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2012年5月1日火曜日

書評 『チューリップ・バブル-人間を狂わせた花の物語』(マイク・ダッシュ、明石三世訳、文春文庫、2000)-バブルは過ぎ去った過去の物語ではない!


世界初のバブル経済事件である17世紀オランダの「チューリップ・バブル」の真相を描いた歴史ノンフィクション

世界初のバブル経済事件である17世紀オランダの「チューリップ・バブル」

バブル(泡)がはじけて初めて、それがバブルだったと知る。人間の愚かな行動の実例として、なんども繰り返し言及されるバルの物語ですが、20世紀後半の日本人だけではなく、17世紀前半のオランダ人たちもまた同じでした。

世界経済の中心となったオランダ共和国は、海外貿易と投資活動によって富を蓄積した一部の富裕層の市民が牛耳る政治経済状況でした。

そんな状況のもと、一攫千金を夢見た職人層などがチューリップ投機に人生を賭けるようになっていきます。チューリップの球根が信じられないほどの値をつけ、「実物」の球根は、花を咲かせるまで地中に埋まっているのにかかわらず、転売につぐ転売を重ねて価格は天文学的に高騰していく・・・・。

日本の不動産バブルと似たようなものですね。

違うのは、17世紀オランダはまだ初期近代で資本主義の勃興期であったこと、20世紀後半の日本は後期近代で資本主義の成熟後期にあったことでしょう。

チューリップの球根であれ、不動産であれ、「実体」として存在していながらも、「情報」として流通し、「情報」であるがゆえにバブル的な熱狂を生み出したということなわけです。

本書は、チューリップについての本でもあり、世界初のバブルの生成と崩壊についての本でもあります。また17世紀オランダ史であり、17世紀オランダ社会の一断面を切り取った社会史としての側面ももっています。

さすがケンブリッジ大学で本格的に学んで、歴史学で博士号を取得した人だけあって史実に対する追求は徹底的ですし、しかもストーリテリングの才能も発揮しているので、歴史ノンフィクションとしてはじつに読みでのあるものになっています。

17世紀オランダで「チューリップ・バブル」という、世界最初の「バブル経済」を生み出したチューリップですが、原産地は中央アジアのようです。トルコ民族の移動とともに、西へ西へと移動したのだとか。もともとは、トルコが本家本元なわけですね。

チューリップというとオランダという連想をもつ人が多いと思いますが、じつはチューリップは、17世紀にオスマントルコからオランダ共和国に導入されたものです。ですから、トルコのほうが本家本元

         (イスタンブールのチューリップ園 2005年に筆者撮影)

実生では7年以上かかって、しかもどんな花が咲くのか咲いてみるまでわからないのがチューリップですが、球根ならすぐに咲くのが長所。ただし、子球の数は多くないのが玉にキズ。だから、球根が高値で取引されたわけです。

バブル(bubble:泡)とバルブ(bulb:球根)、なんとなく音が似ているのは不思議ですね。

「チューリップ・バブル」は、1637年2月に、一夜にしてクラッシュしたことが本書では活写されていますが、当時はまだ国全体で統一市場が成立していなかったので、地方ごとにバブル崩壊のにはタイムラグが若干存在したようです。


「チューリップ・バブル」をどう評価するか? 著者は、本書のなかで以下のような発言をしています。

チューリップ投機は始まりから終わりまで、オランダ経済の辺境で行われていたに過ぎなかった。(P.185)

結局、チューリップ・バブルは貧者と野心家のあいだを駆けめぐった熱狂にすぎず、一般に考えられているのとは違って、オランダ経済にはほとんど何の影響ももたらさなかった。(P.271)

おそらくこの見方が正しいのでしょう。

         (イスタンブールのチューリップ園から 2005年に筆者撮影)


この本は、文庫オリジナルとして2000年に出版されたものです。日本語訳を購入してから、なんと12年! 今回ようやく読んでみました。日本語訳は残念なことに、すでに品切れです。

原著タイトルは Mike Dash, Tulipomania: The Story of the World's Most Coveted Flower & the Extraordinary Passions It Aroused, 2001, 1999 英文原著はいち早くペーパバック化されて順調に版を重ねているようです。

日本語版がいちはやく品切れで重版未定というのは、日本人の熱しやすく冷めやすいという性質が、如実に反映しているのかもしれません。

2000年はバブル崩壊からまだ10年、まだまだバブル時代の記憶が濃厚に残っていた年ですが、あれから12年もたつと、もはや二度と日本ではバブルは起きるはずがないから、歴史の教訓など学んでも仕方ないという「気分」が充満しているのでしょうか?

バブル崩壊からすでに20年以上たつ日本ですが、ミニバブルがつくられてははじけるという現象は、その後もたびたび起きています。

ミニバブルの背後にはかならず仕掛け人がいて、安直な金儲けという白昼夢を夢見る人びとがカモにされ、小金(こがね)、いや大金(たいきん)が巻き上げられるわけですね。詐欺まがいの話であることが多いミニバブルですが、今後も絶えることなく仕掛け続けられることでしょう。

その意味では、17世紀オランダの「チューリップ・バブル」は規模的な意味においても、20世紀後半に発生した日本のバブル経済よりも、いわゆるミニバブルに酷似していると言っていいかもしれません。

バブルの発生と崩壊の物語は、けっして過ぎ去った過去の昔話ではないのです。


<初出情報>

ブログへの書き下ろしです。




目 次


はじめに
プロローグ
第1章 天山山脈の谷
第2章 「至福の館」の奥深く
第3章 東方からの旅人
第4章 生涯を植物に捧げて
第5章 レイデン大学からの誘い
第6章 貴婦人の胸飾り
第7章 鏡の中のチューリップ
第8章 フロリスト
第9章 チューリップ狂時代
第10章 「金の葡萄亭」での取引
第11章 ウァウター・ウィンケルの孤児たち
第12章 バブル崩壊
第13章 娼婦の女神フローラ
第14章 チューリップ王の宮廷で
第15章 遅咲きの花
訳者あとがき

著者プロフィール

マイク・ダッシュ(Mike Dash)
Mike Dash is a Cambridge-educated writer and magazine publisher who appears regularly on British television and radio. A professional historian before he became a writer, he has written articles for The Guardian, The Daily Mail, and The Fortean Times. This is his third book. (英文原著につけられていたもの)。

  

<ブログ内関連記事>

「フェルメールからのラブレター展」にいってみた(東京・渋谷 Bunkamuraミュージアム)-17世紀オランダは世界経済の一つの中心となり文字を書くのが流行だった
・・「チューリップ・バブル」が発生した17世紀オランダについて、やや詳しく書いておいた。

書評 『ニシンが築いた国オランダ-海の技術史を読む-』(田口一夫、成山堂書店、2002)-風土と技術の観点から「海洋国家オランダ」成立のメカニズムを探求

「自分の庭を耕やせ」と 18世紀フランスの啓蒙思想家ヴォルテールは言った-『カンディード』 を読む
・・この小説の主人公たちは、最終的にトルコに定住することになる

書評 『1492 西欧文明の世界支配 』(ジャック・アタリ、斎藤広信訳、ちくま学芸文庫、2009 原著1991)
・・オスマントルコが強大になった理由のひとつに、スペインから追放されたユダヤ人を大量に受け入れたことがある。ポルトガルからはユダヤ人が大量にオランダに移民している。これらについて、ややくわしく書いておいた

書評 『植物工場ビジネス-低コスト型なら個人でもできる-』(池田英男、日本経済新聞出版社、2010)・・著者が1980年代からフォローしてきた植物工場先進国のオランダの事例は興味深い。オランダは切り花の生産国として世界に君臨していることは周知のとおり

マンガ 『闇金 ウシジマくん ① 』(真鍋昌平、小学館、2004)





(2012年7月3日発売の拙著です)








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