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2015年3月18日水曜日

書評 『イスラエルとユダヤ人に関するノート』(佐藤優、ミルトス、2015)-プロテスタント神学 × インテリジェンスという独自のポジションから読み解く


日本人のイスラエルへのアプローチは、ビジネスから宗教や文化までさまざまなものがあるが、「プロテスタント神学 × インテリジェンス」という独自の立ち位置は、まさにこの著者ならではのものといってよい。それは言い換えれば特異な立ち位置ということでもある。

出版元はミルトス。イスラエル関係の書籍を中心に出版活動を行ってきた専門出版社である。ミルトスとは聖書にも登場する地中海原産の花木のことだ。

本書はミルトスが毎月発行している雑誌「みるとす」に連載されたものを内容別に再編集したものである。執筆期間は2007年から2014年まで足かけ7年にわたっているので、この間の国際情勢の変化もまた少なからぬものがある。そのため、現時点からみるとやや古い情報も含まれていることは否めない。

『イスラエルとユダヤ人に関するノート』というタイトルだが、『イスラエル国家とユダヤ民族』としたほうが、本書の内容に即したものとなろう。ホロコースト関連の話題を除いては、イスラエル建国以前のディアスポーラ(=離散)状態のユダヤ人についてはほとんど言及されていないからである。

基本的に、民主主義という価値観を共有するイスラエルを支持すべし、という著者の主張には賛同する。そうでなければ、いわゆる「国策捜査」による逮捕による獄中から解放後に、つぎつぎと発表されたインパクトの強い初期の著作はさておき、とくに佐藤優氏のファンでもないわたしが読むはずもない。

著者の主張で重要なのは、インテリジェンス関連の話題だろう。とくに重要なのは、外務省内のアラブ・スクールがらみの問題についての指摘である。反イスラエルのプロパガンダに「洗脳」されているといっても過言ではない、すくなからぬ数の外務省内のアラビスト(=アラビア語専門家)たち。ここには記さないが、具体的な人名をあげての告発は読者もテイクノートしておくべきだろう。


プロテスタント神学者の「聖書の大地」への特別な想い

だが、冒頭に記したように、著者の立ち位置が特異なものであることは考慮に入れておいたほうがいい。

それは、聖書の大地であるイスラエルへの特別の思いを語るプロテスタント神学者であるという立ち位置だ。カトリックとは違ってプロテスタントは、ローマではなくエルサレムを見ているのである。

じっさいわたしがイスラエルにいった際にも、欧州からも米国からの観光客で出会うのは、大半が「聖地巡礼ツアー」に参加している人たちであった。アメリカの原理主義的なキリスト教徒のなかには、信仰を突き詰めていった結果、ユダヤ教の超正統派に改宗してイスラエルに移住する者もいる。

だから、キリスト教徒でも、プロテスタントでもない一般読者は、その点を意識して読む必要があることは言うまでもない。どんな立ち位置であれ、いわゆるポジショントークとなるのは当然のことであり、キリスト教経由のユダヤ理解もまた、特有のバイアスがかかっていることは、あらかじめ理解しておいたほうがよい。


著者のイスラエル観はアメリカ経由ではない

この本を読んでいて気づいたことがある。個人的なものだが、わたし自身のイスラエルとユダヤ人観が、なにをつうじて形成されたかについてだ。

世代的なものもあるだろうが、反ソ反共の家に生まれ、マルクス主義の影響をほとんど受けず、キリスト教徒でもないわたしは、著者とは2歳しか違わないのだが、真逆の環境で育ったわけだ。高校時代からアメリカを代表する週刊誌 TIME(タイム)を読んでいた。

TIMEを推奨する「英語道」を提唱し実践する松本道弘氏の書くものに親しんでいるうちに、おのずから親イスラエルになっていたというのが正直なところだ。アメリカにとって中東問題は、冷戦時代においても対ソ戦略上きわめて重要な意味をもっていた。ソ連は中東諸国に肩入れしていた。

本書でも大きく取り上げられるマサダ要塞における「玉砕」は、松本道弘氏の著書をつうじて知った。著者は「殉教」という表現を使用しているが、松本氏は「マサダ・シンドローム」(Masada Syndrome)という表現を使用していたと記憶している。これは追い詰められ感と背水の陣ともいうべき心理状態のことだ。英語では siege mentality という。だから、その後わたしはイスラエルを訪れた際も、マサダは絶対にはずさなかった。百聞は一見にしかず、だからだ。

ユダヤ教徒でも、キリスト教徒ではない日本人がイスラエルに関心をもつのは、モサドなどの情報機関を中心としたサバイバルというテーマからである。この関心を持っている人は、日本人でも少なくないだろう。

著者のアプローチは、一般的な日本人とは異なり、ドイツ語をつうじたプロテスタント神学、そして外務省で特訓によって身につけたロシア語を駆使してのロシア経由でのイスラエルとユダヤ人へのアプローチである。英語もアメリカ英語ではなくイギリス英語。こういうアプローチはあまり多くないので貴重だといえよう。ソ連崩壊後にイスラエルに移住した、ロシア系ユダヤ人の存在は大きい


国益とビジネスの関係は?

国家公務員である外交官であった著者に欠けているのは、ビジネスという実利にもとづく思考である。国益という抽象的なもので語りすぎているのは、外務省出身者であるので、仕方がないといえば仕方がない。

その昔、日本人にとてのイスラエルといえば、映画 『栄光への脱出』であり、社会主義的な農業生産共同体キブツの農業であった。現在ではオランダとならんで、ビジネス的なハイテク農業の世界の中心的存在となっている。

日本人のイスラエルへのアプローチが、最近はビジネス面からも活発になってきたことは喜ばしい。とくにセキュリティ分野を中心としたソフトウェア開発に注目が集まっている。

まずは実利から入る、これが健全なアプローチではなかろうか。その後に文化や宗教に関心をもってゆくのもよいだろう。そして、著者のような問題関心があることもアタマの片隅においておくべきなのだ。

プロテスタント神学にかかわる、きわめて狭い世界における議論がいかなるものであるかを知ることができるとはいえ、わたしのような局外者からみれば、「コップのなかの嵐」のような印象さえ受けるのは正直なところだ。だが、こういう議論もあるという認識は、知識としてもっていて損はないだろう。

イスラエルへの特別な想いを抱いていなくても、民主主義という価値観を共有し、地政学的にみて日本と似たようなポジションにあるイスラエルに注目する必要があることは、繰り返し強調しておく必要がある。

イスラエルについて考えることは、日本について考えることである。これは本書についても同様である。






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ビジネスからみたイスラエル

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・・キリスト教を抜きに考えたほうが、ユダヤ教とイスラームの共通性を理解しやすい


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(2012年7月3日発売の拙著です)










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