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2010年11月29日月曜日

書評 『異端の系譜-慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス-』(中西 茂、中公新書ラクレ、2010)




「成人式を迎えたSFCの20年間」の軌跡を全体像として概観した一冊

 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス、通称 SFC が1990年に開校してからすでに20年、もうそんなにたったのかという驚きが正直な感想である。

 日本の大学教育にイノベーションをもたらすべく開校した SFC、なんだか私自身のなかでそのイメージが固定化したまま時間が止まってしまっていたのかもしれない。

 本書は、SFC の20年間を、教育分野を専門に追ってきた読売新聞記者が、幅広い取材のもとに概観したものである。これ一冊でSFCの20年間がわかる内容の一冊となっている。
 少なくとも、SFC出身でも慶應義塾出身でもない私のような外部の人間にとっては、SFC卒業生は個々に知ることがあっても全体像は知りようがなかった。この一冊ではじめてSFCの全体像をつかむことができたという感想をもつ。

 SFCの特徴は、「問題発見・解決型」の人間をつくるという開校以来の教育理念があること、AO(アドミッション・オフィス)入試を最初の段階から実施していることが一般的なイメージとしても定着しているだろう。

 人生の目的が高校卒業前から明確になっている学生が多いという点が、日本の一般の大学生とは多いに異なる点なのだが、その結果、日本のカイシャ組織では使いにくいという評価も一部では定着してしまった。

 しかし、自分のアタマで考えて自分で行動するという、現在の日本にもっとも必要とされるタイプの人材を早い段階から輩出してきたという点においては高く評価すべきである。NPO やソーシャルビジネスなどにも、早い段階から取り組んでいる卒業生たちが多いのはその現れだ。

 本書を一読してわかったのは、SFCの特徴は、与えられた専門分野をディシプリンとして教え込むのではない、社会人としての幅広い教養を身につけるためのリベラルアーツ型大学であることだ。講義の選択の自由度が大きいために、目的が明確でないと、つまみ食いしただけで何も身につかずに卒業してしまうという危険もあるが、むしろ大学院に進学してから専門の勉強をすればいいという米国型の高等教育のあり方に近いのかもしれない。

 私は本書によってはじめて、初代の総合政策学部長をつとめた経済学者・加藤寛の伝説的な「卒業式スピーチ」の存在を知った。第一期の卒業生と同時に学部長の座から去った加藤寛のスピーチは、SFCの卒業生でなくても感動的である。

 本書の取材の範囲は卒業生と教員だけでなく、事務方や他大学の教員など実に幅広い。ナマの声が多数取り込まれているので、SFCの評価を複眼的かつ多面的に知ることができるのも本書の特徴だ。

 これから大学進学を考えている高校生やその親御さんだけでなく、日本の将来について考える人にとっても、日本の大学教育に一石を投じた SFC の20年間の軌跡を振り返る意味で一読する価値はある。


<初出情報>

■bk1書評「「成人式を迎えたSFCの20年間」の軌跡を全体像として概観した一冊」投稿掲載(2010年11月19日)
■amazon書評「「成人式を迎えたSFCの20年間」の軌跡を全体像として概観した一冊」投稿掲載(2010年11月19日)

*再録にあたって一部加筆した。




目 次
 
第1章 SFC はどう見られてきたか(学部長たちの自信、外からの視線)
第2章 日本の大学改革と SFC(SFC誕生まで、AO入試の影響度)
第3章 草創期を彩った人たち
第4章 卒業生たち(海外へ地方へ、社会起業家たち、社会起業家を後押しする人たち、多様な選択肢)
第5章 ライバルと未来の大学の課題


著者プロフィール

中西 茂(なかにし・しげる)

1958年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。読売新聞社東京本社解説部次長、編集委員を経て、調査研究本部研究員。『読売新聞』の長期連載「教育ルネサンス」の取材班デスクを 2005年1月のスタート時から 2009年3月まで務め、読売新聞社による第1回「大学の実力」調査(2008年)の責任者も務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。







(2012年7月3日発売の拙著です)








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