花のいのちは みじかくて
苦しきことのみ 多かりき (林芙美子)
昭和前期の流行作家で『放浪記』で有名な林芙美子(はやし・ふみこ 1903~1951)が、好んで色紙に書いていたのだという。ずいぶん昔に知って、よく脳裏に浮かんでくるフレーズだ。
ところが、林芙美子は詩人でもあって、上記のフレーズは詩の一節なのだそうだ。 そのことは『林芙美子詩集「花のいのちはみじかくて」』(おのみち林芙美子記念館、栄光ブックス、2013)ではじめて知った。
それよりもっと重要なことに、このフレーズは元の詩とはちょっと違うのだ。というよりも、ニュアンスもイメージもだいぶ異なるのである。
元の詩はつぎのようになっている。後半をあげておこう。
生きてゐる幸福はあなたも知ってゐる私もよく知ってゐる花のいのちはみじかくて苦しきことのみ多かれど風も吹くなり雲も光るなり
「苦しきことのみ多かりき」ではなく、太字ゴチックで示したように、「苦しきことのみ多かれど」なのだ。ずいぶん違うではないか!
厳しい現実をそのまま受け止めて、それでもなお、前に向かって歩いていこうという気持ちが元の詩にはある。
文学史的には「じつと手を見る」の石川啄木は余韻があるが、啄木よりいいと思う。英語でいう Tomorrow is another day. を想起させるものがある。
詩集の最後に収録された「すくなくとも、私は生きてゐるのだ」(昭和8年)という詩もいい。
詩人としての林芙美子は、あまり知られていないように思うが、あらためて振り返ってみたい存在である。いや、もしかしたら、作家としても忘れられかけているかもしれないが。
尾道はまだ行ったことがないが、尾道を訪れた際にはぜひ「おのみち林芙美子記念館」に立ち寄ってみたい。
<ブログ内関連記事>
(2022年12月23日発売の拙著です)
(2022年6月24日発売の拙著です)
(2021年11月19日発売の拙著です)
(2021年10月22日発売の拙著です)
(2020年12月18日発売の拙著です)
(2020年5月28日発売の拙著です)
(2019年4月27日発売の拙著です)
(2017年5月18日発売の拙著です)
(2020年5月28日発売の拙著です)
(2019年4月27日発売の拙著です)
(2017年5月18日発売の拙著です)
(2012年7月3日発売の拙著です)
ツイート
ケン・マネジメントのウェブサイトは
ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
禁無断転載!
ツイート
ケン・マネジメントのウェブサイトは
ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。
禁無断転載!
end