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2014年12月15日月曜日

『雨夜譚(あまよがたり)-渋沢栄一自伝-』(長幸男校注、岩波文庫、1984)を購入してから30年目に読んでみた-"日本資本主義の父" ・渋沢栄一は現実主義者でありながら本質的に「革命家」であった


福澤諭吉の有名なフレーズに「一身にして二生を経(ふ)る」というものがある。幕末から明治維新にかけての大激動期を生き抜いた人ならではの表現だ。

渋沢栄一(1840~1931)もまた、このフレーズにふさわしい人物である。「日本資本主義の父」といわれる渋沢栄一は、豪農の家に生まれたが武士に憧れ、倒幕と攘夷運動に身を投じた疾風怒濤の青春を過ごしている。

攘夷の無意味さを悟ったのちは、もともともっていた現実主義の観点から開国派に転じ、心ならずも幕臣となり、さらに明治新政府の大蔵官僚と紆余曲折を経て、在野の実業家となって「官尊民卑」打破のスローガンのもと、「民」主導の社会構築のために近代ビジネスの確立に邁進する人生を送る。

福澤諭吉が言論と教育という間接的な形で「日本近代化」を推進したの対し、渋沢栄一はビジネスという実践という直接的な形と、それをサポートする教育をはじめとする社会事業によって「日本近代化」を推進したのである。

福澤諭吉が蘭学を経て英学に進んだ学問の人であるのに対し、渋沢栄一は本格的な学問はやっていないが漢籍の教養をもつ実践知の人であった。だが、漢籍で儒教を学んだという点は二人に共通している。

福澤諭吉は自伝文学の傑作とされる『福翁自伝』を残している。渋沢栄一もまた『雨夜譚(あまよがたり)』という自伝を残している。本書のことである。いわば渋沢栄一の青春記といっていい内容の自伝だ。幕末から明治維新にかけてのエネルギッシュな時代とシンクロした自伝である。

(筆者が30年前に大学生協で購入した『雨夜譚』)

『雨夜譚(あまよがたり)は、1887年(明治20年)に渋沢栄一が門弟たちに乞われて四夜にわたって語った前半生の回想を筆記したものである。

渋沢栄一は1874年(明治6年)に大蔵省(当時)を辞職して在野の実業家の道に進むことになるが、この回想録では実業家時代のことは語られていない

やはりなんといっても、前半生の幕末の激動期のドラマチックな展開が面白い。新撰組の近藤勇や土方歳三と直接の関係があったのだ。幕末の京都でのエピソードなど、ドラマチック以外のなにものでもない。

また、子供時代に師匠であった親類の尾高淳忠から受けた「多読学習法」や、修験者をやりこめたエピソードに見られる迷信を徹底的に否定する近代「的」合理主義精神なども興味深い。

とくに後者の合理主義精神のエピソードは、啓蒙主義者の福澤諭吉にも同様のものがあり、のちの「官尊民卑」打破につながる身分制度打破という点でも、渋沢栄一と福澤諭吉には共通するものがある。幕末にはこのような理想主義肌の合理主義者が全国的に少なくなかったことがうかがわれる。

『夜明け前』に描かれた島崎藤村の父のように平田国学の影響で尊皇攘夷に走ったのではなく、利根川水運の関係から水戸学の影響で尊皇攘夷に走った渋沢栄一は、いわゆる草莽(そうぼう)の志士であったが、水戸浪士や吉田松陰などのファナティックな精神と持ち主とは違い、理想主義者であると同時に、商取引の実際をつうじて現実主義者であった点に大きな特徴がある。


(フランス渡航のビフォア&アフターの渋沢栄一 wikipediaより合成)

********************

この本が岩波文庫として出版されたのは1984年で、「日本資本主義の父」が強力にバックアップしていた大学に学んだいたわたしは、すぐに購入したのであった。

だが、積ん読状態のままなんと30年。渋沢栄一が命名した如水会が100年を迎えたことし(2014年)になって、30年目にしてはじめて読んでみた。鹿島茂氏の本格評伝『渋沢栄一 上下』にも縦横に引用されているが、引用されていない部分も含めて全部読んでみたいと思ったからだ。

だが、学生時代ではなく、いまだからこそ理解できるものも多いことに気がつく。とくに明治新政府で渋沢栄一が関与した金融関係の細かい話や、附録として収録された「維新以後における経済界の発達」は、大学の学部生程度にはちょっと荷が重いかもしれない。

もちろん、幕末の激動期の語りがあまりにも面白いので、明治以降と対比してしまう感想をもつかもしれない。それほど幕末の動乱期の語りが波瀾万丈で面白いのである。

『雨夜譚(あまよがたり)は、"日本資本主義の父" ・渋沢栄一が本質的に現実主義者でありながら「革命家」であったことを知ることができる自伝である。現代語訳ではなく、ぜひ原文の語り口をそのまま味わっていただきたいと思う。

語り口が面白いのは、福澤諭吉の『福翁自伝』や勝海舟の『氷川清話』に匹敵する。いずれも口語体で落語のような語り口である。福澤が教育者、勝が政治家、渋沢が実業家とそれぞれ立場を異にしているが、いずれも幕臣としての活動期をもっている人たちである。

なお、わたしが所有している第1刷では「渋沢栄一述」となっているが、1988年5月刊行の第3刷からその記載が消え、副題として「渋沢栄一自伝」が付加されたとのことである。





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渋沢栄一関連

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日印交流事業:公開シンポジウム(1)「アジア・ルネサンス-渋沢栄一、J.N. タタ、岡倉天心、タゴールに学ぶ」 に参加してきた

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書評 『渋沢家三代』(佐野眞一、文春新書、1998)-始まりから完成までの「日本近代化」の歴史を渋沢栄一に始まる三代で描く


幕末の動乱期

書評 『龍馬史』(磯田道史、文春文庫、2013 単行本初版 2010)-この本は文句なしに面白い!
・・龍馬の坂本家は、商人からカネで武士の身分を買った一族。武士であったが商人の血が流れていた。江戸時代は意外と身分は流動的であった。幕臣の渋沢栄一は京都で新撰組の面々とも面識があっただけでなく協力関係にあったので、坂本龍馬とは対極の立ち位置だったことになる

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・・渋沢栄一のように最初の接触がフランスであったケースは幕臣など少数派


明治維新

書評 『明治維新 1858 - 1881』(坂野潤治/大野健一、講談社現代新書、2010)-近代日本史だけでなく、発展途上国問題に関心のある人もぜひ何度も読み返したい本
・・大名と下級武士の結合、すなわち中抜きであった維新革命

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・・廃藩置県という封建制度700年の歴史に終止符を打った革命家・西郷隆盛だが、残念ながら経済や財政にはかならずしも明るくなかった


■財政史の観点から明治維新前後を考える

書評 『持たざる国への道-あの戦争と大日本帝国の破綻-』(松元 崇、中公文庫、2013)-誤算による日米開戦と国家破綻、そして明治維新以来の近代日本の連続性について「財政史」の観点から考察した好著
・・「第二部 軍部が理解しなかった金本位制」の「第1章 江戸の通貨制度」「第2章 江戸の金銀複本位制から明治の金本位制へ」は渋沢栄一も関与した大蔵省初期の近代化の意味を知る参考になる

(2014年12月20日、23日、29日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)












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