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2024年3月12日火曜日

書評『明治の精神異説 ー 神経病・神経衰弱・神がかり』(度会好一、岩波書店、2003)ー 大きな社会変動をもたらした明治時代は「ポジ」だけでなく「ネガ」(=陰画)もあわせて見ることが必要だ!

 

このところ明治時代に生きた「知の巨人」の南方熊楠や、「新宗教開祖」の中山みきや出口なおといった人たちについて読んでいて思ったことがある。 

なにについてかというと、天才とよばれる南方熊楠が若い頃に「脳病」を患っていたことや、おそらく抑圧性の精神疾患が原因であろう中山みきや出口なおの「神がかり」についてである。 

思っていたことはなにかというと、つぎのようなことだ。

知識階層だけでなく一般庶民もまた、明治時代という激動の時代のなか、精神的に追い詰められてたのではないか? 

鬱病や統合失調症などの精神疾患が増えているが、かならずしも現代社会から始まった話ではないのではないか? 

そんな疑問を感じていた状態で『明治の精神異説 ー 神経病・神経衰弱・神がかり』(度会好一、岩波書店、2003)という本があることを知った。読んでみたら、これがじつに面白かった。  

「開国」によって「夜明け」が訪れたと見なされがちな明治時代だが、激変する経済社会がもたらしたものは、ポジティブなものだけだったのではない。 

ポジだけでなく、ネガ(陰画)としての精神疾患を見ておかないと、ただしく理解することはできない。当たり前だが、そんなことをあらためて感じさせてくれる内容であった。 

欧化(=西欧近代化)が至上命題とされた社会のなか、士族を中心とした知識階層の立身出世志向が生み出した成功と、無理がたたって夢破れた大きな挫折ゆえの苦悩。

明治時代になってから、個人単位の課税が、しかも金納という形で強いられることになり、江戸時代よりもかえって過酷なものとなった農村を中心とした庶民の生活。 

そんな状況のなか精神的に疲弊し、逃げ場を失った人たちは、狂気という形で源現実から逃避するかたちでしか対応できなくなっていた。そう考えることも可能だろう。

知識階層は、明治時代の流行語となっていた「神経病」や「神経衰弱」として。呪術的世界に生きていた一般庶民は、「神がかり」もそのひとつである「憑きもの」として。ともに「妄想」の世界である。 

現代とは違って、教育水準が平準化されていなかった当時は、知識階層と教育のない一般庶民とは区別する必要があるが、また同時に共通するものもみえてくる。明治時代という時代が、いかに日本国民にとって大きな重圧となっていたか。重圧に耐えた成功者だけでなく、耐えられずにつぶれていった者も少なくないことに目を向けなくてはいけない。 

膨大な資料を漁ったうえで、よく調べこんだ成果である本書は、じつに数多くの引用を行っている。やや煩雑のきらいはあるが、明治時代のなまの発言の数々は、それじたいが読んでいて面白い。 

本来は英文学者である著者は、本書でも「第4章 漱石・神経衰弱・文明批評」という形で、英文学者であった夏目漱石について取り上げている。漱石の被害妄想については比較的知られていることだろう。索引には南方熊楠がでてくるが、「脳病」として取り上げられてはいないが残念だ。 

英文学の枠を超え、文化現象そのものを扱った好著を何冊も書いている人であり、わたしはこれまで『ユダヤ人とイギリス帝国』(岩波書店、2007)『ヨーロッパの覇権とユダヤ人』(同左、2010)という本を面白く読んでいた。だが、まさか『明治の精神異説』なんていうテーマで書いているとは知らなかった。迂闊なきことであった。 

一般庶民がどっぷりと漬かっていた呪術的世界が、国家神道体制のもとでかえって生き延びた理由、日本で「新宗教」がつぎからつぎへと生まれてくるメカニズムなど、たいへん面白い指摘がなされている。

だが、著者のスタンスにはやや否定的なものがないわけではない、そんな印象を受けた。妖怪研究で有名な井上円了に似た、迷信撲滅を推進した「近代知識人」のスタンスを感じてししまうのだ。 

とはいうものの、このテーマで明治時代を概観した書籍はあまりないので、貴重な労作だといえる。著者はまったく言及していないが、精神医学からのアプローチである『治療文化論 ー 精神医学的再構築』(中井久夫、岩波書店、1990)とあわせて読むといい。  

明治時代をひたすら「明るい側面」だけで描こうとしたのが司馬遼太郎だが、そんなことはありえないのである。明治時代が終わってから日本がおかしくなったのではない。その意味でも、司馬遼太郎的世界に対するアンチテーゼとして読むことも可能だろう。 

いつの時代も生きにくかったのである。昔はよかったというのは幻想に過ぎない。 
  

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目 次
序章 文化の記号としての神経病・脳病の物語(ヒストリア) 
第1章 明治エリートと神経病 
 1 文明開化と神経症 
 2 立身出世と神経病 
 3 近代小説と神経病 
第2章 民衆と神経病 
 1 憑依に陥る民衆 
 2 文明開化と憑依妄想 
第3章 神経衰弱に明治の精神を読む 
第4章 漱石・神経衰弱・文明批評 
終章 狼憑きに日本人の精神の今昔を読む 
注 
出典文献一覧
あとがき
人名索引

著者プロフィール
度会好一(わたらい・よしいち) 
1938年東京生まれ。東京外国語大学卒業。東京大学大学院修士課程修了。イギリス文学・思想史専攻。成蹊大学教授、法政大学教授、日本英文学会大会準備委員長・編集委員を歴任。現在、法政大学名誉教授。『ユダヤ人とイギリス帝国』と『ヨーロッパの覇権とユダヤ人』など著書多数。


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