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2010年3月1日月曜日

書評  『ブランド王国スイスの秘密』(磯山友幸、日経BP社、2006)-「欧州の小国スイス」から、「迷走する経済大国・日本」は何を教訓として読み取るべきか


近代日本と同じような軌跡を歩んできた「欧州の小国スイス」から、「迷走する経済大国・日本」は何を教訓として読み取るべきか

大企業の現役ビジネスパーソンがその読者の大半である日本経済新聞社の記者が、2002年から2004年まで欧州の金融都市チューリヒ支局長として滞在したスイスについて書いたビジネス書。

2006年当時の日本の読者に向けて、日本経済が抱える問題を打開するために、似たような条件にあるスイスから何を教訓として読み取るか、という観点からまとめた本である。

本書でいっている「ブランド王国」には2つの意味がある。

まず、第一に「国のブランド力」について。これは、スイスの「赤地に白十字の国旗」じたいが、ブランド力のあるロゴであることにもあらわれている。

世界でも有数の強さを誇る通貨スイス・フランをもつスイスは「金融立国」で、低税率と銀行守秘義務を武器に世界中の金持ちからカネを集めてきたことだ。

多言語の連邦国家で地方自治がきわめて強く、結果として連邦政府の国家権力が相対的に弱いスイスは、しかしながら地政学的には山岳国家なので攻めにくい、という相反する二つの条件をクリアしているからだ、という著者の仮説は面白い。

もう一つの「国のブランド力」とはいうまでもなく、風光明媚な国土が観光客を魅了してきたという「観光立国」としての側面である。しかし、この強みも、周囲にユーロ圏が成立したことにより、強い通貨スイス・フランが裏目に出ており、フラッグキャリアのスイス航空破綻にも影響を与えているらしい。

さらに「ブランド王国」には、ネスレスウォッチに代表されるような、スイスに本社を置くグローバル企業が、積極的な買収によって獲得してきた複数のブランドを、ポートフォリオで管理する「ブランドマネジメント先進国」という側面もある。

ただし、この面にかんする記述は、ジャーナリストによるものであり、あくまでも表面的なものにとどまっている。詳しくはブランドマネジメントにかんする経営書をひもとくべきであろう。

この本で著者が読者に訴えたいのは、スイスと日本がほぼ同じ時期にプレーヤーとしてグローバルステージに登場し、同じような軌跡をたどって富強化への道を歩んだことを前提に、日本への教訓を7項目にわたって存在することだ。

基本的に欧州最貧の農業牧畜経済であったスイスは、海外傭兵による外貨収入に大きくたよっていたが、こうした状況から脱するために始まったのが、まずペスタロッチに代表される「教育改革」であり、これに続いた「産業革命」により、勤勉さを武器に精密機械などを中心にした「製造業立国」への道を進むことになった。

本書でも紹介されているように、明治維新政府による「岩倉遣欧使節団」が、小国スイスにモデルの一つを見たのも不思議ではないのだ。

さて、著者が提言している、「スイスに学べき7つの知恵」とは以下のとおりである。

1. 高付加価値経済の実現
2. 「強い通貨」
3. プライベートバンク
4. 美しい国土
5. 人的資源を活性化する仕組み、とくに若手を登用する仕組み
6. 外国人の活用
7. 「小さな政府」

IMF統計では人口一人あたりGDPで世界第4位(・・日本は23位)、また本書によれば、人口一人あたり企業価値で世界一というスイスも、さまざまな問題を抱えているが、著者があげている7項目については、いずれも日本は模範とすべきであろう。

とくに「強い通貨」については、日本では輸出依存型の製造業を中心に批判が強いが、国全体で考えればけっして悪い話ではない。強い通貨に見合った経済体制、企業体質と戦略を作り上げていくべきであるという著者の考えには賛成である。

本書で著者は、スウォッチによるスイス時計産業の復活と強化についてなどポジティブな面を中心に書いているが、意外にもスイスが抱える問題点にも目配りをしている。とくにフラッグキャリアであったスイス航空破綻については、著者がスイス勤務中の旬の出来事であったこともあり、本書では数ページにわたってその経緯が詳述されている。

スイス航空の挫折(・・最終的にはドイツのルフトハンザ傘下に入って再生)が、ハブ空港であるチューリヒ空港の前途に暗い影を落としていること(・・チューリヒは、ルフトハンザのハブ空港である、フランクフルトからもミュンヒェンからも近すぎる)、これが観光業だけでなく、金融業を中心としたビジネス全般にも影響がでかねないことなど、同じくフラッグキャリアであった日本航空(JAL)破綻を目撃することになった日本人にとっても、他人事とは思えない。

人口730万人にすぎないスイスは、現在でもEUに加盟せず、欧州共通通貨ユーロの導入にも背を向けていることなど、アジアにおける現在の日本のポジショニングと似ていなくもない。

スイスという国が好きであれ嫌いであれ、一読の価値ある本だといえよう。


<初出情報>

■bk1書評「近代日本と同じような軌跡を歩んできた「欧州の小国スイス」から、「迷走する経済大国・日本」は何を教訓として読み取るべきか」投稿掲載(2010年2月27日)

*再録にあたって字句の一部を修正した。




<書評への付記>

出版されてから4年たっている本を書評として取り上げたのは、やっと読む機会が訪れて目を通してみたら、意外と内容が面白かったからである。

内容については、必ずしも全面的に賛成するわけではないが、ビジネスの観点からスイスを考えるという視点は、日本経済新聞社ならではといっていいだろう。

スイス関連本は、これから何冊か書評として紹介することにするが、スイスという存在は、毀誉褒貶(きよほうへん)あいなかばして、実像を掴むのが非常に難しい。

一方では「閉鎖的」だと批判され、他方では「国際的」だと賞賛される。欧州のグローバル企業の多くがスイスに本社機能を置いていることは国際性の一つの現れであるといってもいいだろう。

スイスの国としての「ブランド力」は、まだまだ強いといえる。さまざまな問題が発生しており、反スイス的な言説も多く流布しているが、揺らいでいるとまではいいにくい。一方、日本のブランド力はその根幹にあったはずの高い品質というブランドが、トヨタ問題に顕著に表れているように、揺らいでいることは否定できない。

「強い通貨」であるスイス・フランについては、現在でも国際決済通貨(ハードカレンシー)として根強い人気があることは特筆に値する。米ドル、ユーロ、日本円、英国ポンドにつぐポジションを保持しており、スイスがEU加盟はおろか、欧州共通通貨ユーロに背を向けている理由は明らかである。

社会主義圏は、スイス・フランを国際決済通貨として使用してきた歴史があり、たとえば北京発モスクワ行きの「シベリア鉄道」のチケットは、私が乗った1999年時点ではスイス・フランによって正価が表示されていた。 

スイスのプライベートバンクが絶大な信用をもっているのは、銀行守秘義務のためだけではない。

なお、書評で「ブランドマネジメント」については経営書を参照のこと、と書いているが、あらためて探してみるとグローバル食品関連企業グループであるネスレ(Nestlé)については、日本語で読める書籍がないことに気がついた。

マーケティング革新の時代 (3) ブランド構築』(嶋口充輝/片平秀貴/竹内弘高/石井淳蔵=編、有斐閣、1999)というマーケティングの専門書に、ネスレの製品ブランド管理について書いているが、残念なことに、どうやらすでに絶版のようだ。

以前、日本経済新聞社にネスレ会長(当時)が「私の履歴書」シリーズに登場していたので愛読していたが、いまだに単行本化されていないようである。

実は私は、就職活動(・・今風にいえば就活)を行っていたときに、ネスレ(・・当時はまだネッスルと英語読みしていた)を企業訪問し、強く入社を誘われたことがある。

ネスレは阪神大震災後も神戸から本社を動かさず、非常に地域貢献を行っている会社である。ネスレに入社していれば、今頃ネスレ風のブランドマネジメントの専門家になってスイスにいたかもしれない、などとブランド・マネジメントにかかわっていた、10年くらい前に思ったことがあった。

まあ人生なんて、自分にもよくわからないものだから、必ずそうなっていたという保証も何もないのだが・・


<関連サイト>

◆ネスレ
ネスレ日本 
The global website of Nestlé SA
◆スウォッチ
Official Swatch Website スウォッチ
Swatch Group 高級ウォッチ・ブランド管理会社としてのスウォッチ・グループ
スウォッチグループジャパン公式サイト


円高を活かせない日本の金融業-スイスに習う債権国型金融(磯山友幸 Wedge 2011年11月17日) (2011年11月24日 追補) 

地方税制が競うスイス所得税12%から26%まで(磯山友幸 Wedge 2011年12月19日(2011年12月21日 追補) 

P.S.

直接は関係ない話だが、タイ王国のバンコクで仕事をしていた頃、まだサービス・アパートメントに住む前は、私の定宿は、なぜか★5つのスイスホテル・ル・コンコルド(Swissotel Le Concordeであった。資本関係は現在ではスイスとは関係ないようだが、ホテル内に「時計のミュージアム」があるのは、バンコクの知られざる穴場の一つであろう。

現在は節約しているので、バンコクでの定宿は、スイスパークホテル(Swiss Park Hotel)★3つに格下げにしている。ただしこちらは、BTSの駅にも近く利便性は高い。

いずれにせよ、タイのバンコクでも、ホテルを含めた観光産業においては、スイスは依然としてブランド力をもっていることの現れだろう。

ちなみに、タイ王国のプーミポン国王ラーマ9世は、生まれは米国のボストンだが、教育はスイスのフランス語圏ローザンヌで受けた国際人である。

この話は、タイのあれこれ (14) タイのコーヒーとロイヤル・プロジェクトで触れているので参照されたい。タイ北部の山岳地帯ドイトンは、ヒマーラヤ山脈の東端の裾野にあたり、気候も過ごしやすく、風光明媚な土地である。



<ブログ内関連記事>

「急がば回れ」-スイスをよりよく知るためには、地理的条件を踏まえたうえで歴史を知ることが何よりも重要だ
・・欧州の「陸の孤島」とも形容されるスイス、まずは地形を知り、歴史を知るのが「急がば回れ」となる

映画 『アルプス-天空の交響曲-』(2013、ドイツ)を見てきた(2015年5月28日)-360度のパノラマでみる「アルプス地理学」

むかし富士山八号目の山小屋で働いていた (3) お客様からおカネをいただいて料理をつくっていた
・・富士山の山小屋では、スイス製の圧力釜でコメを炊く。

書評 『マネーの公理-スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール-』(マックス・ギュンター、マックス・ギュンター、林 康史=監訳、石川由美子訳、日経BP社、2005)
・・「マネーの防衛」というのがスイス流の投機。セキュリティの観点から投資と投機を考える

書評 『民間防衛-あらゆる危険から身をまもる-』(スイス政府編、原書房編集部訳、原書房、1970、新装版1995、新装版2003)
・・スイスといえば、いまでは「国民皆兵」は日本人の常識になったことと思う。スイス人の家庭には、一家に一冊備え付けなのが、この本と銃器一式!

書評 『スイス探訪-したたかなスイス人のしなやかな生き方-』(國松孝次、角川文庫、2006 単行本初版 2003)
・・とはいえ、スイスも曲がり角にきていることが、スイス大使として赴任した國松元警視庁長官のやわらかな筆致で描かれている

1980年代に出版された、日本女性の手になる二冊の「スイス本」・・・犬養道子の『私のスイス』 と 八木あき子の 『二十世紀の迷信 理想国家スイス』・・・を振り返っておこう
・・現在から30年前はまだスイスは観光先としてしか認識されていなかったようだ。そういう現状認識への異議申し立ての内容でもある

ペスタロッチは52歳で「教育」という天命に目覚めた
・・「預言者故郷に容れられず」という格言があるが、理想主義者のペスタロッチの試みは、すくなくとも生前においては故国のスイスでは受け入れられなかった。」

「チューリヒ美術館展-印象派からシュルレアリスムまで-」(国立新美術館)にいってきた(2014年11月26日)-チューリヒ美術館は、もっている!

「フェルディナント・ホドラー展」(国立西洋美術館)にいってきた(2014年11月11日)-知られざる「スイスの国民画家」と「近代舞踊」の関係について知る

(2016年3月7日 項目新設)
(2016年8月11日 情報追加)



(2012年7月3日発売の拙著です)










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