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2010年10月18日月曜日

『JAL崩壊-ある客室乗務員の告白-』(日本航空・グループ2010、文春新書、2010) は、「失敗学」の観点から「反面教師」として読むべき内容の本




間違っても機内に持ち込んで読むべき本ではないが、「経営の失敗学」の観点からは生きた事例の宝庫である

 「JALの現役・OBを含めた、複数の客室乗務員(CA:キャビン・アテンダント)等のグループ」が、主に人事労務にかかわる観点から描いた内幕物である。

 私は昔からよほどのことがない限り JAL は利用しないのだが、この本を読む限りこの会社には実に大きな問題がある(・・あった、と過去形でいうべきなのだろうが、インサイダーではないのでわからない)ことが手に取るようにわかる。

 正直いって、読んでもあまり後味のよいものではない。この本は、どの航空会社であるかは問わず、機内では読まない方がいい。読んでいて不安になってくるから、地上で読むことをおすすめする。

 しかし、読んで損はないと思われるのは、「経営の失敗学」の観点からみたら、生きた事例がゴロゴロしているからだ。「失敗学」とは、畑中洋太郎(東京大学名誉教授)が 2000年に提唱した概念。機械設計の失敗事例から帰納的に導き出したものである。畑中洋太郎氏は、のちに、様々な局面における「失敗」のパタン分析と回避方法について研究を蓄積している。

 日本航空の財務的な面からの失敗原因は、「週刊ダイヤモンド」(2009年11月7日号/特集:JAL 国有化の罠)などビジネス誌が、特集という形で具体的な数字をあげて解説しているので、そちらをご覧になればよい。

 経営資源のヒト・モノ・カネのうち、もっとも重要な資産であるヒトにかかわる状況は、事の性格上、内部関係者にしかわからないものがある。その点、こういう本も読んで損はないわけだ。ただし、鵜呑みにせず、距離を置いて読む必用がある。

 この本の第3章では、航空会社には、業務内容と労働条件があまりにも異なる4つの会社がある、という言い方がされている。すなわち、地上職、パイロット、整備、客室乗務員であるが、もちろん専門性の違いによって処遇に違いがあるのは当然といえ、同じ機内で勤務するパイロットと客室乗務員(CA)とのあいだの格差、しかもCAのあいだに存在する雇用条件の格差(=正社員と非正社員)には眼に余るものがある。国際水準からもほど遠い。

 これに組合問題がからんだ複雑な人事労務問題を処理しなければならない JAL は、再建の担い手からみても、きわめてやっかいな存在であろう。

 人事労務関係の施策があまりにもお粗末であることが、この本の中では何度も訴えられているが、そもそも「会社は頭から腐る」(冨山和彦)わけであり、再建にあたってトップが不退転の決意でもって過去の問題を精算していかない限り、末端まで改革が浸透しないのではないか。そういう感想をもつのは私だけではないだろう。

 第1章では、JAS(旧 日本エアシステム)との統合が最大の問題であったことが主張されている。たしかに「一将功成って万骨枯る」の結果であるようだが、これは経営サイドにおける M&A戦略の明かな失敗であり、なによりも「合併後の経営統合」(Post Merger Integration)の観点の欠如したお粗末な戦略であったことが、労働生産性と人事労務管理の観点から理解されるのである。

 しかし、これは JAL に限った話ではない。日本企業による M&A がうまくいかない理由の一つである。

 また、第3章では、女性管理職のあり方について、いろいろ示唆も多い。女性従業員の多い職場での女性管理職本人、女性管理職を部下にもつ人にとっては「他山の石」として必読であろう。

 航空会社の業務のなかでも、機内での「顧客との接点」(コンタクト・ポイント)である客室乗務員、しかもチーフパーサーやパーサーも含めた、ややベテランの立場からの発言であることを考慮にいれて読むべきだろう。

 顧客との接点といえば何よりも地上職員(グランドスタッフ)の声もまとめて聞いてみたいという感想ももつ。ブランド価値構築にとってもっとも重要なプレイヤーが、こういった現場で地道に働いている職員だからだ。


 最初にも書いたが、正直いってあまり後味のよい内容ではない。だが、とくにサービス業に従事するビジネスパーソンには読むことをすすめたいと思う。「他山の石」として、「反面教師」として、貴重な事例に充ち満ちているからだ。

 他社の失敗経験から貴重な教訓を得ることもまた、大事な「学習経験」となることを肝に銘じておきたい。「人の振り見て我が振り直せ」、と昔からいわれているではないか。
 


<初出情報>

■bk1書評「間違っても機内に持ち込んで読むべき本ではないが、「経営の失敗学」の観点からは生きた事例の宝庫である」投稿掲載(2010年03月28日)

*再録にあたって、大幅に加筆した。




PS 読みやすくするために改行を増やした。内容にはいっさい手は加えていない。あくまでもJAL破綻後の再生前の情報に従って執筆したものであることを強調しておく。 (2014年3月17日 記す)。


<関連サイト>

特定非営利法人 失敗学会
・・畑中洋太郎氏主催

失敗知識データベース
・・「科学技術分野の事故や失敗の事例を分析し、得られる教訓とともにデータベース化したもので、科学技術振興機構(JST)が提供」


<ブログ内感f連記事>

JALの「法的整理」について考えるために

書評 『稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる-自分、人、会社-全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィー』(原 英次郎、ダイヤモンド社、2013)-メンバーの一人ひとりが「当事者意識」を持つことができれば組織は変わる
・・その後、多くの人の予想に反して、JALの意識改革と再建が実現した

書評 『空港 25時間』(鎌田 慧、講談社文庫、2010 単行本初版 1996)-「現場」で働くナマの人間の声で語られた「仕事」=「人生」

鎮魂!「日航機墜落事故」から26年 (2011年8月12日)-関連本三冊であらためて振り返る

書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・
・・正社員とパート・アルバイトという処遇体系の異なる従業員が同じ職場で働いている

書評 『失敗学のすすめ』(畑村洋太郎、講談社、2000)-失敗情報をきちんと管理して、「知識化」していれば大きな事故は防げる

(2014年3月17日 情報追加)






(2012年7月3日発売の拙著です)








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