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2022年12月3日土曜日

ヴォルテールとシャトレ夫人、そしてラヴォアジェ夫妻 ー 18世紀フランスの科学と科学者たちの関係性は「複眼的」に見る必要がある

 
18世紀を代表する人物であるベンジャミン・フランクリンについて考えるため、18世紀の自然科学(といっても当時は自然哲学といっていた)関連の本をいろいろ読み込んでいた。 

18世紀が興味深いのは、いまだ「科学者」(サイエンティスト)ということばも概念もなかったこの時代、「女性科学者」が存在感を示していたという事実だ。 

そのなかでも18世紀フランスのシャトレ侯爵夫人とラヴォアジエ夫人の2人は特筆すべき存在だろう。 

物理学の分野で活躍したシャトレ侯爵夫人の最大の功績は、ニュートンの主著『プリンキピア』をラテン語からフランス語に完訳し、数学的注釈を加えたことにある。この翻訳は、現在でもフランスでは唯一の完訳であるという。 

エミリー・デュ・シャトレは、哲学者ヴォールテールと18年にわたって愛人関係にあり、いっしょに暮らしながら旺盛な知的活動を行っている。18世紀フランスの上流階級のあいだでは、男女ともに複数の愛人関係をもつことは当たり前だったようだ。結婚はあくまでも家名と資産を維持するためにものであり、しかも子育ては乳母任せであった。 

ラヴォアジエ夫人は、徴税請負人で化学者であったラヴォアジエの夫人であった。14歳で結婚したマリー・ラヴォアジエは、夫の活動を知的な側面からの協力者であり、ラヴォアジェによる「化学革命」に大いに貢献している。『化学原論』の銅版画による精密な挿図はマリーによるものだ。 

もともとヴォルテール好きなこともあって、『寛容論』や『哲学書簡』、『カンディード』などの作品を断続的に読んできたが、ヴォルテールの評伝はいままで読んだことがなかった。そこでまず『「知」の革命家ヴォルテール 卑劣なやつを叩きつぶせ』(小林善彦、つげ書房新社、2008)という本を読んでみた。なかなか面白い本であった。  

つぎに『火の女シャトレ侯爵夫人 18世紀フランス、希代の科学者の生涯』(辻由美、新評論、2004)という本を読んだ。ヴォルテールお生涯において、シャトレ侯爵夫人の存在はきわめて大きなものがあったからだ。  

ところが、男性の研究者によるヴォルテールの評伝と、女性の翻訳家によるシャトレ侯爵夫人の評伝をつづけて読んでみると、視点のあり方によって、ずいぶんと印象が異なることに驚くことになった。 

もちろん、男性と女性の視点、それぞれが書いている対象への愛着の違いが存在するのは当然だが、とくに印象に残ったのは、シャトレ侯爵夫人(というよりも、エミリー・デュ・シャトレ)にとってのヴォルテールの存在と、ヴォルテールにとってのエミリーの存在は、かならずしも一致しないし、明らかなズレもあるということだ。 


「ジェンダーと科学」というテーマは、じつに興味深いだけでなく、2020年代の現在においてもアクチュアルな問題でもあることは言うまでもないだろう。なぜ、とくに日本においては、女性科学者が少ないのがなぜかを知り、この問題の解決のために不可欠な前提として、18世紀の状況を知る必要がある。 

エミリー・デュ・シャトレとマリー・ラヴォアジェは、18世紀フランスの女性科学者として突出した存在だが、この2人には共通点と相違点がある。細かい点についてはここでは省略するが、興味のある人は、ぜひ読むことを勧めたい本だ。 

エミリーとヴォルテールとエミリーの関係性について見た以上、マリーとアントワーヌ・ラヴォアジエの関係性についても関心をもって当然だろう。化学者としてのラヴォアジェは「質量保存の法則」で近代化学への道筋を切り開いた人であるからだ。 

そこで、『ラヴォアジエ(人と思想101』(中川鶴太郎、清水書院、1991)という本を読んでみたら、これは予想外に面白い本だった。  

化学研究者であった著者の遺著ともいうべき本だが、近代化学の前史である錬金術と、近代を生み出した中世ヨーロッパの技術について概観したうえで、ラヴォアジエの科学史における位置を、かれが生きた時代を背景に描いている。 

ラヴォアジエは2つの革命を体験した人物だ。まずはみずからが主導した『化学革命』、そしてそのなかに巻き込まれた「フランス革命」。本業が徴税請負人であったかれは、断頭台の露と消えたのである。ロベスピエール失脚の2ヶ月前のことであった。 

『ラヴォアジエ(人と思想101)』では、主役はあくまでもアントワーヌ・ラヴォアジェであり、マリー・ラヴォアジェは脇役にすぎない。『「知」の革命家ヴォルテール』では、主役はあくまでもヴォルテールであって、エミリー・デュ・シャトレは脇役に過ぎない。 

だが、主役と脇役の関係性は、あくまでも相対的なものだ。誰に焦点をあてるのか、どういう視点で描くかによって、その結果として示されるイメージは大きく違ったものとなる。 

18世紀フランスにかんする4冊の本をつづけて読んでみて、あらためてつくづく思うのは、本というものは1冊読んだだけでは危険であり、バイアスをできるだけミニマムにするためには複数の本をまとめて読んで、かつ内容を付き合わせてみる必要があるのだ。

 一言でいえば、「複眼的」に見ることが必要だということになるだろう。日頃から複眼的であることは意識しているが、あらてめてその必要性を痛感したのであった。 



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