本日8月6日は68年目の「原爆の日」。
「世界で最初」に原爆を投下された広島、そしてその3日後に「世界最後」の被爆地(・・であってほしい)長崎の被害者のみなさまには心から哀悼の意を表し、すべての死者の鎮魂を祈ります。
ここに写真は、日米のいずれでもない旧ユーゴスラビアのスロヴェニア出身のバンド「ライバッハ」(Laibach)のミュージックビデオの冒頭の約1分をスキャンしたものです。
いわゆる当時の「第三世界」からみるとどう見えるかについて示したものです。このミュージックビデオは日本で製作されたのではないですが、なぜか日本語の字幕がついています。
以下、キャプションごとに画像をみておきましょう。
●米国は広島と長崎に原爆を落とした
●これは真珠湾攻撃に対する日本への最後の復讐でもあった
●原爆は一瞬にして35万5千人の命を奪った
●強者は弱者を踏みにじり新世界がはじまった
そういったアメリカ主導の「新世界」、すなわち冷戦構造のなかで、「第三世界」のリーダーの一人となったユーゴスラビアのチトー大統領がでてきたというのがミュージックビデオのストーリーですが、戦勝国のアメリカでも敗戦国の日本でもない第三者(=サード・パーティ)の視点というのは興味深いものがあります。
原爆は一瞬にして35万5千人の命を奪ったというのは、事実関係に誤りがあるのではないかと思いますが、立場によって歴史観をはじめとする視点は異なって当然、ということを示しているわけであります。
わたしは「反米」ではありませんが、米国政府から公式に「謝罪」が行われない限り、感情のわだかまりは今後も続くと考えております。この構図は戦勝国と敗戦国だけでなく、植民地と被植民地でも同じでしょう。
それほど歴史観のすり合わせは難しい。冷戦構造崩壊後の日米関係もまたしかりということなのです。
ことしの原爆の日には、ベトナム戦争を描いた『プラトーン』(1987年)のオリバー・ストーン監督も初めて広島と長崎、沖縄を訪問するとのことですが、影響力のある人が一人でも多く現地を訪れ情報発信していただきたいと思います。
まずは事実関係を正確に把握すること。すべてはここから始まります。解釈の違いは、いかんともしがたい。
<関連サイト>
Laibach - The Videos (スロヴェニアのバンド)
<ブログ内関連記事>
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(2014年8月6日 情報追加)
(2012年7月3日発売の拙著です)
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