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2012年4月16日月曜日

書評『桜が創った「日本」ー ソメイヨシノ起源への旅』(佐藤俊樹、岩波新書、2005)ー この一冊で「ものの見方」が変わる本



日本人が日本語で「桜について語る」ということの意味を社会学者が解き明かした本

日本人が日本語で「桜について語る」ということの意味を社会学者が解き明かした本。ものの見方が変わる刺激的な内容の本である。

それが、本書『桜が創った「日本」ー ソメイヨシノ起源への旅』(佐藤俊樹、岩波新書、2005)だ。

桜と日本。この切っても切れない関係については、これまでにも無数に語られてきた。

日本人なら桜の季節に何も思わないことはない、というほど密接な関係にあるからだ。なんだか日本人のDNAに刻み込まれているのではないかと思うほど、無意識のレベルまで入り込んでいる桜

春になると日本人なら誰もが桜について思い、桜について語る。そしてその語りはひとさまざまでありながら、定型化した語りのパターンをもつ。

だが現在、日本の桜の8割を占めるソメイヨシノは、明治になってからエドヒガンとオオシマの交配によって発生した新品種である。接ぎ木によって増えていった種であり、現代風の表現なら、クローンとして増殖していったという言い方も可能だ。

著者は、ソメイヨシノの起源と急速な普及について、さまざまな文献をあたって探っているが、「日本近代そのものであったソメイヨシノ」に投影されているものは、じつはソメイヨシノ出現以前の日本人の美についての観念(=イデア)であるという。この著者の語りには納得させられるものがある。現実が理念を後追いして実現したのがソメイヨシノであり、ソメイヨシノについての語りが、ふたたび過去に投影されているのが「桜についての語り」なのだ。だから、単純に「創られた伝統」だと言ってしまうのも乱暴なのである。

「ソメイヨシノ以前の主流は山桜だった」という語りは、わたし自身もこれまで何度となくしてきたものだが、「山桜」についての語りじたいが、「始原」をもとめる心性の働きにすぎないことを本書で知ることになる。ああ、なんとやっかいなことよ。

やや小難しい議論が繰り返し、繰り返し延々とつづくなあと思う読者もすくなくないだろうが、第一章だけでも読めば、間違いなくものの見方が変わるはずである。有名な西行法師の和歌も、王朝時代以来の花を歌った和歌も、解釈を変える必要がでてくるだろう。

しかし、翌年に桜の花が咲くのを見たときには、また無意識のうちに定型的な語りに身をゆだねているのかもしれない。それほどの呪縛力のあるのがソメイヨシノである。

本書には言及がないが、日本で製作されたアニメ作品にでてくるのも明らかにソメイヨシノだ。もしかするとすでに日本を越えてそのイメージは拡散しているのかもしれない。ワシントンの桜だけでなく、世界中に偏在するソメイヨシノのイメージ。

ここまで繁殖に成功したソメイヨシノサクラは、果たして今後どのようになっていくのだろうか? 「大学の秋入学」の議論が話題になるこの頃、昭和時代以降、出会いと別れの季節を象徴してきた桜の意味合いも変化していくことになるのかもしれない。

さまざまな意味でじつに知的に刺激的な内容の本である。ぜひ一読をすすめたい。


<初出情報>

■bk1書評「日本人が日本語で「桜について語る」ということの意味を社会学者が解き明かした本」投稿掲載(2011年4月16日)
■amazon書評「桜について語る」ということの意味を社会学者が解き明かした本」投稿掲載(2011年4月16日)


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著者プロフィール

佐藤俊樹(さとう・としき)
1963年広島生まれ。1989年に東京大学社会学研究科博士課程退学。現在は、東京大学総合文化研究科助教授。専門は、比較社会学、日本社会論。著書に、『近代・組織・資本主義』(ミネルヴァ書房)、『ノイマンの夢・近代の欲望』(講談社選書メチエ)、『不平等社会日本』(中公新書)、『00年代の格差ゲーム』(中央公論新社)ほかがある(岩波書店サイトより)。

目 次

まえがき
Ⅰ. ソメイヨシノ革命
-1.  「桜の春」今昔
-2. 想像の桜/現実のサクラ
Ⅱ.  起源への旅
-1. 九段と染井
-2. ソメイヨシノの森へ
-3. 桜の帝国
-4. 逆転する時間
Ⅲ.  創られる桜・創られる「日本」
-1.  拡散する記号
-2. 自然と人工の環
あとがき
桜のがいどぶっく・がいど



(散りかけのソメイヨシノは山桜のようだ。これまた善きかな、善きかな)


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