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2010年7月24日土曜日

書評 『明治維新 1858 - 1881』(坂野潤治/大野健一、講談社現代新書、2010)-近代日本史だけでなく、発展途上国問題に関心のある人もぜひ何度も読み返したい本




近代日本史だけでなく、発展途上国問題に関心のある人もぜひ何度も読み返したい本

 『明治維新 1858-1881』。実にシンプルなタイトルである。サブタイトルがないので、注目されることもなく埋もれてしまうのではないかと心配だ。

 しかし、内容はきわめてすばらしい。何よりも明治維新をみる視点が斬新である。内容的には埋もれるどころか、ロングセラーになりうる本だといえよう。

 本書は日本人のためだけに書かれたものではない、ということも重要だ。英語版に先行して、この日本語版が出版されたという。

 明治維新はもちろん日本人自身の歴史ではあるが、日本語使用者にしか理解できない日本史特有の歴史用語を、開発経済学の用語で言い換えることによって、国際比較という観点からみた明治維新を記述することが可能となった。

 開発経済学の立場からみた「明治維新モデル」が、果たしてアジア・アフリカの発展途上国にとって、いったいどこまで参考になるのか、あるいは参考にはならないのかという問題意識のもとに始められた、日本近代政治史の重鎮との共同研究の成果である。

 最新の研究成果を縦横に駆使して、非常に明晰な文体で書かれた政治経済史である。

 本書の構成を紹介しておこう。

第一部「明治維新の柔構造」
 明治維新というモデル、柔構造の多重性、明治維新の指導者たち、政策と政局のダイナミズム

第二部 改革諸藩を比較する
 越前藩の柔構造、土佐藩の柔構造、長州藩の柔構造、西南戦争と柔構造、薩摩藩改革派の多様性と団結、 薩摩武士の同志的結合、柔構造の近現代

第三部 江戸社会-飛躍への準備
 日本社会の累積的発展、近代化の前提条件、幕末期の政治競争とナショナリズム


 本書のキーワードは「柔構造」である。柔構造というと、私はかつて一世を風靡したエコノミスト竹内宏の『柔構造の日本経済』を思い出すが、幕末の「改革諸藩」を「改革諸藩」たらしめた特徴が、この柔構造の組織体であったという指摘は非常に示唆に富んでいる。

 変革の行動単位であった改革諸藩においては、かつて強調されてきたような下級武士による革命というよりも、財政改革によって実現した強い経済力に裏打ちされた、軍事力をともなう「藩」を行動主体として、機を見るに敏な藩主と、実力本位で登用された下級武士たちとの連携プレイがうまく機能していたことが強調されている。

 プレイヤーたちそれぞれの、状況の急変に応じて、悪くいえばいい加減、よくいえば融通無碍(ゆうづうむげ)な行動による、諸藩の離合集散や合従連衡(がっしょうれんこう)を繰り返しながらも、大きな政治改革を破綻させることなく、最後まで遂行させる原動力になった。著者によれば、これは日本近現代史においては以後みられぬことだけに、驚嘆すべき歴史的事象なのである。これが著者たちのいう「柔構造」である。

 とくに、変革の主体であった政治エリートたちの人物に焦点をあてており、彼らのあいだで交わされた書簡の内容を見ることで、いかなる情報共有が行われていたかの記述は興味深い。とくに「基本的価値観を共有した多様な意見の柔構造」であった薩摩藩の事例がきわめて興味深い。

 明治維新を可能にした経済的、知的インフラ要素についての本書の記述を読むと、この時点において、植民地となることなく、日本人が自らの手で政治変革を実行しえたことは、世界史的な意義をもつ出来事であったことが十分に理解されるのである。

 中国でも、朝鮮(韓国)でも、明治維新のインパクトがいかに大きなものであったかは、東洋史家の岡田英弘などが以前から指摘しているとおりである。毛澤東だけでなく、鄧小平もつねに明治維新を意識していたのである。

 現代でも、アジア・アフリカの発展途上国では、「明治維新」は十分にモデルたり得るだろう。ただし、モデルとしての普遍性、特殊性について十分に分析したうえでの検証が必要だろう。

 最近の新書本では珍しい、読み応えのある一冊である。

 近代日本史に関心のある人だけでなく、発展途上国問題に関心のある人もぜひ一読、いや再読、三読したいものである。






<初出情報>

■bk1書評「近代日本史だけでなく、発展途上国問題に関心のある人もぜひ何度も読み返したい本」投稿掲載(2010年6月28日)
■amazon書評「近代日本史だけでなく、発展途上国問題に関心のある人もぜひ何度も読み返したい本」投稿掲載(2010年6月28日)

*再録にあたって字句の一部を修正した。


<著者プロフィール>

坂野潤治(ばんの・じゅんじ)
1937年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。文学修士。東京大学社会科学研究所教授、千葉大学法経学部教授を経て、東京大学名誉教授。専門は日本近代政治史。主な著書に、『近代日本の国家構想 一八七一‐一九三六』(岩波書店、吉野作造賞)、『日本憲政史』(東京大学出版会、角川源義賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)

大野健一(おおの・けんいち)
1957年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、スタンフォード大学にて Ph.D(経済学)取得。現在、政策研究大学院大学教授。専門は開発経済学、産業政策論。主な著書に、『国際通貨体制と経済安定』(東洋経済新報社、毎日新聞社エコノミスト賞)、『市場移行戦略―新経済体制の創造と日本の知的支援』(有斐閣、アジア・太平洋賞特別賞)、『途上国のグローバリゼーション』(東洋経済新報社、大佛次郎論壇賞・サントリー学芸賞)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


PS 読みやすくするために改行を増やした。 (2014年9月10日 記す)。






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・・明治時代前半において軍事官僚は選りすぐりの知的エリートであった。発展途上国を見る目を「坂の上の雲」で養うべし

(2014年9月10日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)








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