今年は猛暑がつづいたが、10月に入る頃から急に涼しくなってきた。朝晩はちょっと寒いかなといった感じである。地球温暖化といっても、1年中暑いわけではない。
いよいよ「秋山シーズン」が到来といったところだろうか。といっても、すべての人が山に行くわけでもないだろう。わたしも山登りはしない。
高校時代にワンゲルにいたこともあって、かってはよく山に登っていた。山登りをしなくなったのは、混雑がイヤだからだ。富士登山は内外からの「観光客」でラッシュアワー状態になっている映像をさんざん見せられた。観光公害以外のなにものでもない。
山登りをやっていた頃は、国内の縦走だけでなく、ヒマラヤのアンナプルナ山系でのトレッキングも行ったこともある。ネパールである。数日間にわたる尾根伝いのトレッキングは上り下りが多く、苦しいこともあるが、それはもうすばらしい体験であった。
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1995年のことだから、いまからすでに30年近く前のことになるが、9月のチベットで見た空は、それはもう青かった。空気が薄いこともあるのだろう、チベットの空はもう、それはそれは抜けるばかりに美しいのだ。
ニコライ・レーリヒ(1874~1947)は、20世紀に生きたロシアの探検家で画家である。探検家としては、チベットをふくむ中央アジアのほか、朝鮮半島から満洲にかけ踏破しており、その関連の著書も多い。ロシアのサンクトペテルブルクに生まれ、ロシアに戻ることなくヒマラヤの麓で生涯を閉じた。
(ニコライ・レーリヒ Wikipediaより)
英語圏では名前はニコラスとなるが、姓のレーリヒは日本ではリョーリフと表記されることもある。キリル文字による姓の Рерих は、ローマ字では Roerich(oe は ö)とつづることからもわかるように、ドイツ系のロシア人である。
日本での知名度はそれほど高くないかもしれないが、生国のロシアだけでなく、ニューヨークには専門美術館もあり、世界的な知名度は高い。
「神智学」の系譜にある神秘家でもあり、神智学思想から発した世界平和と教育の思想は、ユネスコの源流になったとされる。
冒頭に掲げた Messenger of Beauty Nicholas Roerich; the Life and Art of a Russian Master(by Jacqueline Decter Ph.D. , Inner Traditions, 1997)は、英語による画集と評伝である。2023年9月に新版がでたようだ。
残念ながら日本ではレーリヒの画集は出版されていない。「人智学」のシュタイナーの画集まで出版されているのに、「神智学」のレーリヒの画集が出版されていないとは不思議なことだ。
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1998年に極東ロシアに出張した際、時間つぶしに同行者といっしょに出かけた入場無料のイベント会場で初めて出会い、完全に魅せられてしまったのだ。
出会いというものは、どんな形でやってくるかわからない。おそらく巡回展だったのであろう。首都モスクワから遠く離れた極東にも「文化」はあるのだ。ある意味ではロシアの底力のようなものかもしれない。モスクワと極東ロシアの時差は8時間ある。
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先にも記したが、ニコライ・レーリヒはロシアから始まって、チベットからヒマラヤ、そしてインドまで幅広く東洋の精神世界に没入した人だ。ロシア生まれのマダム・ブラヴァツキーの「神智学」の系譜に連なる人である。
仏教に親しんできた日本人にとっては、ニコライ・レーリヒの芸術は、キリスト教の色彩の強いルドルフ・シュタイナーの「人智学」の独特な芸術世界より近づきやすいのではないだろうか。すくなくとも、わたしはそう思っている。
ちなみに、ニコライの妻の ヘレナ・レーリヒ(Helena Roerich)の著書 Foundations of Buddhism は復刻版を読める。表紙カバーはいうまでもなくニコライ・レーリヒによるものだ。
あまり知られていないが、ロシアと仏教の縁は、じつは長くて深い。
そもそも、ロシア国内には「チベット仏教圏」が存在する。モンゴル系のブリヤートやカルムィク、チュルク系のトゥヴァである。「智恵の海」を意味するダライ・ラマという尊称はモンゴル語である。
ロシアは、ロシア正教だけの国ではない。ムスリムも仏教徒もいる多民族国家で多宗教国家だ。シベリアは想像を絶する多様性に富んだ奥行きの深い世界なのである。そもそも、レーリヒ自身がドイツ系である。
ニコライ・レーリヒは、さまざまな意味で、もっと日本でも知られていい存在だ。まずは、Wikipediaに掲載された美しい色彩の絵画を眺めることから始めたらいいと思う。
Nicholas Roerich, Shambala, and Agartha. 1. Tibet and Paris(by Massimo Introvigne, Bitter Winter 10/18/2024) Article 1 of 3
(2024年10月19日 項目新設)
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