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2011年2月4日金曜日

書評 『グローバル製造業の未来-ビジネスの未来②-』(カジ・グリジニック/コンラッド・ウィンクラー/ジェフリー・ロスフェダー、ブーズ・アンド・カンパニー訳、日本経済新聞出版社、2009)-欧米の製造業は製造機能を新興国の製造業に依託して協調する方向へ




日本側スタッフによって再編集された日本語版は単なる翻訳でなく付加価値が高い

 「リーマンショック」後、製造業の世界でいえば「トヨタショック」後(・・といっても、米国で発生した品質問題ではなく、その前に顕在化した販売数量の激減を指す)、製造業をめぐる環境も激変した。一言でいったら、全世界的に可処分所得の減少によって、モノに対する需要が激減したのだ。

 こういった状況のなか、新興国、とくに中国とインドの製造業の急速な台頭は、欧米や日本など先進国の製造業にとっての真の問題となりつつある。
 その心は、国内市場がまだまだ小さい新興国の製造業によってもたらされている、全世界的な供給過剰問題とそれにともなう市場価格低下傾向なのである。

 ある意味では、かつて日本企業が欧米企業に対してチャレンジした内容が、はるかに大規模に新興国によって日本企業に対して行われているということでもあり、「禍福はあざなえる縄の如し」という感想を抱く。
 それととともに、本書の欧米企業にかんする記述を読んでいると、日本の製造業はすでに衰退している欧米の製造業の後追いをしているのかという、いやな予感さえ感じるのである。
 日本の製造業にとって、真のライバルは欧米の製造業よりも、新興国の製造業なのである。

 とくに、第3章「日本型製造観-なぜ戦略がなかったのか」における問題分析は読む価値がある。この章では、日本の製造業(・・もちろん対象は外資系コンサルのブーズ・アレンがクライアントと想定している大企業だが)が、なぜ戦略なしでこれまで成功してきたかについてきちんと整理しているからだ。現在の状況下においては、過去の成功要因がことごとく失敗要因に変化しており、いわゆる「成功のワナ」というヤツに捕らわれているのが日本企業の現状だ。正確な問題分析を抜きに処方箋は書くことができないので、この章だけでも読む意味はある。

 第5章「日本メーカーへの処方箋」は、第3章における問題分析を踏まえての処方箋だが、もはや「リーマショック」以前の「円安バブル」再来が期待できない以上、「ものづくり神話」にこだわるのをやめ、構造的な低収益体制から脱却するための方策として、不採算の製品(群)や事業からの撤退とモジュール化による製造アウトソーシングの活用、それと同時に長期的に儲かる事業分野にシフトし、製造機能以外の強みを活かして付加サービス機能での収益力を強化することなどが提言されている。

 個別企業の状況を踏まえた提言ではないので、きわめて一般的なものにとどまっているが、「増築や改築を重ねた温泉旅館」のような日本企業だから本館と別館を切り離すのが困難だ、といったいい訳に逃げることなく、撤退と新規分野進出を同時にすすめ、新興国市場攻略と新興市場企業との競争と協調を徹底的に考えて実行することが必要になっていることは、否定できる人は多くないだろう。

 すでに欧米の製造業は、製造機能を新興国の製造業に依託して協調し、日本の製造業を追いつめる方向に向かっている。

 いまや日本の製造業は、欧米製造業を他山の石としつつ、自ら戦略をたてて運命を切り開く状況にあるのだ。外資系コンサルによるものだからと敬遠せず、製造業関係者だけでなく、日本の未来について考える人は、一度はざっと目を通すことを奨めたい。

 2008年に米国で出版された原著を詳しく見ていないので確かなことはいえないが、この日本語版は日本のスタッフによって加筆されて再編集されており、日本の製造業関係者にとっては付加価値の高い一冊になっているといえよう。


<初出情報>

■bk1書評「日本スタッフによって再編集された日本語版は単なる翻訳でなく付加価値が高い」投稿掲載(2010年10月16日)
■amazon書評「日本スタッフによって再編集された日本語版は単なる翻訳でなく付加価値が高い」投稿掲載(2010年10月16日)

*再録にあたて、字句の修正を行った。




目 次

第1章 日本型製造観と欧米型製造観―どちらが勝つのか
第2章 欧米型製造観-なぜ弱体化が進行したのか
第3章 日本型製造観-なぜ戦略がなかったのか
第4章 欧米メーカーへの処方箋
第5章 日本メーカーへの処方箋


著者プロフィール

カジ・グリジニック(kaj Grichnik)

ブーズ・アンド・カンパニー ヴァイス・プレジデント。製造業改革を得意とする。製薬、食品、自動車、航空機産業などの製造業を主な対象とし、過去10年間で350以上の工場を訪問してきた。ブーズ・アンド・カンパニー参画前は製薬業界のサプライヤーCRL勤務。MITスローンスクール経営学修士課程修了(MBA)、地質学とミクロ経済学の修士号も有する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

コンラッド・ウィンクラー(Conrad Winkler)

ブーズ・アンド・カンパニー ヴァイス・プレジデント。製造業の戦略、改革、サプライチェーンマネジメントなどを専門とする。ブーズ・アンド・カンパニー参画前は米国海軍原子力潜水艦員を務める。MIT機械工学科卒、ノースウエスタン大学製造業プログラム(ケロッグ経営大学院とマコーミック工学/応用科学大学院の共同プログラム)修士課程修了(MBA)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

ジェフリー・ロスフェダー(Jeffrey Rothfeder)

ブーズ・アンド・カンパニー ビジネス誌『strategy+business』編集主幹。ビジネス誌記者・編集者として豊富な経験を有する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

 英語版タイトルの Make or Break は、「のるかそるか」という意味のようだが、これは会計学でいうMake or Buy の意志決定も踏まえた表現であろう。

 Make or Buy とは、「自社で内製化して作る」か、あるいは「外注先にアウトソーシングして購入する」かという二者択一の意志決定のことを指している。

 その意味では、Make or Break とは、製造機能を自社内に持ち続けて製造を続けるか、それとも破壊か、という意味である。


<関連サイト>

ブーズ・アンド・カンパニー
・・2008年にブーズ・アレン・アンド・ハミルトンから民間コンサルティング部門をカーブアウトさせ独立。ブーズ・アレンはテクノロジー系企業のコンサルティング・ファームとして世界的に有名。米国防省(DOD)からの受託案件が多かったので民間部門は分離させた。



<ブログ内関連記事>

「円安バブル崩壊」(2009年5月4日)
・・このブログでいちばん最初に投稿した記事で、野口悠紀雄の『世界経済危機-日本の罪と罰-』 ( ダイヤモンド社、2009)を踏まえた所感を述べている

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ

書評 『日本式モノづくりの敗戦-なぜ米中企業に勝てなくなったのか-』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)-産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために

書評 『アップル帝国の正体』(五島直義・森川潤、文藝春秋社、2013)-アップルがつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を「末端」である日本から解明
・・まさにアップルこそ、この事例

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには
・・「垂直分裂」というコトバが定着したものかどかはわからないが、きわめて重要な概念である。この考え方が成り立つには、「ものつくり」において、設計上の「オープン・アーキテクチャー」という考え方が前提となる。 「オープン・アーキテクチャー」(Open Architecture)とは、「クローズドな製品アーキテクチャー」の反対概念で、外部に開かれた設計構造のことであり、代表的な例が PC である。(自動車は垂直統合型ゆえクローズドになりやすいが電気自動車はモジュール型)

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

書評 『中国絶望工場の若者たち-「ポスト女工哀史」世代の夢と現実-』(福島香織、PHP研究所、2013)-「第二代農民工」の実態に迫るルポと考察

書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012)-いわば「迂回ルート」による国富論。マクロ的にはただしい議論だが個別企業にとっては異なる対応が必要だ

(2014年8月18日 情報追加)

   




(2012年7月3日発売の拙著です)







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