昨日(2019年9月21日)のことだが、「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」にいってきた。
行くか行かないか迷っていたのだが、ずいぶん前にeチケット購入してしていたので、使わないともったいないからという消極的理由から行くことにした(笑) なお、会期は明日23日まで。
実業家で美術コレクションというと、米国の石油王ポール・ゲッティなどの諸外国のものはさておき、日本では個人名のついたものとしては、おなじく石油元売りで財をなした出光佐三(出光美術館)など、企業名ではブリジストンやサントリーなど(それぞれ経営者によるコレクションをもとに美術館を所有)が想起される。「松方コレクション」もまた、個人名のついたコレクションだ。
(パンフレットより)
美術品の蒐集は、まずは自分の事業とのかかわりも深く、当時の世界経済の中心だったロンドンから、そして大陸のパリ、その後は北欧などで収集したコレクションで構成されたコレクションだ。だが、昭和恐慌で事業が失敗、コレクションは解体することになる。第2次世界大戦の勃発が大きな災難として降りかかってきた。
ロンドンの倉庫に保管されていた美術品が火災で焼失、フランスの降伏によって進駐してきたナチスドイツよる美術品略奪からは、疎開させることでからくも逃れることができたが、戦争終結後も日本がフランスの敵国となっていたため、「敵国資産」としてフランスに留め置かれたままとなっていた。
だが、日仏国交回復後、フランスから日本に返還されたコレクションを母体に「国立西洋美術館」が1959年に開館することになった。今年はその60周年というわけで、それを記念して今回の美術展が開催されることになったわけである。
(パンフレットより)
さて、「松方コレクション展」そのもについてだが、美術展には珍しく、天井まで届くかのように、所狭しと大小の絵画作品が展示されている。これでは、1点1点細かくみるには適してない。しかも、連休初日の土曜日ということもあって、来場客が多くてゆっくり鑑賞するどころではない。
「松方コレクションは印象派」という固定観念が私のアタマのなかにあったが、「フランス印象派」以外の作品もかなり多い。もちろん、目玉はモネやルノワール、ドガやゴッホ、ミレイなどだが、「松方コレクション」の一部は「国立西洋美術館開館」の常設展示として展示されている作品も含まれている。その意味では、本来の「松方コレクション」が部分的ではあれ再現されたといっていいのだろう。
わたし個人の感想だが、今回の美術展は、個々の作品についてというよりも、「松方コレクション」の全体像を、時系列にそって収集テーマごとに、展示室ごとに俯瞰することに意味があると思う。ズームインではなく、ズームアウトである。もしこれから訪問されるなら、そういう見方をおすすめしたい。あと1日しかないのだが・・・・
世界遺産になった建築家コルビュジエによる建物、「松方コレクション」の目玉の一つであるロダンの彫刻(地獄門、考える人、カレーの人びとは野外展示)をあわせて、楽しむといいでしょう。
<ブログ内関連記事>
『ワシントン・ナショナル・ギャラリー展』(三菱一号館美術館)に行ってきた(2015年3月23日)-フランス印象派の名作を一挙に公開。そしてルドンの傑作も!
「チューリヒ美術館展-印象派からシュルレアリスムまで-」(国立新美術館)にいってきた(2014年11月26日)-チューリヒ美術館は、もっている!
東京で日本美術関連の美術展の「はしご」を3館(2017年11月4日)-『ゴッホ展』(東京都美術館)・『北斎とジャポニスム』(国立西洋美術館)・『江戸の琳派芸術』(出光美術館)
『ル・コルビュジエ 絵画から建築へ-ピュリスムの時代展』(国立西洋美術館・上野)に行ってきた(2019年3月21日) -ル・コルビュジエ晩年の作品である国立西洋美術館が1959年に開館してから60年になる
祝! ル・コルビュジエ設計の東京・上野の国立西洋美術館が念願の「世界遺産」登録が内定(2016年5月18日)
映画 『ミケランジェロ・プロジェクト』(米国、2014年)をみてきた(2015年11月8日)-ナチスの破壊から美術品を救出した特殊部隊「モニュメンツ・メン」の知られざる偉業
(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)
end