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2015年5月7日木曜日

書評 『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか-中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる-』(石平、PHP新書、2015)-首尾一貫した論旨を理路整然と明快に説く


テレビのコメンテーターとして、舌鋒鋭く日中問題について語る石平(せき・へい)氏。日頃から、石平氏が執筆する記事は読んでいるが、書籍としてまとまったものを読むのは今回が初めてだ。

『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか-中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる-』(石平、PHP新書、2015)は、まさに「首尾一貫」して「理路整然」という四文字熟語を二つ並べたような、簡潔でかつ密度の濃い一冊である。本書はこの問題にかんしては決定打ともいっていい内容ではないかと思う。

「覇権」とは「ヘゲモニー」(hegemony)ともいう。国際政治学の用語をつかえば「国際秩序」ということにある。
  
現代の国際秩序は、第二次世界大戦に勝利をおさめた米国主導のパックス・アメリカーナ(=アメリカによる平和)である。全盛期にくらべると弱体化がみられるが、それでも「法と正義」にもとづく「海洋自由の原則」による国際秩序は、第二次世界大戦後の経済的繁栄を支えてきた。

石平氏は、アジア太平洋地域という「場」における「国際秩序」を、前近代の「中華秩序」近代日本が主導した大日本帝国による「大東亜共栄圏」、そして日本を打ち負かした米国による「パックス・アメリカーナ」の3つを、歴史的に跡づけることで鳥瞰している。そして、現在の状況を「パックス・アメリカーナ」とふたたび復活しつつある「中華秩序」との覇権争いであるとする。

「中華秩序」とは、正式な歴史用語をつかえば「華夷秩序」となる。「冊封(さくほう)体制」ともいう。ユーラシア大陸東部の覇者・中国を中心とした国際秩序のことである。朝貢をともなう関係である。中国の皇帝が「天命」によって「天下」を司る「天子」として認知されるためには、国内だけでなく周辺諸国を中華秩序のもとに服させることが不可欠であった。

中国の周辺勢力に対して弱いときには「徳」を語り、周辺勢力が弱体化するとみるや「武」の力で圧倒するという二段構えである。「中華」という概念は、価値観の表明でもある文明概念であるが、じっさいには武力との両輪で理解しなくてはならないのである。

「中華秩序」の構築に成功すれば安泰であるが、構築に失敗するとあっという間に滅ぼされて取って代わられるという冷徹な現実。中国の王朝がすべて軍事力にもとづく「易姓革命」によって交代してきたことは歴史的事実である。

歴史的事実として、とくに日本人が想起する必要があるのは、300年ぶりに中国を統一した隋王朝についてであろう。聖徳太子が遣隋使に「日出づる処の天子、書を日没する 処の天子に致す、恙(つつが)なきや」という国書をもたせたことが有名だが、隋は朝鮮半島の軍事的制圧に失敗した結果、わずか37年で滅亡している。国内統一には成功したものの、「中華秩序」の構築に失敗したからである。

「権力は銃口より生まれる」といったのは毛澤東である。中国共産党はまさにそのとおりに実行し、1949年に国民党との戦いに勝利して中国の覇権を握った。中国数千年の戦略「養光韜晦」(ようこうとうかい)にもとづきチカラを蓄えてきた中国が、いま海洋進出にやっきになっているのは、そういう文脈から考えることができるのである。

「中華秩序」による中国の生存にとって、とくに不可欠なのが朝鮮半島と越南(=ベトナム)である。だがこの両者には大きな違いがある。歴史的に従属してきた朝鮮半島、歴史的に対抗してきたベトナム。歴史を知れば、おのずから現在を理解できる。

この「中華秩序」を破壊したのが近代日本であったという事実。これはしっかりとアタマのなかに入れておかねばならない。琉球処分と日清戦争における日本の勝利によって、「中華秩序」は破壊された。だからこそ、中国の指導者は絶対に日本を許せないのである。

国際社会に遅れて参入し、西欧近代化を選択して富国強兵路線をとった日本。だが、帝国を形成した日本は、帝国を維持することが自己目的化してしまい、大東亜戦争においては完膚無きまでに叩きのめされる。太平洋の覇権は、最終的にアメリカの勝利に終わった。米国の圧倒的な強さを肌身をつうじて知った日本は、太平洋地域においてはアメリカの「ナンバー2」として生きる道を選択して現在に至る。

このアメリカの覇権に対抗しようとしているが中国共産党なのである。中国共産党もまた、「中華秩序」構築に失敗すれば、その行く末はあえて書くまでもない結果となる。これは、本書を読めばおのずから明らかになることだろう。

みずから「新日本人」と語る石平氏は、生まれながらの「日本人」よりもはるかに意識が高い。なぜなら、みずからの意志であえて日本人になることを意志決定した人だからだ。だからこそ、自分がその国民の一人となった日本に対しては、生まれながらの日本人以上に、その命運にかんしては他人事では済まされないのである。

日本国民の一人としての真摯な発言であり、かつ「新日本人」だからこそ、フツーの日本人とは異なる視野でものをみることもできる。日本と日本人が、アジア太平洋地域で中国の属国とならずに生きていくためにはどうすればいいのか。熱い思いを底に秘めた、冷徹な分析に徹した一書である。

この一冊を読めば問題の本質が理解できる本として、つよく推奨したい。




目 次

序章 「習近平アジア外交」に見え隠れする中華思想の亡霊
第1章 2000年の帝国史が教える「中華秩序」の実体と虚構
第2章 「中華秩序」を粉々に破壊したのは近代日本だった
第3章 毛沢東が失敗した中華帝国の再建、鄧小平の隠忍自重戦略
第4章 パックス・アメリカーナ in アジア VS 新中華秩序
終章 日本民族は「アジアの最終戦争」をどう乗り越えるべきか


著者プロフィール

石平(せき・へい)
1962年中国四川省成都市生まれ。1980年北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。1984年同大学を卒業後、四川大学講師を経て、1988年に来日。1995年神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年『なぜ中国人は日本人を憎むのか』(PHP研究所)の刊行以来、日中・中国問題を中心とした評論活動に入る。2007年に日本国籍を取得。2008年4月拓殖大学客員教授に就任。2014年『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


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