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2024年4月16日火曜日

「王子から始まった近代日本」を歴史探訪ウォークで実感する(2024年4月16日)ー 製紙業を出発点とした東京都北区王子の歴史を「日本資本主義の父」渋沢栄一を軸にたどってみる

(紙の博物館にて筆者撮影 以下同様)


昨日(2024年4月16日)のことだが、東京都北区の王子から文京区の駒込まで歩いた。約10km弱となる。 

桜の名所として江戸時代から有名な「飛鳥山」の桜を見にいったのではない。今年は桜の開花時期が遅かったとはいえ、さすがにもう散っているだろう、つまり桜が終わっているだろうという想定のもとに訪れたのだ。 

主要な目的は、飛鳥山公園の南にある「渋沢資料館」を訪ねること。じつに24年ぶり(!)となる。

なぜ正確な年数がわかるかというと、そのときに購入した『渋沢栄一』(渋沢秀雄、渋沢青淵記念竜門社)という小冊子に購入年月日が記されていたからだ。 2000年4月2日購入、とある。

渋沢青淵(せいえん)記念竜門社は、現在では公益財団法人渋沢栄一記念財団となっている。


(左が24年前の購入。右は今回の購入。現在でも定価250円は超お得!



■まずは「紙幣と切手の博物館」を訪問 

まずは東京メトロ南北線の王子駅で下車して、「紙幣と切手の博物館」(独立行政法人国立印刷局)へ。これははじめての訪問だ。  


(紙幣と切手の博物館にて筆者撮影)


いよいよ7月3日の「新札発行」までカウントダウンに入ったいま、この博物館は熱い! 昨日時点で「あと78日」。新札の発行数はそう多くないだろうが、じょじょに切り替わっていくはずなので、手にする日も近い。


(2024年4月16日現在で新札発行まで「あと78日」)


1万円と5千円、そして千円と「新札」の見本が展示されており、ホログラムの具合など実際に確かめることができた。

ただし、新札見本は撮影禁止! まあ、偽造防止のニセ札対策の観点からいって、当然といえば当然だ。それ以外の展示品は撮影OKである。

世界各国の紙幣や切手の現物が展示されており、なかなか興味深い。日本の貨幣や紙幣に限定すれば、日本銀行の貨幣博物館(東京・日本橋)があるので、あわせて見学したいものである。


■王子神社の大イチョウがすごい 

つぎに王子神社へ。特別の御利益があるからというのではなく、うちの近所に王子神社があるので、親近感を感じているからだ。

王子という地名は、ここから来ている。もともとは王子権現社であったようだ。

王子駅から歩くと、音無渓谷を左手に見ながら境内まで昇ることになる。その昇り坂の途中にある大イチョウがすごい。 垂直に天に向かってそびえ立つイチョウの大木。



平日であったためか、参拝者は少なかった。立派な本殿で二礼二拝一礼。




王子神社を参拝したあと、正門からでて飛鳥山公園へ。都電荒川線は、この付近だけ道路を走っており、文字通りの「路面電車」となる。東京に残った唯一の路面電車区間である。その光景を眺めているだけでもたのしい。


(飛鳥山公園前を走る路面電車 歩道橋の上から撮影)


■飛鳥山公園の3つの博物館

飛鳥山公園の桜は、すでに葉桜状態だったが、まだ完全には散っていなかった。これが花の盛りだったらたいへんんだったなと思う。わたしは人混みが大嫌いなのだ。 

飛鳥山公園にある3つの博物館をすべて回る。「紙の博物館」と「北区飛鳥山博物館」そして「渋沢資料館」共通チケットで800円はややお得感があるのでお薦めだ。




「紙の博物館」は王子製紙の企業博物館であるが、王子製紙の「王子」は地名から来ているのである。プリンスの意味ではない。そもそも王子が発祥の地なのだ。

ある意味では、王子は「近代日本の誕生地」のひとつでもある。「王子=渋沢栄一=王子製紙、そして国立印刷局」は、ひとつながりのものと考えるべきである。

その心は「紙」である。水の豊富な王子の地が「洋紙」の製造に適していたからこそ、工場立地として選択されたわけであり、国家主権の最たるものである紙幣の製造の地となったのである。

渋沢栄一が最初に立ち上げたのが現在の王子製紙の出発点である「証紙会社」であり、それは明治6年(1873年)のことであった。渋沢栄一33歳のときである。 そして、渋沢は王子の飛鳥山に居を定めることになる。

「紙の博物館」は今回がはじめての訪問で、洋紙の歴史を総覧できる博物館だ。印刷博物館は何回か行っているが、紙の博物館は今回がはじめて。うかつなことであった。




「企画展 藩札から近代紙幣へ」をやっていた。これだけ多くの「藩札」の実物を見る機会はめったにない。関心のある人はぜひいくべきだろう。 


*****

隣接する「北区飛鳥山博物館」も今回がはじめて。常設展示は北区の歴史を縄文時代から江戸時代まで。  

常設展示は、北区の住民ではないので、あまり面白くなかった。ただし、「江戸時代の花見弁当」は興味深い。当時から弁当箱というものがあったのか、と。上・中・下の中身の違いも興味深い。


(花見弁当の模型 手前が「中」、反対側は「下」 筆者撮影)


「企画展 ファッションプレートが映し出す近代」も、「紙」の関連であるのはタイミング的にはいい。ヨーロッパと日本のファッション画の展示。企画展のカタログ(700円)を購入。 



*****

さらにその隣に「渋沢資料館」がある。24年ぶりの訪問だが、前回の記憶はまったくない。

しかも、大幅にリニューアルされたらしく、ひじょうにわかりやすいテーマ別のくビジュアルなパネル展示となっていて、大いに楽しめた。 




「企画展 渋沢栄一肖像展 Ⅰ」は、渋沢栄一のポートレートを集めた企画展。実物大の写真はサイズとしては小さいが、写真術到来以降の人である渋沢栄一のポートレートが豊富に残っているのである。



さらに渋沢庭園内の「青淵文庫」(せいえんぶんこ)と「晩香盧」(ばんろこう)に行って内部に入る。これも今回はじめてとなる。この2つの建築物は戦災を免れたという。ともに国の重要文化財。  


(青淵文庫の外観)


「青淵文庫」の「青淵」は渋沢栄一の「号」で、書庫と接客スペースを兼ねた洋風建築


(青淵文庫の内部)

(青淵文庫の内部)


「晩香盧」は賓客を迎えるレセプションルームとして使われた「洋風茶室」。100年前の建築は堅牢で、内部のインテリアもいい味出している。 


晩香盧の外観)


(晩香盧の内部)



■駒込方面に下って古河庭園へ

さて、飛鳥山公園をでると駒込方面へ。「一里塚」を過ぎ、左手に警戒厳重な「国立印刷局」を見ながら歩き、本郷通りをいくと右手に「古河庭園」へ

(国立印刷局)


国指定名勝の「旧古河庭園」はようやく訪問がなかった。古川財閥がつくった庭園である。 文京区の千石に住んでいたこともあるのに、結局1回も行ったことがなかったのだ。


(古河庭園の正門)


閉園時間が近いので洋館に入って見学。内部は撮影禁止というのは、なんだかなあ、と。

ただし、この洋館を設計した英国出身の建築家であったジョサイア・コンドルにかんする展示はよかった。

日本画家・河鍋暁斎(かわなべ・きょうさい)に入門したコンドルとの師弟関係などが興味深い。暁英(きょうえい)と名乗ったコンドルの日本画は、玄人はだしであることに驚かされた。

(バラ庭園から眺めた洋館)


庭園にかんしては、時間がなかったので洋風庭園を歩く
にとどめ、日本庭園は上部から眺めるにとどめた。 またの機会に散策したいと思う。でも、バラの咲く季節は混雑するだろうなあ。


(あずまやから眺めた日本庭園が美しい)


以上、王子駅から駒込駅まで歩き、王子が近代日本の誕生地のひとつであることを実感することができた有益な一日であった。

このテーマ性のある探索コースは、歴史探訪ウォークとして薦めたい。 駒込まで歩く必要はないので、飛鳥山公園を中心にしたコースが手頃でよいだろう。



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