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2011年8月24日水曜日

来日中のタクシン元首相の講演会(2011年8月23日)に参加してきた


 昨日(2011年8月23日)、タイ王国のタクシン元首相の講演会に参加してきた。

 主催は、一般社団法人 日本・中国・ASEAN経済文化研究会。会場は、東京・神保町の学士会館、個人は会費2,000円。18時から20時までの予定であったが、タクシン氏の都合で、約15分遅れで開始、いきなりタクシン氏の講演で始まった。

 会場には 250人くらいだろうか、ほぼ満員であった。タクシン元首相が一躍また「時の人」に返り咲いただけでなく、タイの政治経済にかんする関心が強いからだろう。実妹のインラック氏が、タイ国政においては発の女性首相となったことをうじて、日本だけでなく世界的に「時の人」に返り咲いたわけだ。

 座席の前半分は記者と会社関係、後ろ半分が一般人と学生に用意されていた。わたしは「個人」の資格で参加した。法人だと 5,000円の会費は高すぎる。

 ところで、2006年のクーデター後、タクシン氏はタイから追放されて海外亡命中で、現在はモンテネグロ政府の発行するパスポートでドバイを拠点に世界中を飛び回っている。

 今回の講演会場は、セキュリティが甘すぎるのではないかと危惧された。海外亡命中の政府要人が暗殺の対象になるのは常識である。それにしては、「かばんのなかを見せてください」というだけで、金属探知機も設置していないセキュリティ体制の甘さには正直なところ驚いた。あらかじめ想定してかなり早く会場にはいったのは意味がなかったか? タイの日本大使館でも金属探知機によるセキュリティ・チェックが行われている。

 タイの政治家で、クーデターなどで国外逃亡して亡命生活を送った人は多い。たとえば、戦時中から戦後にかけて大きな政治力を誇ったピブーン元帥(・・正式にはプレーク・ピブーンソンクラーム)は、最終的に亡命先の相模原市で没している。ピブーンの政敵であったプリーディー摂政は、亡命先の中国で客死している。いずれも、終生タイに戻ることはできなかった。

 そうしたタイの政治史を考えれば、タクシンは例外中の例外とはいえ、国内には依然として反対勢力もつよく、冗談抜きでいつ暗殺されてもおかしくない。平気で政治的謀殺が行われる風土のあるタイである。もちろん、会場には SP と思われる関係者がちらちらしていたが、日本のセキュリティ感覚の甘さは国際的な非常識ではないかと思う。


■タクシン氏の講演内容

 講演タイトルは 「今後のタイ情勢に臨んで」。講演は英語で、しゃべるごとに通訳が入る形式。いまどき、同時通訳ではないのは珍しい。内容は、講演が約40分弱に、質疑応答が一時間。

 案内文にはタクシン・シナワトラと書かれているが、これは英語読みで、ただしくはタクシン・チナワット。タクシンが名前、チナワットはファミリーネームである。タイ人はファーストネームのみを使うのがふつう。

 現在62歳のタクシン元首相は、亡命疲れなどみじんもみせず、かなり精悍でまだまだ現役という感じをプンプンさせていた。クチでは「もはや自分の世代ではない」などと殊勝なことを述べていたが(笑)、政治的な野心を失って枯れたとはほど遠い印象。とても政治亡命中とは思えない感じであった。それなりの財産を国外に持ち出すことに成功したようであり、まだ財産は底を着いていないのであろう。

 講演の内容は、おもにタイ経済と 日タイ経済関係について。

 話題の中心は、実妹のインラック首相が推進するポピュリスト政策の追認。最低賃金の 25%引き上げの件。この政策はインラック氏の発案か、それともタクシン氏の発案かはわからないが、最低賃金の引き上げによって所得向上を図り、ひいては国内消費の拡大につなげるという政策は、経済的には理にかなっているものだ。

 講演のなかでも言っていたように、最低賃金引き上げ策は、ある意味では「BOP戦略」である。BOP とは Bottom of the Pyramid の略。ピラミッドの底辺にむけて行う販売戦略のことで、たとえば石けんのサイズを小さくしたり、小分けにすることで底辺の人間でも買いやすいよいうに仕向けるものだ。

 底辺層は、向上した所得の大半が貯蓄ではなく所得に回る傾向が高いので、最低賃金引き下げによって内需振興を図ることは、これから行おうとしているタイだけでなく、中国もすでに取り組んでいる。

 ただし、最低賃金引き上げ策がポピュリスト的な大衆迎合型の政策であり、政治的にはかなりの反発も招く可能性のあること。経済的にはインフレをもたらす傾向があることが懸念されるところだ。

 何よりも企業経営者からは、最低賃金の25%(!)賃上げは、労働集約型産業にとっては致命的な影響を及ぼす。タイもまた中国や先進国シンガポールのように、労働集約型産業から知識産業へのシフトを青写真として描いているのだろうが、そうすんなりとはいかないだろう。

 実際のところ、在タイの日系企業の多くが、受け入れがたいと捉えていると聞いている。労働集約型あるいは資本集約型の中間的色彩のつよい製造業が中心の日系企業では当然だろう。

 講演では、自分が首相だった時代に手がけた OTOP についても言及していた。日本の大分県で始まった「一村一品」運動のタイ版である。OTOP とは One Tambon One Product の略。タンボン(tambon)とは、タイの行政単位のことである。これには JETRO が全面協力している。

 このほか、自動車産業や農業などにかんして、具体的な取り組みと日本の SME(=small and mid-sized companies:中小企業)への期待がつよく述べられた。

 全体的には、BOI(=タイ投資委員会)を代弁したような内容の話であったが、実際のところ実妹のインラック首相をつうじて政策実行を間接的に行使できるポジションからの発言であると受け取っても問題はないだろう。

 さすが、かつて 「CEO首相」といわれただけに、何ごとも企業経営のアナロジーで語るタクシン氏の話はわかりやすい。こういうタイプの政治家が日本にもほしいものだと思ったものだ(笑)

 タイの国内政治について内政干渉的な発言は慎みたいが、タクシン氏が起業家であり、タイを代表する通信会社のオーナーであったことからも、あたらしいインラック政権がビジネス寄りの政権であることに期待は大きい。


タクシン氏の今後について


 「日本では禁錮刑判決を受けた外国人へのビザ発給を原則禁止しており、日本政府はタイ政府の要請に応じタクシン氏を特例扱いしたことを認めている」と、ある新聞記事にあった。

 日本政府としては、「タイ政府の要請に応じ」という文言で責任回避を計ろうとしているが、実際のところは、関係再構築に動き出したと見るべきだろう。

 2006年のクーデター後、タクシン氏は一回タイに戻ってきている。そのときに、最高裁の判決がでて禁錮刑判決がでたが、再び国外逃亡して現在に至っている。前回の「帰国」のとき、わたしはタイにいて、TVや新聞で一部始終をみていたが、さすがに現在の状況のまま帰国を強行すれば、間違いなく騒動を引き起こすことになるだろう。

 国王誕生日の12月5日を無事にやり過ごしたあと、今年の年末までに帰国するかが山場になるのではないだろうかと考えている。もしかすると、もっと早まるかもしれないが、「急いては事をし損じる」という日本語のコトワザを教えてあげる必要があろう。


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 ところで、後援会の会場となった「学士会館」だが、なかに入るのは今回が初めて。内部は古色蒼然とした建築で、道路をはさんで斜向かいにある、わが母校の「如水会館」のほうがはるかに立派だなあと、内心ニンマリしたのでありました。これは余計な発言か(笑)。



<ブログ内関連記事>

書評 『クーデターとタイ政治-日本大使の1035日-』(小林秀明、ゆまに書房、2010)
・・タクシンなどタイの政治家の肉声を再現した元外交官の回想録

番外編 書評 『タイ-中進国の模索-』(末廣 昭、岩波新書、2009) 
・・タクシン時代のタイは、日本の小泉政権とパラレルに動いていた「新古典派経済学」の時代であった

『Sufficiency Economy: A New Philosophy in the Global World』(足を知る経済)は資本主義のオルタナティブか?-資本主義のオルタナティブ (2)

書評 『バンコク燃ゆ-タックシンと「タイ式」民主主義-』(柴田直治、めこん、2010) (2010年11月28日追加)

「タイ・フェスティバル2010」 が開催された東京 と「封鎖エリア」で市街戦がつづく騒乱のバンコク(2010年5月27日)

「バンコク騒乱」について-アジアビジネスにおける「クライシス・マネジメント」(危機管理)の重要性

「バンコク騒乱」から1周年(2011年5月19日)-書評 『イサーン-目撃したバンコク解放区-』(三留理男、毎日新聞社、2010)

シンポジウム:「BOPビジネスに向けた企業戦略と官民連携 “Creating a World without Poverty” 」に参加してきた
・・BOPビジネスについて





(2012年7月3日発売の拙著です)






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