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2013年10月5日土曜日

書評 『現代オカルトの根源-霊性進化論の光と闇-』(大田俊寛、ちくま新書、2013)-宗教と科学とのあいだの亀裂を埋めつづけてきた「妄想の系譜」


現代オカルトの根源である「霊性進化論」は、宗教と科学とのあいだの亀裂を埋めつづけてきた「妄想の系譜」である。

その系譜が「進化」(?)した果てには、なんと「爬虫類人の陰謀」(!?)が登場するのである(笑)
 
「はあ?」な話でしょ(笑)。

そうはいっても、世の中には「マヤ暦によれば2012年に世界が終わる」など、オカルト的なお話を臆面もなく語る方々が多い。当然のことながら世界の終わりは来なかった(笑) 

その手の話題を耳にしたり書き込みを読んだ際は、けっしてあいづちも打たず反論もせず、「ああ、あれね・・」と、あくまでもココロのなかだけで思ってクチには出さず、ポーカーフェイスでやり過ごすのが大人の態度というものであろう。

とはいえ、組織内でこのような話題をクチにする場合、たんなる話題としての発言だけなら問題はないが、限りなく疑似科学的な話であることを知らないと問題は大きい。科学と疑似科学を見分けるのは簡単ではない。とくに「科学信仰が根強く残る日本のような風土では。

そのためにも本書に整理された「妄想の系譜」は、オカルトに対する「知的武装」として、あるいは「免疫」として、ひととおり目をとおしてアタマの片隅に入れておくことをすすめたい。

だが、これらの妄想系の知識そのものは、知っていたところでなんの役にたつのかよくわからないのが痛いところなのだ。おそらく著者もまた、執筆しながらそう思っているのではないかとひそかに推測する。

では、本書のテーマである「霊性進化論」という「妄想の系譜」を簡単に要約しておこう。


「妄想の系譜」はロシアに始まりオウム真理教に至る

19世紀後半、ロシア出身の霊媒ブラヴァツキー夫人が創始した「神智学」というオカルト思想から系譜がはじまる。

この流れはルドルフ・シュタイナーの「人智学」などゲルマン世界での隆盛を経て、ついには「反ユダヤ主義」にも至るのであるが、第二次大戦後は戦勝国のアメリカを中心としたアングロサクソン世界で花開き、そのアメリカから現代日本にも流れ込んでいる。

すべてはブラヴァツキー夫人に発しているわけだが、その主著である 『シークレット・ドクトリン』 において、ダーウィンの「生物学的進化論」に対抗して、「根幹人種論」という特異な進化論を提唱しているそうだ。この「進化」という概念がじつはキーワードなのである。宗教と科学とのあいだの亀裂を埋める試みとはそういうことだ。

ブラヴァツキー夫人の「根幹人種論」の主張は、生物種としての肉体的な進化をするだけでなく、霊性もまた進化するのだということらしい。

さらに人類には「神人」と「動物化する人間」の二種類があるという。霊性に目覚めた人間のなかには「進化」して「神人」になるものがある一方、霊性に背を向けた人間は「退化」して動物にも悪魔にもなるのだという。つまり「二元論」であるわけだ。

神のような人も、悪魔のような人も存在するのがこの世の中だから、受け入れる人が少なくないというのはわからなくはない。ただ、比喩としてはさておき、わたしはこの「二元論」を事実として受ける気にはならない。

著者は、「進化」という概念を媒介することによって、従来の二元論がより具体化され先鋭化されたところに現代オカルティズムの特色があるとしている。

その「妄想の系譜」の果てにあるのが、日本で無差別テロをおこしたオウム真理教だ。その妄想的世界観において「霊性進化論的な二元論」が根幹にあることが指摘されている。

ではなぜ日本のオウム真理教にまで「霊性進化論」が流れ込んでいるかというと、それがアメリカや英国などアングロサクソン世界で流通している思想だからなのだ。戦後アメリカの圧倒的影響を受けてきた日本には当然のように英語を介して入り込んできている。

プロテスタントが主流のアメリカにおいては、進化論をどう宗教に取り込むかがつねに課題となってきた。進化論の授業を禁止している学校もあることは日本でも知られているが、進化論はアメリカにおいては、科学的事実というよりもイデオロギーとして思想信条の領域にかかわる大問題なのだ。 

「第2章 米英のポップ・オカルティズム」に項目として挙げられている、「輪廻転生と超古代史」(エドガー・ケイシー)、「UFOと宇宙の哲学」(ジョージ・アダムスキー)、「マヤ暦が示す2012年の終末」(ホゼ・アグエイアス)、「爬虫類人陰謀論」(デーヴィッド・アイク)をみれば、アメリカや英国において「進化論」がどう取り込まれてきたかが事例として理解できる。

戦後の日本は、英語を介してアングロサクソン圏の思想の影響を圧倒的に受けてきたわけだが、それらをポピュラーサイエンスに現れた科学的思考というオモテの影響とするなら、米英ポップ・オカルティズムという疑似科学としてのウラの影響を受けてきたことになるわけだ。

そもそもスピリチュアルな傾向のつよい日本は、そうした米英ポップ・オカルティズムの影響を受け入れやすい素地がある。1973年のオイルショックによる高度成長の終焉もまたそれに拍車をかけたといえよう。戦前と戦後は断絶したように見えながら、じつは連続しているのである。


なぜ「妄想」は消えることがないのか

だが、著者が強調しているのは、なぜトンデモとして思えないような妄言や妄説に納得している人が多々いるのかということを考えなくてはならないということだ。

著者によれば、個々の人間の死に対して社会がどう向き合うのかというけっして避けて通ることができない問題にキチンとした答えてこなかったのが近代以降の世界であり、宗教と科学とのあいだの亀裂を埋めつづけてきた恣意的な霊魂観のひとつが「霊的進化論」なのだ、と。

つまり、世界解釈のひとつの方法なのである。真であるか偽であるかはさておいて。

そう捉えれば、「霊的進化論」もあながち「妄言」と片付けてしまえないわけだ。既存の宗教が個々の人間の死に対してキチンとした答えを与えることができなくなってしまった以上、答えをもとめる人たちの欲求に応じようとする思想がでてくるのは当然といえば当然だ。

その意味では、よくできたストーリー(=物語)として受け容れる人が少なくないことは、アタマで理解できないではない。ストーリーによる説明の重要性は、いまやビジネスの場でも語られるくらいだから。人はみな安心したいのである。あまり突き詰めて考えたくないのだ。思考の経済学という観点から、所与のストーリーとして受け取りたいのだ。

だから、そういうストーリーが存在し、必要とされるという事実そのものは否定はできない。わたし自身は受け入れれることはないが・・・。

近代以降の状況については、著者による前著 『オウム真理教の精神史-ロマン主義・全体主義・原理主義-』』(大田俊寛、春秋社、2011)本書とあわせて読むことをすすめたい。ロマン主義・全体主義・原理主義という近代精神の鬼子がオウム真理教を生み出したことが理解できる好著である。

自分たちの予言を成就させるためにテロを起こした日本のカルト集団が世界を震撼させたことを忘れるべきではない。これを予言の自己成就という。 

それにしても、何の役に立つかわからないようでありながら、しかし誰かがやっておかねばならない仕事をやっていただいた宗教学者の著者には敬意を表したいと思う次第だ。

ぜひ読んでほしい一冊である。





目 次 

はじめに
第1章 神智学の展開
 1. 神智学の秘密教義-ブラヴァツキー夫人
 2. 大師のハイアラーキー-チャールズ・リードビーター
 3. キリストとアーリマンの相克-ルドルフ・シュタイナー
 4. 神人としてのアーリア人種-アリオゾフィ
第2章 米英のポップ・オカルティズム
 1. 輪廻転生と超古代史-エドガー・ケイシー
 2. UFOと宇宙の哲学-ジョージ・アダムスキー
 3. マヤ暦が示す2012年の終末-ホゼ・アグエイアス
 4. 爬虫類人陰謀論-デーヴィッド・アイク
第3章 日本の新宗教
 1. 日本シャンバラ化計画-オウム真理教
 2. 九次元霊エル・カンターレの降臨-幸福の科学
おわりに
主要参考文献

著者プロフィール  

大田俊寛(おおた・としひろ)
1974年生。専攻は宗教学。一橋大学社会学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野博士課程修了。博士(文学)。現在、埼玉大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

なぜ人間はオカルトにハマってしまうのか?『現代オカルトの根源』の著者、大田俊寛氏に聞く (東洋経済オンライン 2013年8月23日)
・・本書ではあまり触れられていないマンガやアニメなどのサブカルチャーへの影響についても語られている

と学会公式HP
・・いわゆる「トンデモ本」というラベリング(=レッテル貼り)を果敢に行い、世の中を啓蒙してくれた20年間の功績(笑)をおおいにたたえるべし!




<ブログ内関連記事>

書評 『オウム真理教の精神史-ロマン主義・全体主義・原理主義-』(大田俊寛、春秋社、2011)-「近代の闇」は20世紀末の日本でオウム真理教というカルト集団に流れ込んだ
・・この本は同じ著者による『現代オカルトの根源』とぜひ一緒に読んでほしい


オカルト的世界観

「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」(ワタリウム美術館)にいってきた(2014年4月10日)-「黒板絵」と「建築」に表現された「思考するアート」

書評 『ドアの向こうのカルト-九歳から三五歳まで過ごした、エホバの証人の記録-』(佐藤典雅、河出書房新社、2013)-閉鎖的な小集団で過ごした25年の人生とその決別の記録

スティーブ・ジョブズの「読書リスト」-ジョブズの「引き出し」の中身をのぞいてみよう!
・・1960年代から70年代にかけてのカリフォルニアという風土

グラフィック・ノベル 『スティーブ・ジョブズの座禅』 (The Zen of Steve Jobs) が電子書籍として発売予定

書評 『稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる-自分、人、会社-全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィー』(原 英次郎、ダイヤモンド社、2013)-メンバーの一人ひとりが「当事者意識」を持つことができれば組織は変わる
・・限りなくオカルト的な世界観

書評 『オーラの素顔 美輪明宏のいきかた』(豊田正義、講談社、2008)-「芸能界」と「霊能界」、そして法華経

『鉄人を創る肥田式強健術 (ムー・スーパー・ミステリー・ブックス)』(高木一行、学研、1986)-カラダを鍛えればココロもアタマも強くなる!


アングロサクソン特有の特異な思想

『エコ・テロリズム-過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ-』(浜野喬士、洋泉社新書y、2009)を手がかりに「シー・シェパード」について考えてみる
・・英米系アングロサクソン特有の特異な思想

書評 『2045年問題-コンピュータが人間を超える日-』(松田卓也、廣済堂新書、2013)-「特異点」を超えるとコンピュータの行く末を人間が予測できなくなる?
・・英米系アングロサクソン特有の特異な思想


宗教と科学-両者の葛藤と類似性

書評 『人間にとって科学とはなにか』(湯川秀樹・梅棹忠夫、中公クラシック、2012 初版 1967)-「問い」そのものに意味がある骨太の科学論

書評 『神父と頭蓋骨-北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展-』(アミール・アクゼル、林 大訳、早川書房、2010)-科学と信仰の両立をを生涯かけて追求した、科学者でかつイエズス会士の生涯
・・「進化論」を主張したためにカトリック教会から破門されたイエズス会士

書評 『アメリカ精神の源-「神のもとにあるこの国」-』(ハロラン芙美子、中公新書、1998)-アメリカ人の精神の内部を探求したフィールドワークの記録
・・アメリカ人の精神「三重構造」の一番底にある、いわば「超自然意識」とでもいえる合理的、科学的でない神秘、超自然、夢、予感の世界に注目


「トンデモ系」な人たち

書評 『陰謀史観』(秦 郁彦、新潮新書、2012)-日本近現代史にはびこる「陰謀史観」をプロの歴史家が徹底解剖

書評 『ブリキ男』(秋山祐徳太子、晶文社、2007)
・・『泡沫桀人列伝-知られざる超前衛-』(二玄社、2002)という「トンデモ」なアーチストたちが笑える知られざる名編

おもしろ本の紹介 『偽書「東日流(つがる)外三郡誌」事件』(斉藤光政、新人物文庫、2009)

(2015年8月2日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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