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2015年10月28日水曜日

欧州に向かう難民は「エクソダス」だという認識をもつ必要がある-TIME誌の特集(2015年10月19日号)を読む


ひさびさに TIME誌の印刷版を購入して読んだ。なぜなら欧州の難民問題が総力をあげて特集されているからだ。

正式なタイトルは、 Special Report  EXODUS : The Epic Migration To Europe & What Lies Ahead (特集エクソダス: 欧州への大規模人口移動とその先にあるもの)2015年10月19日付け号である。

欧州の難民問題はエクソダス(EXODUS) であるという認識である。エクソダスとはギリシア語で大脱出という意味だ。旧約聖書の『出エジプト記』のことでもある。

今回の100万人規模を越える難民発生は勢いが止まらず、ロシアのポグロムや、ナチスドイツの迫害でユダヤ難民が大量発生した第二次世界大戦以後では最大規模のものとなっている。ちなみに、日本で『栄光への脱出』(1960年)として公開されたポール・ニューマン主演のイスラエル建国を描いた映画は、原題は EXODUS という。

(ユダヤ系のポール・ニューマン主演の『栄光への脱出』)

シリア難民問題のようなテーマについては、日本のジャーナリズムではカバー不可能だろう。たとえ問題の深刻さの認識を理解できたとしても、地理的に遠く、語学力がフルに必要とされる分野で大規模な取材を行うことはコスト的に割が合わないからだ。需要サイドの日本語読者の関心を引くかという問題でもある。

EXODUS という見出しを全面に出しているのは、英国を代表する The Economist も同様だ。現在、シリア難民の多くがドイツを目指しており、ドイツもまた受け入れを表明しているとはいえ、難民問題が欧州全体の問題であるという認識があるためだろう。英米を代表するメディアがともにエクソダスという認識をもっていることは興味深い。


欧州の難民問題にかんしては、英国も含めた欧州は歴史的な経緯を含めて「当事者」であるが、大西洋をはさんで対岸にある米国はかならずしも直接の当事者とはいえない。

だが、難民を含めた移民問題にかんしては、大規模に移民を受け入れ、それが活力を生み出してきた「先進国」としての認識が米国にはある。そういう視点から書かれたのが TIME誌の特集記事である。

中東からのシリア難民は陸伝いにトルコまできて、密航船でトルコから対岸のギリシアに渡り、バルカン半島を北上して陸路でドイツを目指す。アフリカ難民もまた密航船で地中海を渡るが、最短距離のシチリアから入って、イタリアから北上する。

TIME でも The Economist でもそうだが、表紙に使用された写真をみればわかるとおり、関心はもっぱらシリア難民に向かっている。第二次大戦時のユダヤ難民を読者に想起させることを意図しているようだ。

難民認定されたら、シリア難民を労働力不足解消策として活用することを期待している関係者も少なくないようだ。なぜなら、シリア難民は比較的教育程度も高く、スマホを使いこなしている者が少なくないからだ。受け入れコストはかかるが、それに見合った(?)ベネフィットがあると見ているのかもしれない。そういえば、亡きスティーブ・ジョブスの実の父親はシリア系の米国移民であった。

これに対してアフリカ難民にかんしては、難民を乗せた密航船が沈没するとニュースにはなっても、シリア難民ほど大きなニュースにはならない。しかも、単独で脱出してきた未成年者が多く、十分な教育を受ける機会がなかった者が多い。一方的なコスト増加要因になるのではないかと懸念があるようだ。

TMIE誌の特集は、密航ビジネスの実態なども含めた難民問題の現地レポートも読ませるが、全体的にドイツを模範としてみる視線があるような印象を受ける。ユダヤ人虐殺を行ったナチスドイツの轍はぜったに踏まないという決意が生み出した理想主義はすばらしいものがある。だが、ユーロ危機と同様に、そのドイツの姿勢がEU内で不協和音を生み出していることに注意する必要がある。

その意味では、特集のなかにある 「Gゼロ」論のイアン・ブレマー(Ian Bremmer)氏の論文が重要だ。Europe Divided. The migrant crisis tests the limits of E.U.cooperation (分断される欧州:難民危機はEUの協力関係の限界をテストする)は、難民問題をめぐって対立するEU加盟国間の対立が、欧州統合に冷戦崩壊後かってなかった危機的状況をもたらしていると結論している。国境線をなくして移動の自由を確保するという理念そのものが問われているからだ。

そもそも移民受け入れにかんしては、欧州の先進国のあいだでも一枚岩でないことは、内藤正典氏による『ヨーロッパとイスラーム-共生は可能か-』(岩波新書、2004)など読めばわかることだ。いまはウェルカム一色のシリア難民受け入れだが、じっさいに移住先で定着するというフェーズに入っていくと、さまざまな軋轢(あつれき)が生まれてくることだろう。

難民問題は、日本も無関係ではない。人口減少と労働力不足が顕在化している現在、問題解決の手段の一つとして日本も難民受け入れを検討すべきなのではないかと思うのだが・・・。

冷戦崩壊後の秩序崩壊で大量に発生した難民問題の解決を、国連難民高等弁務官として新緑下のが日本人の緒方貞子氏であったことを忘れるべきではない。



PS TIME の印刷版を読むのはひさびさだが、文字がえらく小さくて読みにくいのには閉口した。スマホやタブレットであればスワイプして文字を拡大できるし、PCでも文字サイズは自分で設定できるのだが、印刷版ではそれができないのだ。記事の中身とは直接関係ないが、正直な感想として付記しておく。

PS2 シリア難民のなかにテロリストが紛れこんでいたことが、ついに2015年11月13日(金)にパリで起きた同時多発テロによる無差別殺人という悪夢となってしまった。この事件が、シリア難民の受け入れにいかなる影響を及ぼすか、日本人としても注視しなくてはなるまい。(2015年11月20日 記す)。

PS3 ドイツのケルンで2015年の年末に発生した女性をターゲットにした500件近い暴行と窃盗事件の容疑者の大半が、難民申請を行っていた北アフリカと中近東出身であり、しかも計画的な犯罪行為であったことが、ドイツ国内で難民受け入れに対する反発を引き起こし始めている。この事件がメルケル首相の理想主義に過ぎる政策への逆風となっているのは、当然といえば当然といえよう。理想はつねに現実によって裏切られるものだ。しかし、だからといって難民受け入れそのものに NO というのは短絡的に過ぎるのではないか。冷静な議論が必要だろう。(2016年1月11日 記す)

上記の事件にかんしては、下記の The Economist の記事を参照。中近東の「男」の常識は、欧州では通用しないということだ。まさに正論である。
Migrant men and European women To absorb newcomers peacefully, Europe must insist they respect values such as tolerance and sexual equality (The Economist,  Jan 16th 2016)






<ブログ内関連記事>

『移住・移民の世界地図』(ラッセル・キング、竹沢尚一郎・稲葉奈々子・高畑幸共訳、丸善出版、2011)で、グローバルな「人口移動」を空間的に把握する


ユダヤ難民

書評 『諜報の天才 杉原千畝』(白石仁章、新潮選書、2011)-インテリジェンス・オフィサーとしての杉原千畝は同盟国ドイツからも危険視されていた! ・・ユダヤ難民

書評 『命のビザを繋いだ男-小辻節三とユダヤ難民-』(山田純大、NHK出版、2013)-忘れられた日本人がいまここに蘇える
・・ユダヤ難民

書評 『命のビザを繋いだ男-小辻節三とユダヤ難民-』(山田純大、NHK出版、2013)-忘れられた日本人がいまここに蘇える
・・ユダヤ難民

映画 『ハンナ・アーレント』(ドイツ他、2012年)を見て考えたこと-ひさびさに岩波ホールで映画を見た
・・ナチスドイツによるユダヤ難民とイスラエル建国

『パリのモスク-ユダヤ人を助けたイスラム教徒-』(文と絵=ルエル+デセイ、池田真理訳、彩流社、2010)で、「ひとりの人間のいのちを救うならば、それは全人類を救ったのと同じ」という教えをかみしめよう
・・ユダヤ難民


シリアなどのレバント(=東地中海)

書評 『新月の夜も十字架は輝く-中東のキリスト教徒-』(菅瀬晶子、NIHUプログラムイスラーム地域研究=監修、山川出版社、2010)


その他の難民問題

ハンガリー難民であった、スイスのフランス語作家アゴタ・クリストフのこと
・・1956年のハンガリー革命(=ハンガリー動乱)で亡命を余儀なくされた難民

書評 『香港バリケード-若者はなぜ立ち上がったのか-』(遠藤誉、深尾葉子・安冨歩、明石書房、2015)-79日間の「雨傘革命」は東アジア情勢に決定的な影響を及ぼしつづける
・・「難民的メンタリティ」をもっている香港第一世代との違い

ボリウッド映画 『ミルカ』(インド、2013年)を見てきた-独立後のインド現代史を体現する実在のトップアスリートを主人公にした喜怒哀楽てんこ盛りの感動大作
・・「シク教徒の多いパンジャーブ地方は、インドとパキスタンの国境地帯にあり、現在のパキスタンにあったミルカの一族は立ち退きを拒否して戦うことを選択したために皆殺しにされ、生き残ったミルカとその姉は難民となってインド側に命からがら逃れることになったのである。自分の目の前で家族が惨殺されるという残酷な体験がトラウマとなり、ときにフラッシュバック現象となってミルカの人生を苦しめつづけることになる。」

(2015年11月11日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)










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