(農家で栽培されているいちじく 筆者撮影)
秋は「いちじく」の季節である。大きな生いちじくが、パックに入って店頭に並んでいるのを目にする季節である。
干しいちじくは大好きなのだが、生いちじくは子どもの頃から苦手だ。自宅にいちじくの木があったので食べてみたことはあるが、どうも好きになれなかった。生いちじくの食感があまり好きではないし、匂いもあまり好きではない。
この生いちじくを大好きな動物がいる。それはスズメバチだ。いちじくが熟れてくると、なぜか大きなスズメバチが現れる。果実をむさぼるように食べている。じつに危険きわまりない。
いちじくは漢字で無花果と書く。その意味は何かというと、花が咲かないのに実がなるように見えるからだ。簡単にいってしまえば、いちじくの果実のなかに花があり、それがだんだんと肥大化していって熟れる、ということになる。
古代インドのブッダのコトバにはこうある。 「5 無花果(いちじく)の樹の林の中に花を探し求めて得られないように、諸々の生存状態のうちに堅固なものを見いださない修行者は、この世とかの世とをともに捨て去る。──蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。(『スッタニパーダ』 蛇の章 より)
いちじくの花は実のなかにあるのだから、探したってみつかるはずがない。
いちじくの果実の形は●●に似ている。いや、●●がいちじくの形ににているから、そういうネーミングの商品となったのであろう。どう考えても、その商品のほうが時代は新しいはずだ。
いちじくといえば、葉っぱもまた独特の形である。いちじくの葉っぱをもぎると、茎から白い乳液がでてくる。匂いも甘い。
「いちじくの葉っぱで隠す」というフレーズは子どもでも知っているだろう。これは旧約聖書にもさかのぼるものだ。アダムとイブである。知恵のリンゴを食べた男女は、裸を恥ずかしいと感じるようになり、というお話だ。
このようにいちじくは、古代からの栽培植物である。原産地はアラビア半島南部だという。
中学生の頃、古代ギリシアにはまっていたことがある。ギリシア神話から始まり、岩波文庫に収録されていたヘロドトスの『歴史』や、ギリシア悲劇やギリシア喜劇など読んでいたが、アリストパネスの喜劇のなかに、干しいちじくが何度も登場することに強い印象を受けた。保存がきき、持ち運びもできる。いちじくは生だけではなく、干した状態でも食べるのか、と。
(トルコ産の干しいちじく)
当時は日本で販売されているドライフルーツといえば、昔からある干し柿は別にして、カリフォルニア・レーズンが中心で、たまに国産の干しリンゴや干しスモモを目にするくらいだったろうか。40年くらい前(?)には、干しいちじくは日本で見たことはなかったし、食べたこともなかった。
生まれてはじめて干しいちじくを食べたのは、カリフォルニアのサンフランシスコである。27歳のときだった。店頭で見つけて購入しさっそく食べてみたら、これがじつにうまかった! 甘みが凝縮されていて歯ごたえもいい。それ以来、ドライフルーツとしての干しいちじくは好物である。現在の日本では、もっぱらトルコ産の干しいちじくが流通している。
干しいちじくで赤ワインを飲む。これは密かな楽しみなのだ。
<関連サイト>
高血圧・動脈硬化にも効果?イチジクとワインの合せ技が凄かった (MAG2NEWS、ライフ2016年9月30日)
(2016年10月7日 項目新設)
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