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2021年10月2日土曜日

書評『冤罪と人類-道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』(管賀江留郎、ハヤカワNF文庫、2021)-『ドグラ・マグラ』に匹敵する21世紀の怪著!

 
『冤罪と人類-道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』(管賀江留郎、ハヤカワNF文庫、2021)という700ページ弱の大著を、先週末の2日間で読み切った。まさにノンフィクションの「怪著」である。  

「二股事件」(1950年)という、戦後日本で多発した少年犯罪がらみの「冤罪事件」(のち無罪判決)の一つを詳細を調べていくうちに、管賀江留郎(かんがえるろう)というペンネームの著者は、「冤罪」の本質が、人類の認知構造そのものに由来することを確信するに至る。 

関連者(被害者、被告、刑事、鑑識、検察、弁護士、裁判官、政治家・・)として登場する多数の人物について、膨大な資料をもとにプロファイリングを行う著者の執念。その成果が、詳細に記述されるが、まさに探偵小説を読むように、次から次へとページをめくりたくなる。 

戦前から戦中をへて敗戦後にいたる日本社会、日本の官僚機構、日本の政治について、「図式的な理解」による「常識」がいかに間違っているかを検証していく記述は圧巻だ。とくに戦時中の日本社会についてそういえる。日本近現代史の読み替えも必要となろう。「神は細部に宿る」というではないか。ミクロの視点でマクロを書き換えるわけだ。 

あまりにも多岐にわたる話題に、迷宮のなかで先の見通しを失いそうになりながらも最後まで読ませることになるのは、テーマが「人間の本性」そのものにかかわるものだからだ。日本人少年が被告となった冤罪事件が、人類進化と人類史という壮大なテーマに収れんしていくのだ。 

「冤罪」というものは、人間の認知行動の歪み、つまり「認知バイアス」がもたらすのが結論である。 人間は、現実をありのままに見ないのである。見たいものしか見ていないのだ。人類が進化のプロセスで身につけた脳の特性といってよい。

その「認知バイアス」をすこしでも解消するための解決策がアダム・スミスのいう「公平な観察者」(impartial spectator)である。著者は、『国富論』の著者アダム・スミスのもうひとつの大著『道徳感情論』(The Theory of Moral Sentiments)について詳しく取り上げており、その意味では、この大著は『道徳感情論』の手引き書にもなっている。 

途中まで読んでいて、そのむかし熱中して読んだ夢野久作の大著にして怪著『ドグラ・マグラ』を想起していた。人間の脳が生み出す妄想をテーマにした迷宮のような探偵小説だ。もちろん『冤罪と人類』とは内容的には異なるが、なんだか似ているような気がしてならなかったのである。 

本書で取り上げられたテーマは、あまりにもテーマが多岐にわたっているが、大きなテーマだけでなく、それに収れんしていく小さなテーマのひとつひとつが知的好奇心を刺激する。読むなら、ぜひ最初から最後まで読むことを薦めたい。 





目 次
序 捻転迷宮の入口 1 衝撃の書に導かれ未知への扉が開け放たれる 
2 <拷問王>と呼ばれた怪物刑事の誕生とその実像 
3 日本初のプロファイラーが<浜松事件>に挑戦する 
4 錯誤の連続が解決した<浜松事件>の驚くべき真犯人 
5 内務省と司法省の闘争が紅林刑事を英雄に祭り上げた 
6 <浜松事件>の犯人から見た事件経過と犯人の父 
7 天才分析官は何故<浜松事件>を解決できなかったのか 
8 <二俣事件>など数々の冤罪を生んだ戦後警察の実態 
9 清瀬一郎の憲法改正論と紅林警部補の意外な関係 
10 古畑種基博士の正しい科学が冤罪を増幅させた 
11 史上唯一の正しい訓練を受けた最高裁判事たち 
12 山崎刑事の推理と人情、紅林警部の栄光と破滅 
13 進化によって生まれた道徳感情が冤罪の根源だった 
14 「死んでも残るアホーだからだ」山崎兵八の遺言 
単行本あとがき 
文庫版あとがき 
解説 精密な世界模型たる迷宮(ラビリンス)/宮崎哲弥 
参考文献


著者プロフィール
管賀江留郎(かんが・えるろう)
少年犯罪データベース主宰。書庫に籠もって、ただひたすらに古い文献を読み続ける日々を送っている。著書に『戦前の少年犯罪』。






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