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2025年1月2日木曜日

人生100年時代の「リ・クリエーション」ー 大晦日から元旦にかけて『LIFE SHIFT(ライフシフト)ー 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット、池村千秋訳、東洋経済新報社、2016)を読んで思ったこと(2025年1月2日)

 

 さて、年があけてあらたな年となったわけだが、2025年(巳年)の元旦は昨年とは違って平穏だった。正月とは本来はそうあるはずべきなので、つねにそうであってほしいものである。 

大晦日から元旦にかけてはNHKの「除夜の鐘」生中継以外のテレビ番組はいっさい視聴することなく、「人生100年時代」における生き方について考えていた。年末年始シフトに入った日本のテレビ番組が、あまりにもつまらないからでもある。

「人生100年時代」などというフレーズが軽々しく口にされるものの、その中身についてはあまり考えてはいないというのが、わたしに限らず多くの人に共通する状況であると思う。 

昨年2024年も、100歳で大往生したカーター元大統領、98歳のナベツネ氏、94歳のスズキ会長などなど、「アラハン」(=アラウンド・ハンドレッド、つまり100歳前後)の訃報があいついだ。 

ニュースになるような人は、いずれも「生涯現役」を貫いた人ばかりである。「悠々自適の余生」とは無縁の人生であったようだ。いや、そうだからこそ100歳前後まで生き抜くことができたのであろう。とはいえ 「アラ還」のわたしだが、「アラハン」まで生きたいと思っているわけではない。

大晦日から元旦にかけては、実家で正月料理をたべているときる以外は『LIFE SHIFT(ライフシフト) 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット、池村千秋訳、東洋経済新報社、2016)を読んでいた。意外とスラスラと読める本であった。

原題は、The 100-Year Life といたってシンプルだ。副題は、Living and Working in an Age of Longevity である。「長寿時代の生き方と働き方」。生きることは働くことでもある。 キャリア・ラダー(階段、はしご)が連続していないことを示した、原著のカバーイラストが示唆的だ。




このテーマで日本語版が400ページも必要なのかというのが正直な感想であるが、要は「平均寿命が100歳」となりつつある時代、これまでの「人生設計」はもはや通用しませんよ、という内容である。仕事人生を軸にして、準備期間とリタイア後の3ステージで考える従来型のシナリオではなく、「人生100歳時代」に対応したあたらしい人生シナリオが必要なのだ、と。 

なぜなら、従来型の年齢とライフステージが対応関係ではなくなるからだ。そのことをさして、著者たちはうまい具合に表現している。もはや Stage は age に対応していないのだ、と。英語のダジャレであるが、なかなかうまいな、と思う(笑) 

寿命が伸びれば、伸びた分だけ、さらにあらたなことをしなければならないだけではない。多くの人に共通のライフステージのモデルは機能しなくなり、個々人が自分自身の人生をマネージしていかなくてはならなくなる。
 



自分が読んでいる本(第4刷)の「帯の裏」(上掲写真)には、「こんな生き方をしてはならない」として、いわゆる「べからず集」が載せられている。 

●卒業後すぐに就職し、ずっとおなじ会社で働こうとする 
●永続する企業を目標に起業し、すべてを仕事に捧げる 
●休日をレクリエーション(娯楽)にあてる 

卒業してすぐに就職したが、その後運命に翻弄されて浮き沈みの多いジェットコースター的人生を送ってきたわたしは、起業はしたが一代限りとしているので、上記の2点はクリアしているな(笑)

さて、最後の「レクリエーション」(娯楽)というのが、著者たちが強調するキーワードである。「レクリエーション」(娯楽)ではなく「リ・クリエーション」(再創造)。 おなじスペリングだが Recreation の本来の意味は、後者の「再創造」がである。

「レクリエーション」とは、日々の仕事で疲れた心身をリフレッシュして「再創造」するという意味が本来のものだったのが、単なる「娯楽」に転化してしまったのだ。 

著者たちは、「レクリエーション」(娯楽)ではなく「リ・クリエーション」(再創造)が重要だと強調し、さらに長い人生にわたって、何度も「再創造」する必要があることを説いている。説得力のある主張である。なんども脱皮するヘビの年である巳年にはふさわしい。 

わたし自身も、外部要因が主たる動機であるが、これまで何度も人生を作り直してきた。だが、まだまだ人生は長い(はず)。リフレッシュはもちろん必要であるが、今後も不断の「リクリエーション」(再創造)が必要となるはずだ。 

正月3日間もダラダラしているのは日本だけ。諸外国も元旦は休むが、1月2日から「正常モード」に戻る。だから、わたしもまた正常モードに戻ることにする。「レクリエーション」(娯楽)ではなく「リ・クリエーション」(再創造)! 

2025年は昨年以上に激動の年になることは間違いない。「いまこの瞬間」を集中し、同時に長い道のりをマネージしていくことが 重要だとあらためて感じている次第だ。 


2025年1月2日 佐藤けんいち 


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目 次
日本語版への序文 
 幸せな国、日本/過去のモデルは役に立たない/「若い」「老いている」の概念が変    わる/人生に新しいステージが現れる/パートナーの両方が職をもつメリット/就職、引退の常識が変わる/年金や人口減の問題が和らぐ/ 
序章 100年ライフ
第1章 長い生涯 ― 長寿という贈り物
第2章 過去の資金計画 ― 教育・仕事・引退モデルの崩壊 
第3章 雇用の未来 ― 機械化・AI後の働き方
第4章 見えない「資産」― お金に換算できないもの 
第5章 新しいシナリオ ― 可能性を広げる
第6章 新しいステージ ― 選択肢の多様化
第7章 新しいお金の考え方 ― 必要な資金をどう得るか 
第8章 新しい時間の使い方 ― 自分のリ・クリエーションへ 
第9章 未来の人間関係 ― 私生活はこう変わる
終章 変革への課題  


著者プロフィール 
リンダ・グラットン(Lynda Gratton)
ロンドン・ビジネススクール教授 ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。2年に1度発表される世界で最も権威ある経営思想家ランキング「Thinkers50」では2003年以降、毎回ランキング入りを果たしている。2013年のランキングでは、「イノベーションのジレンマ」のクリステンセン、「ブルー・オーシャン戦略」のチャン・キム&モボルニュ、「リバース・イノベーション」のゴビンダラジャン、競争戦略論の大家マイケル・ポーターらに次いで12位にランクインした。 組織のイノベーションを促進する「Hot Spots Movement」の創始者であり、85を超える企業と500人のエグゼクティブが参加する「働き方の未来コンソーシアム」を率いる。 邦訳された『ワーク・シフト』(2013年ビジネス書大賞受賞)、『未来企業』のほか、Living Strategy, Hot Spots, Glowなどの著作があり、20を超える言語に翻訳されている。 (本書の出版当時のもの)

アンドリュー・スコット(Andrew Scott)
ロンドン・ビジネススクール教授 ロンドン・ビジネススクール経済学教授、前副学長。オックスフォード大学を構成するオール・ソウルズカレッジのフェローであり、かつ欧州の主要な研究機関であるCEPRのフェローも務める。2005年より、モーリシャス大統領の経済アドバイザー。財政政策、債務マネジメント、金融政策、資産市場とリスクシェアリング、開放経済、動学モデルなど、マクロ経済に主要な関心を持つ。 
(本書の出版当時のもの)

日本語版訳者
池村千秋(いけむら・ちあき)
翻訳者。リンダ・グラットンの前作『ワーク・シフト』など、ビジネス・経済書の翻訳を数多く手がける。




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