『2020年日本から米軍はいなくなる』(飯柴智亮、聞き手・小峰隆生、講談社+α新書、2014)は、インタビュー形式ですぐに読める本なので、いますぐに読んでおいたほうがいい。
2014年に出版された際は、タイトルに対して「まさか!?」というリアクションを感じたが、トランプ次期大統領の誕生でこの動きは不可逆のものとなりそうだ。オバマ大統領時代からすでに顕在化しているが、米国の財政事情は依然として厳しいのである。
なぜ、在日米軍が撤退するのか?
それは、米中関係が悪化すれば、在日米軍基地が危険にさらされるからだ。沖縄の米軍基地だけではない。日本列島はすでに中国から発射されるミサイルの射程内にある。
在日米軍撤退には「なんと身勝手な!」、という感じがしなくもないが、在日米軍が日本防衛を主目的としていない(!)以上、当然といえば当然の発想だろう。なんといっても米軍の活動は議会によって左右されるし、つまりところ米国のタックスペイヤーの意志が反映する。
著者は、1973年生まれの日本人だが、退役米陸軍大尉で情報担当、すでに米国市民権を取得している。米軍の「中の人」だったわけで、発言には説得力がある。
在日米軍の段階的撤退はあくまでも米国の国家意思として行われるものだが、日本に与える影響はメリット・デメリットの両面があることは言うまでもない。
すでに「リスク分散」の観点から、グアムやフィリピン、オーストラリアへの移転が始まっている。
出版後の2016年にはフィリピンでヂュテルテ大統領が誕生し、情勢に変化はある。2020年というのはデッドラインではない。だが、在日米軍縮小という「外部環境」変化の方向性はアタマのなかに入れたうえで、日本の将来について考えるべきだろう。
アメリカという国は、やると決めたら強引なまでに物事を進める国であることは、日本人ならイヤというほど知っているはずだ。希望的観測は禁物である。
2016年9月には同著者による続刊 『金の切れ目で日本から本当に米軍はいなくなる』((講談社+α新書)が出版されている。
(内容紹介)
「次期大統領候補トランプは、選挙活動中に明言した。『日本は在日米軍駐留経費を出せ、出さないならば、撤退だ』。大統領になれば、彼は米軍最高司令官だ。「日本から撤退する」との命令が出てから、米軍高官が、「いや、その、何の撤退作戦計画もありません」では、許されない。「お前はクビだ!!」とトランプ大統領が、TVで言っていた有名な台詞が発せられるだろう。トランプのこの撤退発言が出た瞬間から、米軍内部では、日本撤退作戦計画が現実に立案されているらしい。軍隊は、如何なる事態への対応を考えておかなければならない。クリントンもまたしかり。就任してからでは遅いのだ。
著者プロフィール
飯柴智亮(いいしば・ともあき)
1973年東京都生まれ。元アメリカ陸軍大尉、軍『事コンサルタント。16歳で渡豪、米軍に入隊するため19歳で渡米。北ミシガン州立大に入学し、士官候補生コースの訓練を修了。1999年に永住権を得て米陸軍入隊。2002年よりアフガニスタンにおける「不朽の自由作戦」に参加。2003年、米国市民権を取得して2004年に少尉に任官。06年中尉、08年大尉に昇進。S2 情報担当将校として活躍。日米合同演習では連絡将校として自衛隊と折衝にあたる。2009年年除隊。2011年アラバマ州トロイ大学より国際政治学・国家安全保障分野の修士号を取得。 (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
<関連サイト>
トランプの大統領就任とNATOの運命 (熊谷 徹、日経ビジネスオンライン、 2016年12月8日)
・・トランプ次期大統領の影響が及ぶのは日本だけではない。欧州もまた
(2016年12月8日 項目新設)
<ブログ内関連記事>
書評 『仮面の日米同盟-米外交機密文書が明らかにする真実-』(春名幹男、文春新書、2015)-地政学にもとづいた米国の外交軍事戦略はペリー提督の黒船以来一貫している・・「
この本のメッセージは一言で要約してしまえば以下のようになる。 ●「米軍は日本本土防衛のため駐留せず」
書評 『「普天間」交渉秘録』(守屋武昌、新潮文庫、2012 単行本初版 2010)-政治家たちのエゴに翻弄され、もてあそばれる国家的イシューの真相を当事者が語る
書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)
・・沖縄本島に米軍将兵が多数駐留していることじたいが抑止力になるのだが
書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論
・・「時代の制約があるのは当然としても、本質においてはまったく古びていないことだ。たとえば日米安保条約について、現在の迷走する状況をあたかも予言しているかのような記述を目にしたとき、その透徹した「現実主義者」のまなざしには思わず恐れ入った。」
『日本がアメリカを赦す日』(岸田秀、文春文庫、2004)-「原爆についての謝罪」があれば、お互いに誤解に充ち満ちたねじれた日米関係のとげの多くは解消するか?
・・「アメリカの「黒船」による強いられた「開国」から始まった「近代日本」、アメリカの「子分」でありながら「親分」に刃向かったために徹底的に叩きつぶされた「近代日本」。原爆を投下されて無条件降伏させられた日本近現代史」
書評 『中国4.0-暴発する中華帝国-』(エドワード・ルトワック、奥山真司訳、文春新書、2016)-中国は「リーマンショック」後の2009年に「3つの間違い」を犯した
書評 『新・台湾の主張』(李登輝、PHP新書、2015)-台湾と日本は運命共同体である!
・・「台湾の価値は空母20隻に該当する」とマッカーサーが言ったとされるが、その間点からいっても日本と台湾の運命は一心同体だ
ノラネコに学ぶ「テリトリー感覚」-自分のシマは自分で守れ!
・・ノラネコですら!!
(2012年7月3日発売の拙著です)
ツイート
ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。
ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。
禁無断転載!
end