生きてきたつもりだ。今後も、生きる姿勢として、この精神い基づいていきたいと思う。

大学時代に、福澤諭吉のこの有名なフレーズは、前者がフランス啓蒙思想、後者はアングロサクソン的なプラグマティズムにきわめて近い思想だということがわかったが、それでも明治時代のはじめに、きわめてわかりやすい日本語で啓蒙思想を述べたことの意味はきわめて大きい。

『学問のすゝめ』は、明治5年(1872年)著者37歳のときの出版、現代風にいえばまさに「自己啓発書」のはしりだろう。スマイルズの原著を中村正直訳が『西国立志編』(明治4年)として翻訳した『自助論』(Self-Help)とならんで、明治の啓蒙時代を代表する自己啓発書の古典である。

時代の転換期にはあたらしい思想や、あたらしいコトバが求められるものだが、福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、いま読んでもじつに inspiring なコトバに充ち満ちている。

大学に入った年の1981年に読んで以来、実に30年ぶりに文庫本を開いてみて、ところどころに引いた線を読み返してみると、じつに鋭い、じつに洞察力の深い! ほんとうに驚くばかりだ。

慶應には社会人になってからの一時期、会社勤めをしながら、それこそ「自己啓発」の一環として、三田の慶應義塾外国語学校に自腹で通って中国語を学んだだけの関係だ。慶應が職場から前々職のオフィスに一番近く、しかも一番月謝が安かった。

わたしの母校である一橋大学はもともと商法講習所という私塾から出発したものだが、設立にあたってはその趣旨に共鳴した福澤諭吉が明治7年に「商学校ヲ建ルノ主意」という設立趣意書を執筆している。「実学」の府として、慶應義塾と一橋大学がビジネス界でそれなりの存在感があるのは、福澤諭吉の思想によるところが大きい。

本日(4月2日)から2012年度の新学期が始まることだし、慶應関係者の皆様とは解釈が違うかもしれないが、私が面白いと思った箇所をいくつか引用してみたいと思う。

引用は、大学一年のときに読んだ講談社文庫版の『学問のすゝめ』(土橋俊一校訂・校注、講談社文庫、1972)から行います。残念ながらこのエディションはすでに絶版です。なお引用文中 の「学者」とは「学ぶ者」という本来の意味でつかわれています。なお、太字ゴチックは引用者(=わたし)によるもの。

「かりそめにも政府に対して不平を抱くことあらば、これを包みかくして暗に上を怨むことなく、その路を求めその筋に由り、静かにこれを訴えて遠慮なく議論すべし。天理人情に叶うことならば、一命をも抛(なげう)ちて争うべきなり。これすなわち一国人民たる者の分限と申すものなり」(初編)

「知識見聞を開くためには、あるいは人の言を聞き、あるいは自ら工夫を運らし、あるいは書物をも読まざるべからず。ゆえに学問には文字を知ることは必用なれども、古来世の人の思うごとく、ただ文字を読むのみをもって学問とするは大なる心得違いなり」(二編 端書)

「第一条 独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず。
独立とは自分にて自分の身を支配し他に依りすがる心なきをいう・・(中略)・・独立の気力なき者は必ず人に依頼す」(三編 一身独立して一国独立すること)

「あるいは私(わたくし)のこともはたしてその功を期し難しといえども、議論上において明らかに見込みあればこれを試みざるべからず。未だ試みずしてまずその成否を疑う者はこれを勇者というべからず」(四編 附録)

「学問に入らば大いに学問すべし。農たらば大農となれ、商たらば大商となれ。学者小安に安んずるなかれ。粗衣粗食、寒暑を憚らず、米も搗くべし、薪も割るべし。学問は米を搗きながらもできるものなり。人間の食物は西洋料理に限らず、麦飯を喰いみそ汁を啜(すす)り、もって文明の事を学ぶべきなり」(十編 前編の続き、中津の旧友に贈る)

「学問はただ読書の一科にあらずとのことは、すでに人の知りたるところなれば今これを論弁するに及ばず、学問の要は活用にあるのみ。活用なき学問は無学に等し」(十二編 演説の法を勧むるの説)

「人間万事十露盤(そろばん)を用いて決定すべきものにあらず、ただその用うべき場所と用うべからざる場所とを区別すること緊要なるべし。世の学者経済の公論に酔うて仁恵の私德を忘るるなかれ」(十四編 世話の字の義)

「言語を学ばざるべからず。文字に記して意を通ずるはもとより有力なるものにして、文通または著述等の心掛けも等閑(なおざり)にすべからざるは無論なれども、近く人に接して直ちにわが思うところを人に知らしむるには、言葉の外に有力なるものなし。ゆえに言葉はなるたけ流暢にして活発ならざるべからず」(十七編 人望論)

あるいは書生が「日本の言語は不便利にして文章も演説もできぬゆえ、英語を使い英文を用うる」なぞと、取るにも足らぬ馬鹿をいう者あり。按ずるにこの書生は日本に生まれて未だ十分に日本語を用いたることなき男ならん。国の言葉はその国に事物の繁多なる割合に従いて次第に増加し、毫も不自由なきはずのものなり。なにはさておき今の日本人は今の日本語を巧みに用いて弁舌の上達せんことを勉むべきなり」(十七編 人望論)


文語体に慣れていないと読みにくいと思うかもしれないが、江戸時代に主流であった候文(そうろうぶん)と比べたら格段に読みやすい。短いセンテンスで歯切れのよい日本語だ。

「~ならざる・べからず」というのは、「~でなければ・ならない」という二重否定の表現。二重否定によって強調する手法である。これさえ理解しておけば原文で読むのも、ひじょうに困難ということはないはずだ。

「スピイチ」(speech)に「演説」という訳語をつくりだした福澤諭吉だけのことはある。さまざまな文庫版が出版されているので、きわめてロジカルで明快な日本語の文章は、ぜひ原文のまま味読してほしいものだ。

福澤諭吉は、けっして古くない。下手な自己啓発書を多読するヒマがあったら、この一冊こそ熟読玩味すべきである。最悪、現代語訳でも読まないよりマシだろう。






『学問のすゝめ』 目 次   
シーケンス
パートI
パートII
- 本の終わり
-人は同等なること
パートIII
-国は同等なること
-一身独立して一国独立すること
パートIV
-学者の職分を論ず
- 付録
パートV
- 明治1月の7ワード
パートVI
-国法の貴きを論ず
7
-国民の職分を論ず
第VIII部
-わが心をもって他人の身を制すべからず
第IX部
-学問の旨を二様に記して中津の旧友に贈る文
パートX
-前編の続き、
11
-名分をもって偽君子を生ずるの論
12
-演説の法を勧むるの説
-人の品行は高尚ならざるべからざるの論
13
-怨望の人間に害あるを論ず
第十四コード
-心事の棚卸し
-世話の字の義
XVシリーズ
-事物を疑いて取捨を断ずること
十六シリーズ
-手近く独立を守ること
-心事と働きと相当するべきの論
十七コード
- 人々は上に見える

<関連サイト>

学問のススメ - 青空ライブラリ 
・・なんせ140年前の(!)の出版ですから、著作権が切れてひさしいのでウェブで全文を読むことができます


<ブログ内関連記事>

福澤諭吉の『文明論之概略』は、現代語訳でもいいから読むべき日本初の「文明論」だ

「脱亜論」(福澤諭吉)が発表から130年(2015年3月16日)-東アジアの国際環境の厳しさが「脱亜論」を甦らせた

書評 『日本文明圏の覚醒』(古田博司、筑摩書房、2010)-「日本文明」は「中華文明」とは根本的に異なる文明である 

『論語と算盤』(渋沢栄一、角川ソフィア文庫、2008 初版単行本 1916)は、タイトルに引きずられずに虚心坦懐に読んでみよう!

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)
・・「幕末維新の激動期を生ききった福澤諭吉は、「恰(あたか)も一身(いっしん)にして二生(にせい)を経(ふ)るが如く」と述懐しているが、ドラッカーの人生もまたそのとおりであるといっていいだろう」

語源を活用してボキャブラリーを増やせ!-『ヰタ・セクスアリス』 (Vita Sexualis)に学ぶ医学博士・森林太郎の外国語学習法・・明治時代の先達に学ぶべき事は多い

The Greatest Salesman In the World (『地上最強の商人』) -英語の原書をさがしてよむとアタマを使った節約になる! ・・自己啓発書の世界的中心は米国である

『自助論』(Self Help)の著者サミュエル・スマイルズ生誕200年!(2012年12月23日)-いまから140年前の明治4年(1872年)に『西国立志編』として出版された自己啓発書の大ベストセラー

書評 『「ビジネス書と日本人』(川上恒雄、PHP研究所、2012)-高度成長期の日本で一大ジャンルに成長した「ビジネス書」とは何か?

(2015年11月3日、2018年2月2日 情報追加)


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