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2015年7月3日金曜日

『アタマの引き出し』出版から3年(2015年7月3日)


3年前の本日(7月3日)、処女作である拙著『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)が出版されました。あれからもう3年もたったのかと思うと、まさに「光陰矢のごとし」、月日が立つのがじつに早いと痛感させられます。  
    
息の長い生命力をもった本を書きたいと願っていたわたしにとって、本書はいわゆるベストセラーとはなっていませんが、アマゾンのキンドルなどで「電子書籍化」されただけでなく、台湾でも「中文版」が翻訳出版され、大陸中国も含めた中国語圏で販売されているのは感慨深いものがあります。
   
タイトルには「人生を変える」と銘打たれていますが、さすがにわたし自身の人生が劇的に変わったということはありません。「三日三月三年」(みっか・みつき・さんねん)ですからね。
  
とはいえ、3年間もたつと確実に変わったこともあります。この本の出版がキッカケとなって、さまざまな人たちとの出会いが、リアルでもネットでもあらたに生まれたことには、おおいに感謝したいと思います。本が生み出す「つながり」です。
     
著者がいうのは手前味噌ではありますが、けっこう内容ある本だと思いますので、まだお読みでない方はこの機会にぜひご一読を。すでに読んでいただいた方も、再読・三読していただけると著者冥利につきます。

感謝你! Thank you ! ありがとうございます。






<ブログ内関連記事>

「三日・三月・三年」(みっか・みつき・さんねん)

拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012) が、2013年8月に台湾で翻訳出版されました!

拙著の台湾版が台湾のアートギャラリーで紹介されました!

『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』、いよいよ来週の7月3日以降、書店に配本予定です!

拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012) が、iBookstore から「電子書籍化」されました!(2013年11月1日)

拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』が、"電子書籍の本命" アマゾンの Kindle(キンドル)版としてリリースされました!(2013年11月15日)

2014年8月の新刊書籍にて「天性のコーチともいうべき人」と紹介されました!-「対話」による「個別指導」を実践してます




(2012年7月3日発売の拙著です)








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2012年11月23日金曜日

公開講演会『海のことは森に聞け-コトの本質に迫るには-』(畠山重篤)にいってきた(国際文化会館 2012年11月17日)-「生きた学問」とはまさにこのことだ!


今年もまた生ガキのうまい季節になりました。

冬の生ガキといえば、関東では三陸海岸の宮城県産が定番だったのですが、一気に供給不足になってしまったのは1年8ヶ月まえの「3-11」。大津波に飲み込まれて、カキの養殖場も流されてしまったからなのです。

「『海のことは森に聞け』~コトの本質に迫るには」でお話をされた宮城県のカキ養殖家でNPO法人の代表をつとめる畠山重篤さんもまた、「3-11」を境に人生が激変した人の一人です。

その話はまたあとでするとして、まずは講演会について書いておきましょう。


[新渡戸国際塾 公開講演]
「『海のことは森に聞け』~コトの本質に迫るには」
講師: 畠山重篤(NPO法人森は海の恋人 理事長)
日時: 2012年11月17日(土) 1:30~3:00 pm
会場: 国際文化会館講堂
会費: 無料
用語: 日本語(通訳なし)



1943 年上海生まれ。高校卒業後より気仙沼湾で家業である牡蛎、帆立の養殖に従事する。1989年より漁民による植林活動「森は海の恋人」運動を進めると同時に、環境教育の手助けとして子
どもたちを養殖場に招く体験学習にも力を入れている。2012年、国連森林フォーラム(UNFF)から森林の育成や林業の健全な発展などに貢献した人物に与えられる「フォレスト・ヒーローズ」の、初代受賞者の一人に選出される。


畠山さんは、NPO法人「海は森の恋人」の中心を担ってきた方です。そのキッカケはつぎのようなストーリーです。

カキがよく生育する環境は、淡水と海水がまじりあう、いわゆる汽水域とよばれる場所です。

畠山さんは家業であるカキ養殖をついだのはいいのですが、高度成長時代の公害による環境汚染や生活排水の悪影響で海が汚染され赤潮が発生するようになって、カキの養殖事業にダメージを被るようになってきました。

問題はそれだけではなく、ダム開発で上流から流れてくる豊かな栄養分を含んだ水が海に流れてこなくなったことにもあったのです。

畠山さんがそのことに気づき、動き始めるまで、海の民は上流の森の民のことを知らず、森の民は下流の海の民のことは、お互いにほとんど没交渉のまま過ごしていたのでした。

一人の漁民が動き始めてつながったのが、川の上流にある森と、川の下流にある海。

海と森が相互に交流するようになって、はじめて川でつながっているという実感をお互いに抱くようになり、森に木を植える運動をつうじて人々の意識が変わり、ひいては豊穣な海が取り戻されていったわけです。

カキ養殖の立場から、カキの生育に必要なものが何かを突き詰めて考えていくうちに、川をさかのぼり森にまで至ったというわけですね。

源流へ、源流へとさかのぼることで視点の転換が行われる。森からみた海、海からみた森。そして森と海をつなぐのは川。そう、すべてはつながっているのです。「六次のへだたり」とか、そんなアタマでっかちな話ではありません。

自分の立ち位置であるカキ養殖場から発して、川へ森へとさかのぼり、地域でさかんであった和歌と出会い、「海は森の恋人」というコンセプトに結実していったわけです。そこには、理科系と文化系の垣根もありません。まさに文理融合です。

お話を聞いていて、まさに 「すべてはつながっている」ということを実感させてくれる「生きた学問」ともいうべき、いい内容の講演でした。


「3-11」後の三陸海岸のカキ養殖について

この講演を聞く前に、すでに畠山さんの存在や代表作である『森は海の恋人』(文春文庫、2006 単行本初版1994)は読んでいました。

このブログにも書評を載せようと思っていたのでしたが、「3-11」で畠山さんの養殖場も壊滅的被害を受けたということをTVでみて、断念したのでした。

ですが、今回のお話をきいて安心しました。

すでにカキもホタテも養殖は完全に復活。むしろ、想像以上に早い生育を示して、予定よりも早い大量収穫が可能となったそうです。

大津波で海底がかきまわされたこともあるのでしょうか、植物性プランクトンが大量に発生し、豊穣の海が早くも戻ってきたようなのです。

まさに、自然の回復力のすごさを感じさせてくれるようなお話でした。人智を超えた自然のパワーというべきでしょう。そして、いままでの運動が意味あるものであることも再確認されたのだとか。

だからこそ、なんども大津波に襲われながらも、漁師は海辺を離れないのだとも。リアリティの裏付けのある説得力のあるお話です。

そして、いまや「海は森の恋人」の活動を全世界に拡げるために、英語での発信も始めたそうです。

そしてできたのが次の英文。The forest is longing for the sea, the sea is longing for the forest. 森は海を恋慕し、海は森を恋慕する、といった意味です。皇后美智子様の示唆もあったそうです。 

「森は海の恋人」の、ほんとうにすばらしい英訳ですね。

ぜひこの運動が、全世界にひろまっていきますよう!







<ブログ内関連記事>

”粘菌” 生活-南方熊楠について読む-
・・鶴見和子の名著によって「南方マンダラ」というネーミングが拡がったことにより、「すべてはつながっている」ことが真言密教的理解のもとに把握されていたことが常識となったが、畠山はそれとは関係のないところから作りあげた「生きた学問」である・・・・



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(2022年6月24日発売の拙著です)

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2010年5月12日水曜日

書評『ブルー・セーター 引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010)ー 社会投資ファンドというコンセプトにたどりつくまでの「社会起業家」のオディッセイ




社会投資ファンドというコンセプトにたどりつくまでの「社会起業家」のオディッセイ

 非営利ベンチャーキャピタルである「社会投資ファンド」の草分け「アキュメン・ファンド」の創始者ジャクリーン・ノヴォグラッツが書いた半生の奮闘記である。

 具体的なエピソードな豊富で、しかも試行錯誤の数々の経験から生み出された思索がいたるところに書き綴られた本書は、日本語訳で400ページを越える大冊だが、けっして最後まで飽きることがない。

 著者のジャクリーン・ノヴォグラッツは、社会問題の解決にビジネスの手法を持ち込んで成功してきた先駆者たちの一人である。「社会起業家」という存在を日本に知らしめた原点とでもいうべき名著『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日経BP社、2005)にも紹介されているのでご存じの人も少なくないだろう。

 バージニア大学卒業後、国際的大銀行チェース・マンハッタンで国際貸付審査の仕事に3年従事したのち、周囲の反対を押し切って国際援助の世界に大きく踏み出したジャクリーン。少女時代に修道女の感化で抱いた「社会を変えたい」という夢の実現のためである。アフリカに赴任して出会った現実は厳しく、理想と現実のギャップを日々かみしめる日々である。自らが動くことによってさまざまな軋轢を生じながらも、アメリカ人女性らしい率直さと行動力で突き進む彼女の姿からは、英語でいう Learning by Doing を文字どおり実践している人であることがわかる。行動に思索がともなうことによって、一歩一歩前に進んでいくのである。
 
 本書を読んでいて、私は著者と同級生であることがわかった。もちろん生まれも育ちもまったく異なるのだが、1985年に大学を卒業し金融業界に入り、1990年にビジネスクール(・・いわゆるMBA.コース)に入学し1992年に卒業したという経歴はまったく同じである。東京でGMATを受験し、カリフォルニアを経てニューヨーク州に移った私とは異なり、彼女の場合はアフリカのルワンダから願書を取り寄せ、インドのニューデリーでGMATを受験してカリフォルニアのスタンフォード大学に行ったらしい。ジャクリーンの場合は公共政策コースであるが、MBAコースは営利事業の経営だけを教えているわけではないということは、もっと本書に書き込んでほしかったところである。

 本書のタイトルにもなった「ブルー・セーター」のエピソードではないが、まったく関係ないと思っていた人間どうしも、実は何らかの形でつながっているのである。ある研究によれば、知り合いの、知り合いを6回繰り返していくと、ほぼ世界中の人たちとなんらかの形でつながるのだということを聞いたことがある。

 本書は原題を The Blue Sweater: Bridging The Gap between Rich and Poor in an Interconnected World というが、「つながっている」(interconnected)というコトバがキーワードである。あなたと私は、たとえ直接会ったことがなくても、またこれからの人生で直接会うことがなくても、どこかで何らかの形でつながっている。だから、私にもあなたにも関係のない問題など、この世の中には一つもない。

 社会投資ファンドもまた、金銭という万国共通のモチベーションをうまく善用して社会問題解決に取り組んできた手法の一つである。社会問題を解決するという志(こころざし)とやる気をもち、しかも能力の高い社会起業家を選んで、プロジェクト単位ではなく事業そのものに投資という形で支援するファンドである。しかし、投資姿勢は性急に高利回りを求めるベンチャーキャピタルやPEファンドではない。「配当は変化」、という忍耐強い投資(patient capital)である。慈善というフィランソロピーではない。

 「見返りが少ない可能性を認識しつつ、比較的、長期にわたって投資される資金だ。企業が離陸し、さらに上昇できる手助けする、広範囲な経営支援サービスを提供する」(P.327)。ハンズオン(Hands-on)投資としての性格ももちあわせている。

 社会問題解決にビジネスの手法を持ち込んだものには、最近よく話題になるBOP(ボトム・オブ・ピラミッド)マーケティング、グラミン銀行で有名なマイクロファイナンス、社会投資ファンドとさまざまなものがあるが、何が共通して何がどう違うのか、読者自らが考えていただきたいと思う。発展途上国に住む人たちを消費者としてのみ見るのか、自らが自立したいという意思をもつ存在と見るのか。もちろん単純化はできないが、それぞれに一長一短がある。

 ビジネスと社会問題解決は、そもそも出発点は異なり、アプローチの方法も異なるが、「社会起業」という形で一つの方向へとコンバージェンス(=収斂)していくのではないだろうか。とくにリーマンショック以降は市場原理主義に対する違和感が多くの人のあいだいに拡がり、社会性を意識しない企業経営は長期的に成り立ち得ない状況となりつつある。

 社会変革のために、自分がどういう形の貢献ができるのか、それぞれの立場で考え、たとえ小さなものであっても取り組んでいきたい。そういう気持ちをもつすべての人に読むことをすすめたい。理想主義を抱いた若い人だけでなく、かつて理想主義をもっていたすでに若くない人にも。

 著者は「プロローグ」でこう書いている。「・・このままでいいはずがない。20代の頃の理想主義が、40代になって戻ってきた。ただの願望ではない。地に足をつけ、実際主義(プラグマティズム)をもって前を見るのだ」、と。

 著者と同年生まれの私は、このコトバに強い印象を受けた。


<初出情報>

■bk1書評「社会投資ファンドというコンセプトにたどりつくまでの社会起業家のオディッセイ」投稿掲載(2010年5月3日)
■amazon書評「社会投資ファンドというコンセプトにたどりつくまでの社会起業家のオディッセイ」投稿掲載(2010年5月3日)






<書評への付記>

■この本との出会い

 実は先日2010年4月21日(水)、日本財団の主催で行われたセミナー「構造的な貧困の循環から抜け出すために:アキュメン・ファンド の取り組み」に参加した際、会場で本書を購入して著者にはサインをしてもらった。
 



 それまではジャクリーン・ノヴォグラッツのことはよく知らなかった。私がどっぷりとビジネスの世界につかっている人であったことも、その理由の一つだろう。

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★第32回 東京財団フォーラム

「社会的投資」とは何か、それはどのような社会的影響と経済効果があるの
かについて、ノヴォグラッツ氏が語ります。また、モデレータの渡辺靖 慶
応大学SFC教授とともに、貧困の底辺にある人々をビジネスの手法で支援す
ることの功罪や、その先のビジョンについても議論します。

【テーマ】構造的な貧困の循環から抜け出すために:アキュメン・ファンド
の取り組み

【日 時】4月21日(水)18:30~20:00

【スピーカー】ジャクリーン・ノヴォグラッツ(アキュメンファンド創始者)
【モデレータ】渡辺 靖(慶応大学SFC教授)

【協 力】ジャパン・ソサエティー
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 本書の中心はなんといってもルワンダを中心としたアフリカであるが、アジアのさらに向こうにある大陸でありながらヨーロッパよりもさらに遠いという印象をもっている人は多いだろう。日本からみたアフリカは必ずしも近い存在ではない。私もアフリカはまだいったことがない。

 しかし、米国からみれば、大西洋を横断するとそこにはアフリカ大陸がある。一般的なアメリカ人の意識のなかでは遠い存在だとしても、距離的には太平洋まわりでアジアにいくのも、大西洋まわりでアフリカにいくのもそう違うわけではない。米国を含めたアメリカ大陸は、地球儀でみれば世界の真ん中に位置しているからだ。

 むかし、ニューヨークからロンドン経由ニューデリー行きのインド航空でロンドンまでいったことがあるが、ニューヨークから大西洋まわりでインドにいくのと、サンフランシスコから太平洋まわりでインドに行くのではただ単に時間距離だけでなく、人間の認識地図(cognitive map)における距離感も異なることであろう。


 著者のジャクリーン・ノヴォグラッツも最初はムハマド・ユヌス博士のグラミン銀行による「マイクロファイナンス」の実践から入っていった。しかし、そこにとどまらず、実践をつうじてさらにその先に踏み出した人である。

 マイクロファイナンスだけが、ビジネスの考え方を利用した貧困問題解決の方法ではないのである。もちろんお金を借りて必ず返済するという行為をつうじて「社会的信用」をつくり、自らのビジネスを成長させていくことは非常に効果的な手法である。ただし、貸し倒れ率をミニマムにするためには金利は高めに設定されることは考慮に入れておくべきだろう。

 「社会投資ファンド」という形で、社会問題を解決する社会起業家を投資ということも、ビジネスの手法を活用した貧困問題解決法である。社会投資ファンドの投資姿勢は、性急に高利回りを求める一般のファンドとは異なり、著者の表現を使えば「忍耐強い投資」(patient capital)である。

 見返りが少ない可能性を十二分に認識しつつ、比較的長期にわたって投資される資金。企業が離陸し、さらに上昇できる手助けする、広範囲な経営支援サービスを提供する点に注目すれば「ハンズオン」(hands-on)のベンチャーキャピタルの形態も備えている、

 慈善ではない、ベンチャーキャピタルやPEファンドではない社会的投資。

 投資対象となる起業家の選別がことのほか重要である。起業家サイドにやる気があるだけではだめなのだ。投資である以上、カネの使い方については厳しい規律が必要であるし、投資である以上、投資効果の評価測定も不可欠である。

 「配当は変化」と著者がいっているのは面白い。変化を起こすこと、貧困問題の現状を打破し、変化を起こすことが目的なのである。もちろん忍耐強い投資をつうじて変化を起こす手助けを行うことが、援助とはまったく異なるアプローチなのである。

 カネ(マネー)というものに対する人間心理を熟知していて、はじめてでてくる発想だろう。ただ単に投資の技術論だけではなく、哲学や思想のバックグラウンドが必要なのである。
 「アキュメン・ファンド」が、社会的投資を行うためのリーダーシップ教育を行っているのも、そういう理解が背景にあってのことだと思う。


 なお、これは私の個人的感想だが、本書の原題である The Blue Sweater: Bridging The Gap between Rich and Poor in an Interconnected World の「つながっている」(interconnected)というコトバがキーワードであると書いたが、interconnectedness は仏教でいえば「縁起」または「縁」にあたるコトバでもある。

 「縁起」とは、『岩波仏教辞典』によれば、「仏教の中心思想で、一切のもの、精神的な働きも含むは種々の因(原因・直接原因)や縁(条件・間接原因)によって生じるという考えを表す」。
 ただしそれは直線的な因果関係にすべてを還元することではなく、すべては相互依存関係の網の中にあるという発想である。

 渡辺奈々の『チェンジメーカー』にでてきた compassion も仏教でいえば「慈悲」にあたるコトバだが、米国発の「社会起業」というコンセプトが、もともとはキリスト教からでてきた慈善(フィランソロピー)の枠を越えて、限りなく仏教的な世界観に近づいているのが興味深い。

 カリフォルニアを中心とした「ニューエージ」(New Age)の影響も大きなものがあるのだろうし、あるいはシューマッハーの『スモール イズ ビューティフル』の影響も大きいのだろう。

 「サステイナブル経済」でもある「仏教経済学」、これはまた逆にいえば、仏教のワクを越えて、全世界に拡がりつつある。

 ひたすら西洋化し、また米国型資本主義に一体化しようとひた走ってきた日本も日本人も、いまようやく目覚めつつある。これにともなってビジネスのあり方も変わっていくのはある意味で当然のことである。

 渡邊奈々ではないが、米国人から「日本人には compassion がない」などといわれることがなくなることを願うばかりだ。


 「仏教の経済倫理」とサステイナブル経済、また資本主義との関係といったテーマについては、また稿をあらためて、何回かにわけて考えてみたい。



<関連ウェブサイト>

●アキュメン・ファンド(Acumen Fund)
ミッション:起業的アプローチを使って地球規模の貧困を解決し、貧困層の生活を改善する
 www.acumenfund.org

 bk1の書評サイトに「書評フェア:社会起業家たち」の一冊として、その他の関連本とあわせて紹介されています。(2010年5月28日)



<ブログ内関連記事>

書評 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)-「社会起業家」というコトバを日本に紹介した原典となる本

書評 『国をつくるという仕事』(西水美恵子、英治出版、2009)-真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本-

「信仰と商売の両立」の実践-”建築家”ヴォーリズ-

書評 『『薔薇族』編集長』(伊藤文学、幻冬舎アウトロー文庫、2006)-「意図せざる社会起業家」による「市場発見」と「市場創造」の回想録-

『世界を変える100人になろう』(社会貢献×キャリアデザイン)に参加してきた

(2014年4月8日 情報追加)


P.S.
Founder and CEO of Acumen Fund Named 2010 William F. Glaser ’53 Rensselaer Entrepreneur of the Year
・・わが母校 RPI の Entrepreneur of the Year に選出された(2010年11月6日)


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