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2011年12月27日火曜日

書評 『諜報の天才 杉原千畝』(白石仁章、新潮選書、2011)-インテリジェンス・オフィサーとしての杉原千畝は同盟国ドイツからも危険視されていた!


インテリジェンス・オフィサーとしての杉原千畝は同盟国ドイツからも危険視されていた!■

国際連盟を脱退し、情報収集の機会を大幅に狭められた日本。

そんな状況のなか、優秀なインテリジェンス・オフィサーの活動に期待するところはきわめて大きかった。これが杉原千畝を活躍させた背景である。

「命のビザ」によるユダヤ人救出は、対ソ連戦略の意味合いが濃い。これが本書を読んだ最大の収穫だ。

「命のビザ」の物語の伏線には、ポーランド亡命政府諜報機関との密接な連携がある。1939年にドイツとソ連によって侵略されたポーランドは亡命政府をパリに樹立、のちフランスがドイツに降伏するとロンドンに移す。

日本とポーランドはソ連(=ロシア)を挟んだ "隣国" の関係にあり、日露戦争時の明石大佐以来、インテリジェンスの分野で密接な関係を築いてきた。 これは知る人ぞ知る二国間関係である。

ロシア語以外にもフランス語その他をよくした語学の達人であった杉原千畝は、ソ連からだけでなく同盟国ドイツからも危険視されていたほど超優秀なインテリジェンス・オフィサーであった。この事実も、一般人の杉原千畝像を書き換えるだけのものがあるだろう。

いわゆる「命のビザ」を発給したリトアニアのカウナス総領事時代のユダヤ人少年との切手を介した友情のエピソードが本書に紹介されているが、これはまさにインテリジェンス・オフィサーの面目躍如といったところだ。小さなピースから大きな絵を再現するための情報収集の一環でもあるのだ。

杉原千畝のインテリジェンス・オフィサーとしての側面が、いままであまり語られてこなかったのは、おそらくこいういう理由からだろう。

それは、たとえ身近な家族であってもすべてを語るわけにはいかないという、職業にともなう守秘義務の感覚である。これは、医者や弁護士、経営コンサルタントなど守秘義務を守る職業には共通することだが、職業倫理は生活習慣化すると第二の本性となるのである。インテリジェンスオフィサーもまた、秘密は墓場までもっていく。そうでないとインテリジェンスのコミュニティからは追放されてしまう。

その意味では、膨大な外交文書からあらたな事実を掘り起こしてくれた著者の仕事には感謝したい。

ただ、あまりにもインテリジェンス活動を狭く捉えすぎているのではないかという気がしないわけではない。これは著者があくまでも研究者であって、外交官や軍人といった実務家出身ではないためだろう。その点は割り引いて読む必要がある。

できれば、インテリジェンス活動にとって不可欠な地図をもっとふんだんに挿入して、理解の助けとしてもらいたかったところだ。インテリジェンスと地図は切っても切れない関係にあるからだ。

「命のビザ」も、善意の行為としてだけで見るのはあまりにも一面的だ。何事であれ、世の中の出来事は複眼的に見なければ本質を見落としてしまう

それでもなお、杉原千畝の行為はすばらしいものであったというべきだろう。動機やキッカケはさておき、結果として(!)多くのユダヤ人の命を救うことになったのだから、ユダヤ人にとってだけでなく、長い目で見れば日本の国益のために働いたと顕彰すべきであろう。

プロフェッショナルの仕事とはどういうものか知る意味でも、ぜひ一読をお奨めしたい。



<初出情報>

■bk1書評「インテリジェンス・オフィサーとしての杉原千畝は同盟国ドイツからも危険視されていた!」投稿掲載(2011年12月2日)
■amazon書評「インテリジェンス・オフィサーとしての杉原千畝は同盟国ドイツからも危険視されていた!」投稿掲載(2011年12月2日)

*再録にあたって大幅に書き換えた。






目 次

プロローグ 杉原の耳は長かった
第1章 インテリジェンス・オフィサー誕生す
第2章 満洲国外交部と北満鉄道譲渡交渉
第3章 ソ連入国拒否という謎
第4章 バルト海のほとりへ
第5章 リトアニア諜報網
第6章 「命のヴィザ」の謎に迫る
第7章 凄腕外交官の真骨頂
エピローグ インテリジェンス・オフィサーの無念

著者プロフィール    
白石仁章(しらいし・まさあき)
1963年、東京生まれ。上智大学大学院史学専攻博士課程修了。在学中の1989年より、外務省外交史料館に勤務し、現在に至る。東京国際大学および慶應義塾大学大学院で教鞭を執っている。外交史とインテリジェンス・システム論が専門。特に杉原千畝研究は、大学在籍中からのテーマである(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



PS 2015年公開の日本映画 『杉原千畝 スギハラチウネ』にあわせたものだろう、本書『諜報の天才 杉原千畝』が『杉原千畝: 情報に賭けた外交官』改題されて新潮文庫から文庫化された。(2015年12月27日 記す)





<書評への付記>

ソ連の外部からソ連情報を収集する目的でリトアニア駐在になった外交官の杉原千畝が、ユダヤ人難民にビザを発給したことは独断で行った美談として一般には知られているが、じつはかならずしもそうではなかったようだ。

情報将校とユダヤ人とのかかわりもまた同じ。ユダヤ人を救うのが目的ではなかったが、結果として多くの人命を救出することにつながった。

ただそうはいっても、何事であれ、「結果よければすべてよし」ということべきだろう。

わたしが杉原千畝の名前をはじめて知ったのは、1991年前後のことである。

米国に留学していた際、MBAの授業で「ウォール・ストリート・ジャーナル」を購読するようにつよく勧められて、その通り実行していたのだが、あるとき In memory of Sempo Sugihara とか書かれた顔写真入りの追悼会の広告が掲載されているのを見て、センポ・スギハラとはいったい誰だろう?、と思ったのが最初である。

その後、日本に帰国してから、その当時はじまった「命のビザ」物語のブームで、杉原千畝について知るようになったのである。スギハラ・チウネと読むと知ったのもそれ以降のことだ。その後の杉原千畝の知名度アップについては、あえて書くまでもないと思う。

ところで、「日本のシンドラー」というニックネームはまったくいただけない。ドイツの実業家シンドラー氏とは、動機もキッカケも大きく異なるだけでなく、日本人の行為を外国人になぞらえて説明すること自体が後進国的ではないか。「シンドラーはドイツのスギハラである」くらいのことを言うべきだ。

なお、本書については、著者はいかにも「戦後派」らしく、軍事上の謀略とインテリジェンスを峻別しているが、かならずじもそう言い切れるものではないのではないだろうか。

戦前の日本陸軍による謀略活動が、あまりにも繊細さ欠き、インテリジェンスが不徹底なまま実行したために政治問題を引き起こしたケースが多かったことによるアレルギーが残っているためだろう。

諜報にとどまらず謀略まで行う米国の CIA やイスラエルのモサドのようなインテリジェンス機関の仕事内容を考えてみたらよい。とくに、インテリジェンスをサバイバルの要としているイスラエルの状況を考えてみるとよい。

『シンドラーのリスト』を製作し監督したのがスピルバーグ監督であるが、おなじくユダヤ人の活動をテーマにした映画『ミュンヘン』を思い出していただきたいのだが、今年(2011年)米国が海軍特殊部隊の SEAL に実行させたオサマ・ビン・ラディン暗殺作戦も、じつに綿密なインテリジェンス活動の積み重ねのうえに実行され成功を収めたものだ。

空手のアナロジーで語れば、インテリジェンスのみにとどめるのが「寸止め」だとすれば、謀略まで進めば 「突き」 や 「蹴り」 などの当て技となり、とくに 「回し蹴り」 に該当するというべきだろう。

「ソフトパワー」というコンセプトを作り出した政治学者のジョゼフ・ナイは、軍事力のハードパワーに対して文化力などのソフトパワーの重要性を主張しているが、最近では「スマートパワー」というコンセプトで、ハードパワーとソフトパワーを融合してスマート(=賢く)に使うことが重要だと主張している。

「孫子の兵法」ではないが、「戦わずして勝つ」のが最高である。そのためのインテリジェンスなのだ。






<ブログ内関連記事>

書評 『命のビザを繋いだ男-小辻節三とユダヤ難民-』(山田純大、NHK出版、2013)-忘れられた日本人がいまここに蘇える
・・神道の家に生まれ、キリスト教から最終的にユダヤ教に改宗したヘブライ語学者・小辻節三は、杉原ビザをもったユダヤ人難民を救出した重要な人物である

書評 『指揮官の決断-満州とアッツの将軍 樋口季一郎-』(早坂 隆、文春新書、2010)
・・ユダヤ人の記憶に残るジェネラル・ヒグチもまた、満洲でユダヤ人を救出にかかわった人

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・・満洲とユダヤ人の関係はじつに面白い。その一部を書いてみた

『イスラエル』(臼杵 陽、岩波新書、2009)を中心に、現代イスラエルを解読するための三部作を紹介


ドイツとロシアに挟まれたポーランドの地政学的立ち位置

書評 『ソ連史』(松戸清裕、ちくま新書、2011)-ソ連崩壊から20年! なぜ実験国家ソ連は失敗したのか?
・・スラブ対ゲルマンの長い闘争の歴史のなかにある国境を接するドイツとの確執は、第二次大戦においてソ連に多大な損害を、物的にも人的も及ぼした

書評 『ポーランドに殉じた禅僧 梅田良忠』(梅原季哉、平凡社、2014)-日本とポーランド交流史の一角にこんな日本人がいたのだ!


移民と難民

欧州に向かう難民は「エクソダス」だという認識をもつ必要がある-TIME誌の特集(2015年10月19日号)を読む
・・シリア難民は第二次世界大戦時のユダヤ難民につぐ規模

『移住・移民の世界地図』(ラッセル・キング、竹沢尚一郎・稲葉奈々子・高畑幸共訳、丸善出版、2011)で、グローバルな「人口移動」を空間的に把握する


外交と軍事関連

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.12 を読む-特集テーマは「The World Ahead」 と 「インド、パキスタン、アフガンを考える」

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)
・・ハードパワーとソフトパワーを融合した「スマートパワー」について

(2015年3月10日、2016年6月11日 情報追加)



(2012年7月3日発売の拙著です)








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