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2024年9月2日月曜日

『私はこうして受付からCEOになった』(カーリー・フィオリーナ、村井章子訳、ダイヤモンド社、2007)は、ビジネスキャリアものであり、HPの企業変革のインサイドストーリーでもある

 

調べ物のため一部だけ読むつもりだったのだが、読み始めたらあまりにも面白くて引き込まれてしまい、最後まで読んでしまった。 


著者は、HP(=ヒューレット・パッカード)の「企業変革」を実行した人だ。

内部昇進ではなく、通信系企業のルーセント・テクノロジーからスカウトされた外部人材で、しかも HP 初の女性CEOだった。シリコンバレーを象徴するような会社だったが、著者が改革にあたった当時は、大企業化して低迷していた。

すでに18年も前の2006年の話であり旬のテーマではないが、この件については記憶にとどめている人もいることだろう。

著者がHPで行った改革は、いわゆるカンパニー制の壁を壊し、技術志向の企業文化に営業マインドを植え付けたことにある。

しかしながら、CEO兼取締役会長でありながら、その他の取締役会メンバーと対立、改革が成就する一歩手前だった HP の CEO を電撃的に解雇された著者。本書は、その経緯をはじめて公にしたものだ。 

その意味では、HPという大企業の「企業変革のインサイドストーリー」でもある。

著者は「いちばん難しかったのは、何を書かないかを決めること」だと述べているが、それでも著者の目をとおして書かれた内情は具体的でナマナマしい。 




■あえてチャレンジングな選択をして全身全霊で目の前の仕事に取り組む

原題は、Tough Choices  ー A Memoir  なので、あえて直訳すれば『タフな選択の数々 ー ある回顧録』ということになろう。 

子ども時代の両親との関係から始まり、大学学部時代を経てロースクールを1ヶ月で中退、ようやく見つけたのがローカルの不動産会社の受付の仕事。そこから始まったキャリア人生が回顧される。 

人生はまさに選択の連続である。チャンスの選択肢が複数あるときは、あえてチャレンジングでエキサイティングなものを選び、目の前の仕事に全身全霊で取り組んで結果をだす

その繰り返しの先に、あくまでも結果として現れてきたのが HP の CEO職だったのだ。その意味では、本書はまずビジネスキャリアものとして読むべき回顧録である。



■ビジネスとは直接関係のない専攻が意味をもつ 

スタンフォード大学の学部生時代の専攻が哲学と歴史学であり、その後ビジネススクールでMBAを取得しているだけでなく、学部時代の卒論を「中世の裁判制度と神判」というテーマで書いたこと(*)が、わたしには大いに刺さった。なぜなら、わたしも学部時代の専攻がヨーロッパ中世史で、その後MBAを取得しているから。 

*ただし、この箇所にかんしては、kindle版で原文と対照すると、日本語版の訳文には誤読がある。中世史を専攻した人なら trial by ordeal が「神判」すなわち「神明裁判」であることがすぐにわかるはずだが、訳者にはその素養がないのだろう。神判とは日本でも中世には行われていた「盟神探湯」(くがたち)などのことである。翻訳者と担当編集者に求められるのは、教養というよりも幅広い雑学である


だが、そんなビジネスとは直接関係のない異色のバックグラウンドをもっていたからこそ、人間の幅と深みが培われたのであろう。スティーブ・ジョブズの「リベラルーアーツ」発言を想起させるものがある。 

HP の CEO 時代には、インタビュアーの質問に対して、愛読書をヘーゲル(!)と答えたり、究極のリーダーシップのあり方を老子(!)に求めている。

前者のヘーゲルは、対立する両極をいかに前向きな方向に向かわせるかの正反合の弁証法、後者の老子は、リーダーの存在が感じられなくなるような環境づくりを目指すことを意味している。 

技術志向の強いHPと営業志向の強い Compaq(コンパック)の企業統合にあたって、「企業文化」のすりあわせに時間をかけたことも、またそんな経歴があったからだろう。

企業経営は最終的に数字で判断されるが、数字はあくまでも結果である。ヒトこそがなによりも大事なのだ。 

ただし、歴史ある企業だからといって、その歴史にしがみつくことは、かえって創業者理念の原点を阻害することになるという認識を示している。歴史だけでなく、哲学も専攻していたことが活きている。


■男性ビジネスパーソンも読めば大いに得るものがあるはず

日本語タイトル『私はこうして受付からCEOになった』と、書籍カバーのデザインは、ビジネスウーマンをターゲットに設定したためだろう。

だが、男性読者を遠ざけてしまう結果になってしまう可能性があるとすれば、もったいない話だ。 

創業者一族に生まれたわけでもなく、起業家として立ち上げたのでもない。父親が法学部の大学教授だが、母親は専業主婦という、当時はごく普通の中流家庭に生まれ育った女性が、いかにタフなアメリカのビジネス世界を生き抜いて、しかも技術系ではないのにハイテク業界のトップまでのぼりつめたか、プライベートライフや感情も含めて語ったライフストーリーである。 

だからこそ、女性だけでなく男性も、読んで得るものは多いはずだ。もっと早くその存在を知って、読んでおけばよかったと思う。 


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・・中世いおこなわれた「決闘裁判」もまた、ある種の「神明裁判」のひとつである



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