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2015年12月13日日曜日

映画 『黄金のアデーレ 名画の帰還』(アメリカ、2015年)をみてきた(2015年12月13日)-ウィーンとロサンゼルスが舞台の時空を超えたユダヤ人ファミリーの物語


映画 『黄金のアデーレ 名画の帰還』(アメリカ、2015年)をみてきた(2015年12月13日)。

家族の思い出が詰まった名画を取り戻すため、前例のない国際裁判でオーストリア政府を訴えることになった老齢の一女性と、彼女の依頼でタッグを組んだ孫世代の駆け出し弁護士の実話にもとづいた映画化である。いわゆる法廷ものの要素もあるヒューマンドラマであり、60年の時空を交錯して展開する重厚な歴史ドラマでもある。

舞台は1998年のアメリカ西海岸のロサンゼルスとオーストリアのウィーン。そして1938年当時のウィーンナチスドイツによるオーストリア併合によって難民として脱出したユダヤ人のファミリーヒストリーでもある。家族の思い出のつまった名画「黄金のアデーレ」はオーストリア・ナチスによって略奪されたのであった。

「黄金のアデーレ」とは「世紀末ウィーン」を代表する画家の一人グスタフ・クリムトの傑作である。ウィーンのベルヴェデーレ宮殿美術館の至宝とさえてきた。全面を金箔で装飾された、メランコリックな表情をうかべる美女の肖像画。そのモデルの女性が、ウィーンに生まれ育った主人公の伯母にあたる人だった。正式名称は、「アデーレ・ブロッホ=バウワーの肖像」という。


(クリムトの「アデーレ・ブロッホ=バウワーの肖像」1907年 wikipediaより)

「世紀末ウィーン」の文化芸術活動を支えてきたパトロンには製鉄業で財を成したウィトゲンシュタイン家などユダヤ系の実業家が多かったが、製糖業で財を成したブロッホ=バウワー家もそのひとつだった。ウィトゲンシュタイン家は、クリムトにマルガレーテ・ウィトゲンシュタインの肖像画を依頼している。ちなみにマルガレーテは、哲学者ルートヴィヒの姉である。

だが、その世紀末ウィーンで屈辱に満ちた青春を送っていたのが美術学生崩れのアドルフ・ヒトラーであったことが、その後のユダヤ人に過酷な運命をもたらしたことは誰が知っていたであろうか。

ブロッホ=バウワー家は実業家のファミリーであったが、親戚にあたる若き弁護士の名はショーンバーグ。「世紀末ウィーン」が生み出した作曲家アルノルト・シェーンベルクの孫にあたるという。ショーンバーグはシェーンベルクの英語読みだ。弁護士の彼は、アメリカ人そのものである。

この物語は、旧世界オーストリアのウィーンから新世界アメリカへの移民の物語でもある。ドイツ語世界から英語世界への移住の物語でもある。その意味では、難民を含めた移民によって成り立ってきた新大陸の国アメリカへの価値観の礼賛という要素もある。

最終的に名画を取り戻すことができたのでサクセスストーリーといえるかもしれないが、ラストまでハラハラしどうしのスリリングな内容で飽きさせない。

だが、取り戻したのは名画だけではなかったのだ。とくに感動を求めて見に行ったわけではないのに、ラストシーンで感動したのはそのためだ。ユダヤ人の歴史を超えて、人間として普遍的なものを感じるからだろう。 おそらく映画製作者もそう考えて、あえて主人公にはユダヤ系の俳優を使っていないのかもしれない。

背景や歴史について熟知していればなおさら、そうでなくても十分に楽しめる作品である。あるいはこの映画を出発点にして、第一次世界大戦で崩壊する前の「世紀末ウィーン」の芸術や、近現代のユダヤ史について知ることは大いに意味のあることだといえよう。

(英語版のポスターのほうが映画の内容をよく表現している)





PS ディテールに注目

映画のなかに登場する家族の思い出のひとつに一冊の絵本がある。

日本語訳もされているこの絵本のタイトルは、『ぼうぼうあたま-ちいさいこどものおもしろいはなしとおかしなえ (子どもの近くにいる人たちへ)』(ハインリッヒ・ホフマン作)というものだ。ドイツ語では Struwwelpeter(シュトゥルヴェルペーター)という。

ドイツでは昔から読まれてきた絵本で教訓話なのだが、内容はすごく怖い。絵も怖い。

英語版も読まれており、これがドイツ語世界と英語世界のブリッジにもなっている。映画演出上のの小道具ともいえようか。

この映画をより楽しむためのディテール注目の一例として取り上げてみた。これから『黄金のアデーレ』を映画館で見る際、あるいはDVD化された際には、この絵本が登場するシーンをじっくり見てみるといいだろう。





<関連サイト>

映画 『黄金のアデーレ 名画の帰還』  公式サイト



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(2012年7月3日発売の拙著です)










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