(東京・新大久保駅近くの「イスラム横町」 筆者撮影)
友人が出演している芝居を新宿のミニシアターで観劇したあと、「イスラム横町」に立ち寄ってみた。新宿・歌舞伎町から歩いて数分なのだが、JR新大久保駅周辺は歌舞伎町以上にエキゾチックな界隈である。
途中にコリアタウンがある。数年ぶりに訪れたが、韓国料理店の数は依然として多い。だが、かつてほどの賑わいが感じられないのは、韓流ブームがすでに去ってしまったからだろうか。それとも嫌韓派のデモを避けるためだろうか。
それに比べて新大久保駅周辺は、あいかわず国際的というか、それも中国大陸や朝鮮半島だけではない、イスラーム世界も含めたエキゾチックな様相を呈している。だから、歩いていて面白い。
「イスラム横町」の存在を知ったのはつい最近のことだ。ネット記事を読んで知った。これはぜひ行ってみたいものだと思ったので、新宿に用事があるついでに立ち寄ってみることとしたわけだ。
面白いことに Google Map で「イスラム横町」で検索すると、すぐに場所が表示される。ごく狭い地域に、イスラームのハラールフード関連の食材店と飲食店がある。
そのなかでもっとも有名なのがグリーン・ナスコ(Green Nasco)。JR新大久保駅改札から道路をはさんで北側に少し歩くとすぐに目に飛び込んでくる。店頭で肉の串焼を売っている。
日曜日とはいえ夕食の時間帯では込んでいるだろうと思い、それを避けるためにまずレストランに入る。4人掛けのテーブル席が6つほどあり、空いていたテーブルに座る。
こういうときにネットのブログ情報は有用だ。ブログ記事を読んで、あらかじめ食べたいと思っていたが、メニューをもらって確認してからマットン・ビリヤニ(1,000円)を注文。メニューのウラはモロッコ料理で有名なクスクスである。
(ビリヤニのメニュー3種)
ビリヤニとはインドの米料理。カレー味のスパイスとコメと肉などで作るものだ。この店では羊肉のマトンと鶏肉のチキン、卵の三種がある。「マットン」という表記は笑ってしまうが、mutton というつづりだから、けっして変ではない。
(マットン・ビリヤニ)
注文したら、あっというまに出てきたマットン・ビリヤニはドライカレー風でじつにうまい。マトン味がしみこんだコメ、その下に敷き詰められたマトン肉がうまい。コメはもちろん細長くてパサパサしたインディカ米である。つけあわせは、ヨーグルトにひたした野菜。
北海道を除く本州では、子ヒツジのラム肉しか流通しなくなってしまったので、羊肉のマトン料理はインドカレーを除けば、なかなか食べる機会がない。マトンを食べることができてじつにうれしい。
(コメの下にはうまいマトン肉)
この店はインド料理だが、アラブ料理もトルコ料理も扱っているので、イスラームのハラール適用である。したがって、もちろんアルコールはない。タダで飲める水があれば十分だ。
国際化でもグローバル化でもコトバはどちらでもいいのだが、イスラーム世界もまたグローバル世界の重要な要素であることを肌で感じることのできるスポットである。「イスラム横町というネーミングもまた面白い。
タイの首都バンコクのアラブ人街と比べると、まだまだだなという印象は否定できないが、それでもこういう一角が日本全土に増えていくことは、たいへん良いことだと考えている。
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新大久保にある「イスラム横丁」に行ってみた ハラル専門店が増殖しているワケ(東洋経済オンライン、2015年5月5日)
イスラム横丁の人情 (菅瀬晶子・国立民族学博物館助教、初出:毎日新聞 2014年5月8日)
ハラルフードなら新大久保「イスラム横丁」で 小さなモスクもある外国人の街 (How To Read Maps、2013年4月30日)
イスラム横丁街角食堂。「ナスコ フードコート」 (カレー細胞 -The Curry Cell-、2014年2月28日)
Nasco Halal Food (公式サイト 英語)
・・食材の写真と価格表示(日本円)が記載されている
<ブログ内関連記事>
■インド文明圏とイスラーム
「ナマステ・インディア2010」(代々木公園)にいってきた & 東京ジャーミイ(="代々木上原のモスク")見学記
書評 『日本のムスリム社会』(桜井啓子、ちくま新書、2003)-共通のアイデンティティによって結ばれた「見えないネットワーク」に生きる人たち
書評 『ハビビな人々-アジア、イスラムの「お金がなくても人生を楽しむ」方法-』(中山茂大、文藝春秋社、2010)
タイのあれこれ (18) バンコクのムスリム
バンコクのアラブ人街-メディカル・ツーリズムにかんする一視点 ・・この記事では、バンコクに長期滞在しているアラブ人について書いてある。
■ラムとマトンの羊肉
サッポロビール園の「ジンギスカン」を船橋で堪能する-ジンギスカンの起源は中国回族の清真料理!?
書評 『世界屠畜紀行 The World's Slaughterhouse Tour』(内澤旬子、解放出版社、2007)-食肉が解体される現場を歩いて考えた自分語り系ノンフィクション
書評 『食べてはいけない!(地球のカタチ)』(森枝卓士、白水社、2007)-「食文化」の観点からみた「食べてはいけない!」 ・・羊と羊肉についての記述がこの本にはある
フランスの童謡 「雨が降ってるよ、羊飼いさん!」(Il pleut, Il pleut, bergère)を知ってますか?
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