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2010年7月22日木曜日

本の紹介 『阿呆物語 上中下』(グリンメルスハウゼン、望月市恵訳、岩波文庫、1953)




『阿呆物語』という作品がドイツ文学にある。グリンメルスハウゼンという17世紀のドイツ人が書いた長編小説である。

 上中下の三冊と長いが、最初から最後まで、滅茶苦茶面白いが、知られざる小説なのだ。

 『阿呆物語 上中下』(グリンメルスハウゼン、望月市恵訳、岩波文庫、1953)として出版されていたが、長らく品切れとなっていたので、実際に読んだことのある人は、あまり多くないのではないかと思う。

 今年(2010年)の3月に久々に重版復刊されたので、品切れにならない限り入手可能である。興味を抱いた人はいますぐに読まなくても、ぜひ1セット確保しておいていただきたい。
 
 舞台背景は、価値観大転換が起こった大激動期のドイツである。

 「最後の宗教戦争」あるいは「最初の国際紛争」ともいわれる「三十年戦争」(1618 - 1648)当時の、分裂し、疲弊しきったドイツである。

 日本でいえば「戦国時代」のようなものであるが、時代的にはいち早く平和な時代に入った日本よりも遅れたこの長期にわたる戦争は、国際関係論では常識となっている「ウェストファリア条約」(ヴェウトファーレン条約)によって欧州の国際秩序形成として終結した。以後、ナポレオン戦争とそのの後始末となった1818年の「ウィーン条約」まで、欧州の国際秩序は固定することとなる。

 私が下手な要約するよりも、ここは一つ岩波書店による要約を掲げておこう。ちなみに中高生時代、私の最大の愛読書は、各年版の『岩波文庫解説目録』(無料配布)であった。これ一冊読んでいれば、いわゆる「教養」はかならず身につきます。実際に岩波文庫をそんなに読んでいなくても。

17世紀のドイツは、新しい世界創造への苦悶の時代、二元的な生活感情に悩む時代であった。グリンメルスハウゼンはその知的苦悩と矛盾をこの作品に純粋かつ強烈に描いた。主人公ジムプリチウス生成の歴史は個人のものではなく人間一般にまで象徴化されている。ゲーテの「ヴィルヘルム・マイステル」の先駆ともみなされる作品。

 すぐれた要約ではあるが、この要約では、この小説のもつピカレスク的な面白さ、エンターテインメント性が十分に感じ取れないのが残念だ。

 さきに、日本でいえば「戦国時代」のようなものだと書いたが、主人公は「三十年戦争」の時代を、傭兵などさまざまな職を転々としながら、たくましく生き抜いて行く。その意味では、荒削りな『ヴィルヘルム・マイスター』であり、大河小説でもある。


 時代は下るが、19世紀英国のサッカレーの『バリー・リンドン』のような、成り上がり者を描いたピカレスク小説のおもむきもある。こちらは、鬼才スタンリー・キューブリック監督によって映画化されているのでご存じの人も多いだろう。

 この本は、ずいぶん昔に一回通読しただけで、今回これを書くにあたって読み返していないが、ほんとうに面白い小説だ。なんと主人公は、日本にもいったことになっているのだ! 

 とにかく面白い、という記憶のみ残っている。

 翻訳が1950年代で、旧字旧仮名遣いなので、字面は読みにくいかもしれないが、せひ一度は手にとってほしものである。


 原題は、Simplicius Simplicissimus(ジンムリチウス・ジンムリチシムス)、タイトルはラテン語だが中身はドイツ語。ラテン語の意味は、 simplest 日本語に直訳したら「単細胞な、あまりにも単細胞な」とでもなるのだろうか、シンプルという意味のネガティブな用法である。

 ドイツではこの「ジンプリチシムス」いう表現は好まれているようで、1896年創刊でそのタイトルでの雑誌があったようだし、映画のタイトルにもなっている。

(ドイツの「ジンプリチシムス」 『世紀末芸術』(高階秀爾)より)

  思うになぜか、ドイツには「バカ」や「阿呆」などのつくタイトルの本が多い

 私が知っているだけでも、日本語訳に限定されるが、このブログでも既に紹介した『阿呆船』(セバスチャン・ブラント、尾崎盛景訳、現代思潮社、2002)だけでなく、そのものずばり『馬鹿について-人間 この愚かなるもの-』(ホルスト・ガイヤー、満田久敏/泰井俊三 訳、創元社、1958)という本がある。

 エラスムスの『痴愚神礼賛』以来の伝統であろうか。エラスムスはドイツ人ではなくオランダ人だが、似たようなものだ。

 謹厳実直な印象のドイツ人の、意外な一面を知るうえで面白い。


PS マイ・コレクションからでてきたので、『阿呆物語 上中下』の写真を一枚追加した。(2014年4月17日)。 さらに一枚追加し(・・ジンプリチシムス)、記述の一部を正確なものに修正した (2014年4月19日)。


 


<ブログ内関連記事>

本の紹介 『阿呆船』(ゼバスチャン・ブラント、尾崎盛景訳、現代思潮社、新装版 2002年 原版 1968)

エラスムスの『痴愚神礼讃』のラテン語原典訳が新訳として中公文庫から出版-エープリルフールといえば道化(フール)③

書評 『傭兵の二千年史』(菊池良生、講談社現代新書、2002)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ③
・・『阿呆物語』の時代背景

「ジャック・カロ-リアリズムと奇想の劇場-」(国立西洋美術館)にいってきた(2014年4月15日)-銅版画の革新者で時代の記録者の作品で17世紀という激動の初期近代を読む
・・『阿呆物語』の同時代のロレーヌに生まれた版画家の作品展。「三十年戦争」の凄惨な様相も描いている

「アラブの春」を引き起こした「ソーシャル・ネットワーク革命」の原型はルターによる「宗教改革」であった!?
・・「宗教戦争」を激化させたのはルターの言動と活版印刷によるビラの流通

映画 『王妃マルゴ』(フランス・イタリア・ドイツ、1994)-「サン・バルテルミの虐殺」(1572年)前後の「宗教戦争」時代のフランスを描いた歴史ドラマ
・・ドイツで「三十年戦争」が起こる前、フランスでも激しい宗教戦争が戦われた

「500年単位」で歴史を考える-『クアトロ・ラガッツィ』(若桑みどり)を読む
・・日本の戦国時代と欧州の宗教戦争の時代はパラレルな現象
     
(2014年3月4日、4月17日、5月8日、8月22日 情報追加)


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