(写真家ロバート・キャパによる「決定的瞬間」 wikipedia より)
本日(2014年6月6日)は、「Dデイ」(1944年6月6日)から70年になります。
「Dデイ」(The D-Day) とは「ノルマンディ上陸作戦」のこと。最終的に 300万人(!)近い「連合国軍」の兵員が、英国からドーバー海峡を渡ってフランスに上陸を行うことになった「史上最大の作戦」決行の日です。
それまで「枢軸国ドイツ」に対して劣勢に立っていた「連合国」が、アメリカの全面的コミットメントによって反転攻勢に転じるキッカケとなったきわめて重要な戦いでありました。
写真は、『ちょっとピンボケ』の著書で有名な、写真家ロバート・キャパによるもの。ピンボケした写真がかえって「現場」での迫真性を感じさせます。
「ノルマンディ上陸作戦」を描いた映画 『史上最大の作戦』(1962年)はマーチのテーマ曲が有名ですが、子どもの頃、TVで何度も再放送しているので繰り返し見た記憶があります。
『史上最大の作戦』の英語オリジナルタイトルは The Longest Day(いちばん長い日)。1944年6月6日が「いちばん長い日」とされているわけです。
「いちばん長い日」といえば、映画 『日本のいちばん長い日』(1967年)を想起します。「日本のいちばん長い日」とは、1945年8月15日のこと。大東亜戦争(=太平洋戦争)の「終戦の詔勅」がでて戦争が終わった日ですね。
天皇陛下がマイクの前で録音した「玉音放送」のレコードディスク争奪戦をめぐる「長い一日」の記録ですね。原作者の大宅壮一は、英語タイトルをもじってつけたのでしょうか。
『史上最大の作戦』も 『日本のいちばん長い日』も、いまでは知る人も少ないかもしれません。戦争が終わってから20年くらいに製作された映画には、たとえモノクロ映画でもあっても、まだまだ戦争のリアリティがにじみ出ているような気がします。
第二次大戦では「枢軸国」として戦い、敗戦にとって壊滅的な被害を被った日本ではありますが、アメリカによる占領後は、『史上最大の作戦』のような「連合国」の勝利を高らかに歌い上げた映画が、なんどもTVで再放送されていたわけです。とにかくナチスは悪である、という刷り込み。
まあ、こういうエンターテインメント大作をつうじて、わたしのような「戦後生まれの日本人」は知らず知らずのうちに「教育」(=洗脳?)されていったのかもしれません。映画というエンターテインメントのもつ影響力は、想像以上に大きなものがありますね。
戦勝国となったのはアングロサクソン、なかでもアメリカの存在感がきわめて大きかったことです。これは「太平洋戦争」だけではなく、「欧州戦線」においても同様だったわけです。以後、米英アングロサクソン中心の世界が現在まで続いているわけです。
本日は、「ノルマンディ上陸作戦」のDデイ(1944年6月6日)から70年であります。70年前というのは、あまりにも昔の話のように感じますが、それでも歴史的事実としてアタマのなかに入れておかねばなりません。
フランス北部のノルマンディで開催された「ノルマンディ上陸作戦70年記念式典」には日本とイタリアは招待されていませんが、ドイツは招待されています。これは直接の交戦国として、敵味方を超えた和解の意味からでしょう。
ドイツがはじめて招待されたのは1984年の「40年記念式典」ですが、はじめて出席したのは2004年の「60年記念式典」から。敗戦国にとっても、わだかまりがなくなるのは二世代はかかるということなのでしょう。
(ノルマンディー上陸作戦の作戦計画図 wikipedia より)
<関連サイト>
70th D-Day anniversary in Normandy (The Battle of Normandy 公式サイト DDay-Overload.com)
Normandie 1944-2014 (facebookページ)
D-Day ノルマンディー上陸作戦カラー映像 (YouTube)
70th D-Day anniversary in Normandy (The Battle of Normandy 公式サイト DDay-Overload.com)
Normandie 1944-2014 (facebookページ)
D-Day ノルマンディー上陸作戦カラー映像 (YouTube)
映画 『日本のいちばん長い日』 予告編
Saving Private Ryan (1998) - Official Trailer (ノルマンディ上陸作戦を描いた映画としてはスピルバーグ監督による映画『プライベート・ライアン』(1998年)のほうが現在では有名かもしれない)
●野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断
なぜ、今、ノルマンディー上陸作戦を取り上げるのか(野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第1回) (野中郁次郎、ダイヤモンドオンライン、2014年5月30日)
・・軍事戦略につうじた世界的経営学者が「史上最大の作戦」のリーダーシップについて徹底分析
Dデイ70周年~史上最大の作戦の意義(野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第2回) (野中郁次郎、ダイヤモンドオンライン、2014年6月6日)
もしノルマンディー上陸作戦が1年早く敢行されていたら(野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第3回) (野中郁次郎、ダイヤモンドオンライン、2014年6月13日)
・・「歴史から教訓を得るには、史実の背後にある関係性を洞察する力が不可欠である。「歴史のif」、すなわち、史実に基づくシミュレーションは、その力を養う最良の方法だ。そこで今回は、ノルマンディー上陸作戦における3つのifを挙げてみたい」 凡庸な歴史家にはない発想
連合軍の勝利を決定づけた分岐点-消耗戦と機動戦を統合する (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第4回)
実践知リーダーとしてのチャーチル (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第5回)
・・「フロネティック・リーダーシップ」 ← 「フロネシス」(実践知 アリストテレス)
偉大な凡人、アイゼンハワー (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第6回)
・・「実践知リーダー」としてのアイゼンハウアー。同じく「実践知リーダー」としてのチャーチルとの違いは?
アイゼンハワーのリーダーシップ (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第7回)
・・「一言で言ってしまえば、アイゼンハワーは、「最も普通ではない状況に置かれた最も普通の人」だった」、「観念論を排して、リアリズムを重視する姿勢は、このような数々の経験知に裏打ち」
軍事技術・戦術におけるイノベーション【1】電撃戦 (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第8回)
・・「適切な目標設定をしたとき、ドイツ人は能力を発揮する。第2次世界大戦においても、ドイツ軍は新たな戦い方を生み出した」
【特別版】日本の敗戦から69年目に想う<前編> (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第9回) (2014年8月15日)
【特別版】日本の敗戦から69年目に想う<後編> (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第10回) (2014年8月22日)
軍事技術・戦術におけるイノベーション【2】 水陸両用作戦<前編> (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第11回) (2014年9月19日)
軍事技術・戦術におけるイノベーション【3】水陸両用作戦<後編> (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第12回) (2014年10月24日)
軍事技術・戦術におけるイノベーション【4】水陸両用作戦<米国海兵隊編> (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第13回) (2014年10月31日)
歴史は繰り返すのか ~22年ぶりのノルマンディー再訪記 (野中郁次郎のリーダーシップ論-史上最大の決断 第14回) (2014年11月7日)
<ブログ内関連記事>
「日本のいちばん長い日」(1945年8月15日)に思ったこと
・・「日本のいちばん長い日」とは昭和の代表的ジャーナリスト・大宅壮一によるドキュメンタリーである
書評 『未完のファシズム-「持たざる国」日本の運命-』(片山杜秀、新潮選書、2012)-陸軍軍人たちの合理的思考が行き着いた先の「逆説」とは
書評 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子、朝日出版社、2009)-「対話型授業」を日本近現代史でやってのけた本書は、「ハーバード白熱授業」よりもはるかに面白い!
書評 『自爆する若者たち-人口学が警告する驚愕の未来-』(グナル・ハインゾーン、猪俣和夫訳、新潮選書、2008)-25歳以下の過剰な男子が生み出す「ユース・バルジ」問題で世界を読み解く
・・「ユース・バルジ」という「人口爆発」による若年層男子の行き場の無さがファシズムにつながったと説く著者の見解は、なによりも「青春」を礼賛したムッソリーニやヒトラーユーゲントとして「若者」を組織化したヒトラーを考えると納得がいく
『「経済人」の終わり』(ドラッカー、原著 1939)は、「近代」の行き詰まりが生み出した「全体主義の起源」を「社会生態学」の立場から分析した社会科学の古典
映画 『ハンナ・アーレント』(ドイツ他、2012年)を見て考えたこと-ひさびさに岩波ホールで映画を見た
・・ドラッカーとは異なる「政治思想」という観点から「全体主義の起源」を思想的に解明した哲学者アーレント
書評 『国際メディア情報戦』(高木 徹、講談社現代新書、2014)-「現代の総力戦」は「情報発信力」で自らの倫理的優位性を世界に納得させることにある
・・第二次世界大戦の勝者はアングロサクソンを中心とした「連合国」
(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)
end