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2014年5月15日木曜日

書評『「利他」- 人は人のために生きる』(瀬戸内寂聴/稲盛和夫、小学館文庫、2014 単行本 2012)ー 智慧に充ち満ちた二人のエルダーによる対談型法話


「利他」とは「人のために」ということ、「利己的」の「利己」の反対語である。

瀬戸内寂聴師は作家で天台宗の僧侶、稲盛和夫氏は京セラの創業経営者で臨済宗の僧籍をもつ仏教者。

寂聴師が僧侶でありながら俗世間にも通じた方であれば、稲盛和夫氏は俗の俗たるビジネス界に身を置きながらも「人の道」を説いておられる方。

年齢的には現在92歳の寂聴師と、82歳の稲盛氏はちょうど10歳年が離れているが、ともに超多忙でフル回転の日々を送っておられる。この対談が行われたのは2011年の「3-11」後のことであったが、スケジュールを調整するのはきわめて困難な課題であったという。

まさにお二人とも長老のなかの長老。英語でいえば智慧に充ち満ちたエルダーどうしである。人生智に満ちた二人のエルダーによる、対談という形の法話である。

しかし、ぜんぜん抹香臭くない。仏教を専門家の狭いサークルのものではなく、まさに大乗仏教の根本である大乗精神の持ち主として実践し、みずからの体験をもとに一般衆生(しゅじょう)にむけての語っておられるからであろう。


日本航空(JAL)再建における「利他」の実践

「利他」については、寂聴師は天台宗の「忘己利他」(もうこ・りた)というコトバを紹介されている。日本天台宗の宗祖・伝教大師最澄は、「好事は他に与え、悪事は己に向かえ、己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」という教えを説いているのだという。味わい深いフレーズだ。

稲盛和夫氏は、会社は法律的には株主のものだが、従業員とその家族を物心両面において幸せにするために経営すべきだと説いておられる。顧客も含めて「人のために」という心がけで経営すれば、回り回って株主も、その他関係者もみな幸せになるのである、と。「急がば回れ」の「心の経営」である。「利他」の実践である。

この対談が行われたのは、ちょうど稲盛氏が深く関与した日本航空(JAL)の再建がようやく峠を越した頃だ。「第5章 人はなぜ「働く」のか-誰かのために尽くすことが心を高める-(利他の実践)」では、JALの再建が「意識改革」によって実現し、持続可能なものとなっていること稲盛氏の考えが提携先のアメリカン航空(AA)にも伝播していることが、稲盛氏自身の肉声によって語られている。

この章は、とくに経営者をはじめとするビジネスパーソンなら興味深く読むことができるはずだ。「損得」で判断するのは経営者としては当たり前のことだが、「善悪」を判断軸にするという稲盛氏の世界的に見ても希有な経営哲学が具体的に語られている。自分自身の体験をベースに考え抜かれたものだけに説得力はきわめて強い。

もちろん、われわれ「凡夫」(ぼんぷ)には実践はなかなか難しいのではあるが・・。


「無常」とは、つねに変化するということ

仏教の教えは多岐にわたるが、もっとも根本的な考えは「無常」ということだろう。これはそもそも日本的な「無常観」というわびさびなどとはいっさい関係ない話で、世の中はつねに瞬間瞬間に変化しているという「真理」を表現したものだ。

だから、いいことも続かないし、悪いことも続かない、世の中すべては変化の相のもとにある。これは人生においても、ビジネスにおいても、深く心に刻みつけるべき教えではあるまいか。お二人ともに「希望」については一言も語っていない。語っているのは「勇気」である。「気持ち」の持ち方についてである。これが重要なのだ。

「無常」につらぬかれた「有限の生」をいかに意味あるものとして生き抜くか。そのためには将来を思い煩うよりも、「いま、ここ」で燃焼しきることが大事なのだ。しかも、「人のために」という「利他の精神」で!

このきわめてシンプルで、しかし力強い教えをやさしく説いたこの対談は、肩の力を抜いて気楽に読める漫談のようでもある。楽しみながら、みずからのうちに「勇気」がわいてくる「法話」である。




目 次

まえがき 稲盛和夫
第1章 [震災を経験して] 今こそ、勇気を-「千年に一度」の悲しみを乗り越える法
第2章 [逆説の人生観] なぜ、いい人ほど不幸になるのか-どんな悪い世の中もいずれ変わる
第3章 [震災後の生き方] 「利他」のすすめ-人は“誰かの幸せ”のために生きている
第4章 [新・日本人論] 日本を変えよう、今-「小欲知足」と「慈悲」を忘れた日本人へ
第5章 [「利他」の実践] 人はなぜ「働く」のか-"誰かのために尽くす" ことが心を高める
第6章 [生と死のあいだ] 「天寿」と「あの世」の話-「生老病死」の四苦とどう付き合うか
あとがき 瀬戸内寂聴
解説 阿川佐和子


著者プロフィール

瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)
1922年徳島県生まれ。作家・僧侶。57年『女子大生・曲愛玲』で新潮社同人雑誌賞。61年『田村俊子』で田村俊子賞。63年『夏の終り』で女流文学賞。73年に岩手・中尊寺で得度。87年より天台寺住職に就任し、無料の青空説法を始める(2005年以降、名誉住職)。92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞。96年『白道』で芸術選奨文部大臣賞。98年『現代語訳源氏物語』を完成。2001年『場所』で野間文芸賞。06年に文化勲章、国際ノニーノ賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

稲盛和夫(いなもり・かずお)
1932年鹿児島県生まれ。経営者。59年に京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長を務める。84年に第二電電(現・KDDI)を設立し、会長に就任。2001年より最高顧問。2010年に日本航空(JAL)会長に就任。このほか、84年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰している。また、経営塾「盛和塾」の塾長として経営者の育成に心血を注いでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

私の履歴書 京セラ名誉会長 稲盛和夫(30)最終回 「得度-托鉢・修行、信仰深まる 百円のお布施、万感の思い」(日経スタイル)
・・「1997年(平成9年)9月7日、私は京都・八幡の円福寺で得度、「大和(だいわ)」という法名をいただいた。師はこの臨済宗妙心寺派の円福寺の西片擔雪老師である。・・中略・・ 65歳となり、これ以上延ばすわけにはいかないと思い、老師に相談すると、「それは結構なことです。剃髪(ていはつ)し、得度されたらいい。しかし、その後は実社会に戻り、社会に貢献するのがあなたにとっての仏の道でしょう」といわれた。」

(2016年7月22日 項目新設)

"新・経営の神様" 稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」 日本を「幸せに導く」方法とは(現代ビジネス、2016年8月24日)

(2016年8月27日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

自分のアタマで考え抜いて、自分のコトバで語るということ-『エリック・ホッファー自伝-構想された真実-』(中本義彦訳、作品社、2002)
・・大事なのは「勇気」! 希望ではなく勇気!

大乗仏教の「法話」

『僕の死に方-エンディングダイアリー500日』(金子哲雄、小学館文庫、2014 単行本初版 2012)は、「死に方」はイコール「生き方」であることを身をもって示してくれた流通ジャーナリスト最後の著書
・・下手な仏教書よりはるかに心を打つ内容の本

書評 『ああ正負の法則』(美輪明宏、PARCO出版、2002)-「正負の法則」は地球の法則である
・・美輪明宏氏は熱心な「法華経」信者

「如水会講演会 元一橋大学学長 「上原専禄先生の死生観」(若松英輔氏)」を聴いてきた(2013年7月11日)
・・上原専禄氏は熱心な「法華経」信者。若松英輔氏は、『魂にふれる-大震災と、生きている死者-』(トランスビュー、2012)の著者。パートナーを看取った若松氏の体験記と共通するものを感じる

鎮魂・吉田昌郎所長-『死の淵を見た男-吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日-』(門田隆将、PHP、2012)で「現場」での闘いを共にする
・・仏教で精神修行をしていた故・吉田昌郎氏

書評 『法然・愚に還る喜び-死を超えて生きる-』(町田宗鳳、NHKブックス、2010)
・・浄土系思想の根幹にある「浄土」と「お迎え」

鎮魂!「日航機墜落事故」から26年 (2011年8月12日)-関連本三冊であらためて振り返る
・・大量死の社会的インパクトは大きいが、遺された遺族にとっては、かけがえなのない一人一人の死である


稲盛和夫氏と「稲盛哲学」関連

「稲盛哲学」 は 「拝金社会主義中国」を変えることができるか?
・・中国では民間企業の経営者のあいだだけではなく、一般読者にも浸透しつつある稲盛和夫氏の教え

書評 『稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる-自分、人、会社-全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィー』(原 英次郎、ダイヤモンド社、2013)-メンバーの一人ひとりが「当事者意識」を持つことができれば組織は変わる
・・JAL再建についてのドキュメント

書評 『全員で稼ぐ組織-JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書-』(森田直行、日経BP、2014)-世界に広がり始めた「日本発の経営管理システム」を仕組みを確立した本人が解説
・・稲盛哲学と経営管理の仕組みが合体した「アメーバ経営」とは?

『週刊ダイヤモンド』の「特集 稲盛経営解剖」(2013年6月22日号)-これは要保存版の濃い内容の特集

書評 『道なき道を行け』(藤田浩之、小学館、2013)-アメリカで「仁義と理念」で研究開発型製造業を経営する骨太の経営者からの熱いメッセージ
・・稲盛哲学信奉者によるアメリカでの経営実践の最新報告

(2014年6月12日 情報追加)


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