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2021年10月10日日曜日

書評『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐-中国共産党建党100年秘史』(遠藤誉、ビジネス社、2021)-「習近平体制」の中国共産党を理解するために「鄧小平神話」は解体しなければならない

 
『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐-中国共産党建党100年秘史』(遠藤誉、ビジネス社、2021)を読了。  日本人、とくに日本のビジネスパーソンのあいだに根強く生き続けている「鄧小平神話」の解体を意図したものだ。

「鄧小平神話」が、習近平体制の中国共産党の行方を見るために大きなバイアスとなっているためである。 

「黒いネコでも白いネコでも、ネズミをとるのがいいネコだ」というフレーズや「先富論」で、中国経済の成長にカツを入れた「南巡講話」を行った人物として鄧小平は、長きにわたって高く評価されてきた。これは日本だけでなく、西洋社会でも同様だ。 

わたし自身も、大学卒業後はビジネスパーソンとして過ごしてきたこともあり、どうしてもそのバイアスから免れていなかったようだ。鄧小平こそ、中国を資本主義化、すなわちまともな方向に導いた政治指導者である、と。 

そんな「鄧小平神話」がいかに、中国共産党と習近平を見る眼を歪めているか、この事実が本書でいやというほど明らかにされる。 

習近平はいわゆる「太子党」であり、革命第二世代である。その父・習仲勲は、毛沢東の信頼あつい同志として中国革命を成功に導いた功労者であった。 

その習仲勲を冤罪で失脚させ、しかも16年の長きにわたって獄中生活を送るように仕向けただけでなく、復権後もふたたび失脚に追いやったのが鄧小平である。しかも、復権後の習仲勲が取り組んだ「経済特区」をあたかも自分が始めたように歴史を捏造したのも鄧小平である。 

これらの事実が、著者による執拗な調査と資料の読み解きによって暴露される。ある意味では、大量虐殺を行った毛沢東よりも悪辣な独裁者であった、とさえ著者は明言する。『毛沢東 日本軍と共謀した男』(2015年)の著者でもあるだけに、この発言は重い。 

「鄧小平の陰謀」に対する実子による「50年後の復讐」習近平は、ひたすらそのときを待っていたのである。じつに息の長い話である。中国人ならではといえようか。習近平体制になってしばらくしてから、中国では鄧小平批判が公認されるようになっているようだ。 

現在、習近平は「共同富裕」などの政策によって、中国共産党と人民解放軍に蔓延していた腐敗を叩いてきただけでなく、アリババなどのIT系大企業を叩き、ことごとく「鄧小平路線」の修正を断行している。だが、それが共産主義イデオロギーにもとづいた政策であるだけでなく、怨念ともいうべき情念が根底に存在することを知ると、物事は違って見えてくるのではないだろうか。返り血を浴びることも辞さない覚悟が、習近平の言動からうかがうことができるのだ。

習仲勲は少数民族に融和的で、異論を認めることを推奨してきた人物だ。だが、その息子の習近平は父とは違って、チベットやウイグル、モンゴルなど少数民族には過酷な政策をとっている。

著者は、そこになんらかの「やましさ」があるのではないかと見ている。その点が習近平の弱みであり、そこを衝け、と。 

「私の一生は中国共産党との闘いに費やされたようなものである」と「あとがき」で述懐する、現在80歳の著者による最新作である。「この執筆が人生最後の仕事になるかもしれないと覚悟」してできあがった本書は、まさに執念そのものといっていい。 

著者は、『チャーズ』(1983年)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(2015年)とあわせて「3部作」としている。「この3部作によって、自分としては中国共産党100年の秘史を暴き出せたのではないかと思っている」という。 

まさに、そんな著者の執念が生み出した本である。著者の本はほとんど読んできたが、この最後の本になるかもしれない最新作は(・・そうでないことを祈るが)、習近平体制が今後も続くことがほぼ確実なだけに、読むべき本だといえる。 

ある程度まで中国近現代史と中国共産党の歴史を知っていることが望ましいが、そうでなくても読むべき価値ある本である。やや読みにくい本であるが、すくなくとも『毛沢東 日本軍と共謀した男』(2015年)を読んだ人なら、この本も読むことをつよく奨めたい。必要な事項は、本文でも十分な説明が行われているので、心配無用だ。






目 次
まえがき 
第1章 西北革命根拠地の習仲勲と毛沢東 
第2章 五馬進京と高崗失脚-鄧小平の権勢欲と陰謀
第3章 小説『劉志丹』と習仲勲の失脚-陥れたのは鄧小平
第4章 文革後の中央における激しい権力闘争-華国鋒を失脚させた鄧小平の陰謀
第5章 習仲勲と広東省「経済特区」
第6章 再びの中南海と習仲勲最後の失脚-香港問題と天安門事件
第7章 習近平、鄧小平への「復讐の形」
あとがき
主な参考文献
中国共産党建党100年史年表

著者プロフィール
遠藤誉(えんどう・ほまれ
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士。1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<付記> ビジネス界が賞賛してきた鄧小平と「鄧小平神話」について-個人的な回想

1962年生まれのわたしは、1972年の「日中国交回復」を小学生高学年で体験して以来、大陸中国と台湾のことは、ずっと意識させられつづけてきた。当時の中国は文化大革命末期であり人民公社は健在であり、人民服時代であった。 

1976年の周恩来と毛沢東の死、その後につづいた「四人組」逮捕と裁判などなど激動の中国現代史も、華国鋒首席の時代もある程度までリアルタイムで知っている。現在では「華国鋒 who?」であろうが。 

その華国鋒を失脚させたのもまた、鄧小平であった。だが、どうしても鄧小平が現代中国の方向性を決めたという歴史観に毒されて(?)きてしまったようだ。 

「黒いネコでも白いネコでも、ネズミをとるのがいいネコだ」というフレーズや「先富論」で、中国経済の成長にカツを入れた人物として、また、英国のサッチャー首相をねじふせて香港返還を実現させた実力者、ベトナムを膺懲するとした「中越戦争」を断行した人物として、中国現代史における「小さな巨人」鄧小平の存在の大きさは否定しようがない。 

大学卒業後はビジネスパーソンとして過ごしてきたので、どうしても中国を見る目にバイアスがかかっていたようだ。鄧小平こそ、共産党でありながら、中国を資本主義化というまともな方向(!)に引っ張っていく政治指導者である、と。 

だが、そんな鄧小平に対する疑問がつよく感じるようになったのは「天安門事件」(1989年)であった。学生を暴力的に弾圧する指示を出したのは鄧小平であり、改革派とみなされていた胡耀邦や趙紫陽を切り捨てたのもまた、鄧小平であったことが明るみになったからだ。こえは見方は、多くの日本人が共有するものであろう。 

そんな状況でありながらも、とくに日本の経済界で「鄧小平神話」が崩壊しなかったどころか、それを強化する方向にもっていったのが日本の財界である。中国ビジネスには直接かかわっていなくても、間接的に中国経済との関係があれば当然であろう。日本は、いまや中国経済なしでは存在できないような状況になってしまっている。
 
近年出版されたエズラ・ヴォーゲル氏の鄧小平の伝記もまた、そういった「鄧小平神話」を再生産する役割を果たしているようだ。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979年)で日本を褒め殺したヴォーゲル氏も、もしかすると中国共産党を褒め殺すのが「隠された意図」だったかもしれないが(笑) 

1979年という年は、ちょうどサッチャー政権が誕生した年であり、また鄧小平が再登場した年でもある。イラン革命やソ連のアフガン侵攻もこの年のことであった。その意味でも、現代史においてきわめて重要な転換点となった年なのだ。

だが、習近平氏の「50年目の復讐」の発動で、「鄧小平神話」も風前の灯火だ。習近平体制をどう評価するかはさておき、「鄧小平神話」の解体が不可逆の流れとして進行している事態は、冷静に見つめる必要はあろう。
 
ちなみに、本日10月10日は「双十節」である。正式には「中華民国国慶節」、すなわち中華民国(=台湾)の建国記念日だ。






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