
『Izakaya: The Japanese Pub Cookbook (英文版 居酒屋料理帖)』(Mark Robinson, Photographs by Masashi Kuma, Kodansha International, 2008)は、英語で見て読む「居酒屋写真集」である。
「居酒屋」(izakaya)は、日本人からみれば、あまりにも当たり前な世界。
いわゆるグルメ雑誌のグラビアや、ぐるなびなどのウェブサイトではよく見るものであっても、このようなハードカバーの大型本を眺めてみると、居酒屋というのは「日本文化」なのだなあと、あらためてしみじみと思うのである。
この本では口腹そのものは味わえないが、写真を見るだけでも十分に堪能できる。
考えてみれば、居酒屋についてまとまった本というのは少なくないのだが、本書のような趣(おもむき)をもった本は意外とないものだ。日本人が書くものはどうしてもディテールに焦点をあてがちで、「居酒屋」文化そのものの本はあまりない。あってもガイドブックか、レシピ本か、随筆に終わってしまいがちだ。
この本は、東京生まれで、1988年以来日本に在住する米国人のエディター兼ジャーナリストが、居酒屋文化に惚れ込んで作った写真集といった趣(おもむき)がある。
「居酒屋」文化を、文化そのものとして全体として捉えるという視点が、この一冊をひとつのまとまった小世界(ミクロコスモス)にしている。
本書には、いわゆるチェーン店はいっさい登場しない。単体で営業している、昔ながらの"渋い"居酒屋が8つ紹介されている。英語で言うと "cool" ってかんじな店である。
居酒屋の料理や素材だけでなく、ほろ酔い加減で心を開いている人々、板前さんや従業員たちの働く姿などの写真が散りばめられている。まさに「居酒屋」という小世界(ミクロコスモス)が凝縮して詰まっている。ここに登場する日本人はみないい顔してるし、いい味だしてるねー
こういう本が英語で出版されて、英語圏で流通しているこということは、大いに歓迎されることだ。
若い頃はあまり考えていなかったが、「居酒屋メニュー」は実はカラダにもいい。チェーン店の場合は洋風メニューもかなり多くなったというものの、基本的に「居酒屋メニュー」は和食である。「酒の肴」といったほうが風情があるが。
居酒屋というと、どうしうても酒を飲むのがメインというイメージが強いが、実は健康的でカラダにもいい食事をする場でもあるのだ。しかも居酒屋メニューは、ほんとうに品数が多い。
その意味では、本書に紹介されている「居酒屋メニュー」はいずれも、旬の食材を使った和食で、目で見てよし、食べてよし、カラダによしという三拍子を備えている。
本書にも、数々の「居酒屋メニュー」のレシピが英語で紹介されている。料理名だけは日本語も併記されている。
まあ、居酒屋というものは、そこで飲んで食べてしゃべるものであって、見て読むものじゃないという人のほうが多いだろうが、「日本文化」を英語で勉強することも兼ねて、一冊は手元に置いておきたい写真集である。
<関連サイト>
www.izakayanights.com ・・本書の英文レビューへのリンク集
