藤沢から鎌倉行きの江ノ電に乗り、春の海を眺めていると、心の底からすばらしいという思いに充たされる。
電車が稲村ヶ崎を過ぎると、残念ながら海とはお別れだ。極楽寺駅をへて、今回の旅の最終目的地である長谷駅に向かう。
長谷駅で下車するのは、はじめてではない。40年前にも鎌倉観光の定番である「鎌倉大仏」を見るために訪れているからだ。記憶は定かではないが、そのときはたしか鎌倉駅から江ノ電で向かったのだと思う。
(ギャラリー棟の前庭 筆者撮影)
今回の目的は、大仏ではない。「一凛堂ギャラリー」を訪ねることにある。
『戦地で生きる支えとなった115通の恋文』や『人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話』などノンフィクション作品の著者である、作家の稲垣麻由美さんのオフィス兼ギャラリー。訪れるのはもちろん今回がはじめてのことになる。
ギャラリーで開催されていた「Japan Craft Book 第一弾『神迎え』鎌倉展示会」(3/16~3/18)を最終日に参観。稲垣さんとリアルでお会いするのは、なんと12年ぶり(!)となる。
展示されているのは、日本海は隠岐島の「焼火(たくひ)神社」で行われる「神楽」をモチーフに制作された「アートブック」と、その原画の数々。稲垣さんの発案とプロデュースによって、思いが「かたち」となったものだ。
(水野竜生画伯による原画 筆者撮影)
原画を描かれた水野竜生画伯ほか、アートディレクターなど関係者のみなさまも同席するなか、「限定制作版」も見せていただき、和紙の手触りも確認させていただいた。
火山島である隠岐島の、まさにその地域でつくられた手漉き和紙に、ダイナミックな神楽からインスパイアされた墨絵と文が印刷されたアートブック。
細部までこだわりぬいた作品と原画、そして現地で録音された神楽のリズムに身を浸し、日本の美意識と神さまについて思いをめぐらす。
(アートブックの普及版 筆者撮影)
入れ替わり立ち替わり、人が出入りする展示中のギャラリーではあるが、展示終了後もひきつづき関係者のみなさんとホームパーティーのような雰囲気で談論風発。
隠岐の話や神楽の話だけでなく、ギリシアの島々から日本海、EM農法の実践家のトークにいたるまで、じつに多岐にわたる。
(このワインをいただくために「断酒」を終了 筆者撮影)
山葡萄だけを原料とし、ミズナラの樽で熟成させた岩手県の「葛巻ワイン」をいただきながら(・・このため、3年3ヶ月に及んだ「断酒」を終了させた!)、じつに大いに楽しい時間を過ごしたのであった。
知的女性が主宰した18世紀フランスの「サロン文化」とは、こんな感じだったのかな、と。
アートであれ文筆であれ、はてまた農業であれ、なんらかのかたちで「ものつくり」にかかわる人たちの話は、実践の裏付けがあるだけに深くて面白い。
お開きになったのは20時を過ぎており、その夜の鎌倉は風が冷たく、凍えるような冬の寒さであった。
江ノ電で鎌倉駅にでてから、総武線快速に直通の「成田国際空港行き」に乗車し、「40年ぶりの鎌倉の旅」が終わった。
(おわり)
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