はじけるザクロ。秋にはじけるのはクリだけではない。近所を散歩していて、はじけるザクロに遭遇したので写真にとってみた。
ザクロの実は、つぶつぶ。つぶつぶのなかにタネが一つづつ入っている。だから食べるのは正直言ってめんどくさい。もっぱらザクロジュースを飲むという人も少なくないのではなかろうか。
ザクロジュースはイランからの輸入品が多い。ザクロの原産地は、イランからトルコにかけてといわれている。
子どもの頃、東京都三鷹市の社宅に住んでいたのだが、一軒家の庭にはイチジクとザクロの木が何本も植えられていた。イチジクは地中海、ザクロは中近東が原産地。すっかり庭に溶け込んでいたが、その頃は原産地についてまでは知らなかった。
ザクロは英語では Pomegranate という。ポメグラネットという発音は、ザクロとはずいぶん違う。イランが原産のザクロはシルクロードを経由して中国から日本に伝来したわけだが、原産地に存在するザクロス山脈(Zagros Moutains)とはまったく無縁でもないようだ。中国語の石榴をザクロと読んだという説が優勢だが、ザクロはザクロスと関係があると考えたほうが楽しいではないか。
ザクロ石という宝石がある。ザクロのつぶつぶの実に似た地味な宝石だが、12月の誕生石でもある。12月生まれのわたしにとっての誕生石はトルコ石だが、1月の誕生石であるザクロ石という地味な宝石にも親しみを感じてきた。
ザクロというと、日本では鬼子母神と縁が深い。鬼子母神は日蓮宗ではきわめて重要な存在だが、浄土系ではそうではないので、大人になるまでぜんぜん知らなかった。「恐れ入谷の鬼子母神」というダジャレめいたフレーズが江戸時代からあるが、都電荒川線の鬼子母神前駅で下車して参拝できる雑司ヶ谷の鬼子母神堂も風情がある。
(15世紀ルネサンスの画家ボッティチェッリによる「ザクロの聖母」)
三鷹市に住んでいた家のお隣はプロテスタント教会だったが、秋になるといつもなりすぎて余っているザクロの実をおすそわけしていた。プロテスタント教会においてザクロが意味をもつのかどうかは知らない。そもそも聖母が重視されるのはカトリックである。
アルメニア出身の映画監督にパラジャーノフという奇才がいたが、数少ない作品のなかの代表作に『ざくろの色』という、18世紀アルメニアの詩人を描いた作品がある。アルメニアはイランともトルコとも近い土地。先に触れたザクロス山脈の最高峰はアララット山だが、ノアの方舟伝説とも縁の深いこの高山は、現在はトルコ領だがアルメニア人にとっては富士山のようなものだ。美しい映像美の世界のこの芸術映画は、機会があればぜひ取り上げて紹介したい。
つぶつぶの一粒はきわめてちいさいが、ザクロという植物の存在は人類史においてきわめて大きな意味をもつ。ザクロジュースは値段は高いが、カラダによい。
ザクロという果物はじつに興味深い。
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