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2025年2月13日木曜日

書評『ロシアとは何か ー モンゴル、中国から歴史認識を問い直す』(宮脇淳子、扶桑社、2023)ー モンゴル史の視点から「ロシアとはなにか」について考える

 


ロシアと「軍事同盟」を結んだ北朝鮮の「出兵」は実質的な「参戦」であり、ユーラシア大陸の東西がかかわる「世界戦争」化しつつあるのが現状だ。 

「力による平和」を標榜するトランプ大統領の再登場が局面打開につながることを期待しているが、はたしてウクライナとロシアの双方に納得のいく結論が出るのかどうか、きわめて不透明である。

そんなときだからこそ、あらためて「ロシアとはなにか」という問いが重要になってくる。


●なぜ、ロシアは侵略戦争を仕掛けてくるのか? 

●そもそも、ロシアとはいったい何なのか? 



モンゴル史を中心とした東洋史の専門家の立場からみた「ロシアの本質」。著者が語りおろした内容の、編集協力者による再構成なので読みやすい。  


■歴史を捏造するロシア。歴史の捏造は中国共産党だけではない 

ロシアは、長きにわたってモンゴル帝国の支配下にあって、その支配を脱して17世紀に生まれてきたことは「タタールのくびき」というフレーズに集約的に表現されている。

だが、そのフレーズじたいがロシアによる歴史の捏造であるというのが基本的な論点だ。 

たしかに、13世紀のモンゴル軍は侵略の際は大量虐殺を行っている。だが、平定後は基本的に間接統治を行っており、モンゴル統治下では平和が確保されてきたのが歴史的事実なのである*。

*いわゆる「タタールのくびき」の240年間については、最新研究を踏まえた『「ロシア」はいかにして生まれたか タタールのくびき(世界史のリテラシー)』(宮野裕、NHK出版、2023)を参照。
「ジョチ・ウルス」の統治下では、かならずしも平和が永続していたわけではなく、諸侯どうしの争いがつづいていいたが、基本的にハーンの裁定によって決着がつけられていたことが明らかにされている。最終的にジョチ・ウルスの分裂と衰退が、モスクワ公国を中心としたロシア形成への道を開くことになった。


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「元朝」という形で支配された中国(シナ)だけでなく、ロシアもまた然り。中国もロシアもモンゴル帝国の支配下にあった歴史を共有している。

そもそも、ロシアの起源は、北方のスカンディナヴィアからの開拓者であってスラブ系ではなく、先にみたように「タタールのくびき」で苦しんだわけでもなく、ギリシア正教を受け入れビザンツ帝国(=東ローマ帝国)の後継者を任じているが、ギリシア=ローマ文明をそのまま継承したわけでもない*。
 
*宮脇氏は言及していないが、ビザンツ帝国の「聖俗一致体制」は継承しているこれはロシア史の常識である。


18世紀のピョートル大帝による西欧文明化もけっして成功したわけではない。社会的矛盾を解決するために断行された20世紀のロシア革命の成果も、70年後にはソ連崩壊で消え去り混乱期を経てアイデンティティ模索のなか、「ユーラシア主義」に大きく傾き、「疑似民主主義」による独裁制をもたらす結果となっている。 

つまり、アイデンティティの核がきわめてあいまいで、揺れ動いている。つかみどころがないだけでなく脆弱なのである。虚勢を張っているのは、劣等感の裏返しだといえなくもない。 

東西に広大な領土を有するロシアは、「一帯一路」を推進して東西を結ぶ大構想をぶちあげている中国と同様に、実質的に「モンゴル帝国再興」を目指していると著者はいう。大いに説得力のある議論だ。ロシアも中国も、モンゴル人抜きの「モンゴル帝国」である*。

*ただし、モンゴル人に対する扱いは中ロで大きく異なる。ソ連の衛星国されたがモンゴル人としての国家を維持できた北モンゴルに対し、中共支配下で母語のモンゴル語を奪う民族浄化が遂行されている南モンゴルの状況に現れている。この点にかんしては、『内モンゴル紛争』(ちくま新書、2021)など楊海英氏の著作群を参照。


モンゴル人が主導した「13世紀のモンゴル帝国」は、わずか1世紀で瓦解した。中ロという、「21世紀のモンゴル帝国」は、はたしていつまでもつのか? 答えはそう難しいものではなさそうだ。わたしにはそう思えてならない。 

「ユーラシアの動乱」がもたらす結果には、日本列島の住民も十分に心の準備をしておく必要がある。 


■「岡田史学」でユーラシアを考えることの重要性

本書は、著者の宮脇淳子氏と、その師匠であり配偶者でもあった岡田英弘氏による、実質的な二人三脚による著作といっていいだろう。 

岡田英弘氏は、「世界史は13世紀のモンゴル帝国から始まった」とする主張を前面に打ち出した、名著『世界史の誕生』(ちくま書房、1992年)で日本人の世界認識に大きなインパクトをあたえた歴史家だ。わたしもこの本の影響を大きく受けている。現在は文庫化されている。  

岡田氏亡きあとは、宮脇淳子氏は「岡田史学」を世に広めることを使命とされている。本書でも岡田氏のロシア認識をベースに、最新の研究動向を踏まえながら、著者自身のことばでロシアについて語っている。 

「岡田史学」のなんたるかについては、「第1章 巻頭特別講義 入門・岡田史学」にまとめられている。冒頭に置くのはどうかなという気もしないではないが、名著『世界史の誕生』(1992年)を読んでいない人は、あとまわしでもいいので読んでおくべきだろう。 

 モンゴル史についても、ロシア史についても詳しくない人は、本書を読んで認識をあらためてほしいものである。モンゴル史を踏まえたロシアの実像は、広く「常識」となってほしいものだ。 


 (画像をクリック!


目 次
プロローグ いまなぜユーラシアから見た世界認識が必要なのか 
第1章 巻頭特別講義 入門・岡田史学 
第2章 ロシア史に隠された矛盾 ― ユーラシア史からロシアの深層を見る 
第3章 国境を越える相互作用 
第4章 中国がめざす「モンゴル帝国の再現」―「一帯一路」とは 
第5章 ロシア、中国はモンゴル帝国の呪縛から解放されるか? 
エピローグ
参考文献

著者プロフィール
宮脇淳子(みやわき・じゅんこ)
1952年和歌山県生まれ。京都大学文学部卒業、大阪大学大学院博士課程修了。博士(学術)。専攻は東洋史。大学院在学中から、東京外国語大学の岡田英弘教授からモンゴル語・満洲語・シナ史を、その後、東京大学の山口瑞鳳教授からチベット語・チベット史を学ぶ。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究員を経て、東京外国語大学、常磐大学、国士舘大学、東京大学などの非常勤講師を歴任。現在、公益財団法人東洋文庫研究員としても活躍。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



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