先週土曜日、一年ぶりに明治神宮を参拝してきた。
代々木公園(・・かつての代々木練兵場)から明治神宮の森を散策し、参拝をすませたあと、地下鉄の表参道駅まで歩く。本来はこのルートを往復するのが正しい参拝なのだが、さすがに・・・
昨年の参拝については、このブログのかなり初期の記事として投稿している。新緑の風に誘われて明治神宮を参拝 を参照。
明治神宮は、今年2010年で鎮座90年なのだそうだ。月日がたつのは早いものである。といっても90年以上生きる人はまだまだ少数派だし、鎮座当時のことを知る人はおそらくきわめて少ないだろう。一世代が30年とすれば、90年とはその三倍であるし、還暦60年の1.5倍である。
また、今年は「教育勅語」が公布されてから120年だそうだ。明治維新は1868年であるから、いまから142年前のことである。「教育勅語」が強調した、儒教道徳が幅をきかせたのは、120年前の1890年から1945年までの、たかだか55年間である。「教育勅語」を復活せよ、などと主張するアナクロな人たちがいるが、私は賛成する気にはまったくならない。
明治神宮が無料で配布している短冊形の経本のような小冊子は、オモテ(?)が「教育勅語」、ウラ(?)が「五箇条の御誓文」と「明治天皇御製・昭憲皇太后御歌 一日一首」になっている。
「五箇条の御誓文」は、何度も繰り返し味合うべき、素晴らしい内容だと強調したい。
昨年の今頃書いた、新緑の風に誘われて明治神宮を参拝 にも全文を引用しておいたが、あらためて引用しておきたい。
五箇條の御誓文
一、広く会議を興し、万機公論に決すべし
一、上下(しょうか)心を一(いつ)にして、盛に経綸を行ふべし
一、官武一途庶民に至る迄、各(おのおの)其(その)志を遂げ、人心をして倦まざらしめん事を要す
一、旧来の陋習を破り、天地の公道に基づくべし
一、智識を世界に求め、大(おおい)に皇基を振起すべし
我国未曾有の変革を為さんとし、朕(ちん)躬(み)を以て衆に先(さきん)じ、天地神明に誓ひ、大に斯 (この)国是を定め、万民保全の道を立んとす。衆亦此(この)趣旨に基き協心努力せよ。
明治元年三月十四日
Wikipedia英語版に試訳があるので引用しておこう。 http://en.wikipedia.org/wiki/Charter_Oath なお、太字ゴチックは引用者によるもの。
The Charter Oath in Five Articles
By this oath, we set up as our aim the establishment of the national wealth on a broad basis and the framing of a constitution and laws.
1. Deliberative assemblies shall be widely established and all matters decided by open discussion.
2. All classes, high and low, shall be united in vigorously carrying out the administration of affairs of state.
3. The common people, no less than the civil and military officials, shall all be allowed to pursue their own calling so that there may be no discontent.
4. Evil customs of the past shall be broken off and everything based upon the just laws of Nature.
5. Knowledge shall be sought throughout the world so as to strengthen the foundation of imperial rule
口語体の英語にすると意味がとりやすい。ただし、5. Knowledge shall be sought throughout the world so as to strengthen the foundation of imperial rule の imperial rule は正しい解釈ではないような気もする。この英文だけをみたら、何か帝国主義的野心が明治元年から存在したような印象を与えかねないので誤解を生ずる恐れがある。
「五箇条の御誓文」がエンカレッジした「自由なディスカッション」(open discussion)は、知識階層であった不平士族が中心となった「自由民権運動」という形で大いに行われた。
明治維新が中国や韓国の近代化論者に与えた影響は計り知れないものがあるのだが、日本人以外でこの「五箇条の御誓文」を知っている者は果たして現在どれくらいいるのだろうか。
日本人であるわれわれは当然のことながら、アジア各国でもあらためて、なぜ日本がいち早く「近代国家」としてテイクオフしたか、秘密の一端がここにあることを再確認したいものである。
もちろん、歴史は一直線に進むものではなく、明治元年以降の近代日本は紆余曲折の歴史をたどったのであるが、自由民権運動は間接的にアジア初の成文憲法の成立を政府に促し、1925年には制限つきではあったが普通選挙の実施にこぎつけた。日本の民主主義の歴史は短くはない。
■明治維新に始まった「近代日本」-「モダン」の終焉と「ポストモダン」という新しい時代の夜明け
いわゆる「モダン」(近代)が完全に終焉し、「ポストモダン」(後近代)に入っている現在の日本、あらたな時代のなかで成功を求める30歳台以下の若者たちが成功を目指してビジネス書を読んで勉強する姿には、明治維新後に『西国立志編』が争って読まれたという時代との共通性も感じる。
『西国立志編』とは、『自助論』(Self Help)の日本語訳、中村正直という儒学者が翻訳したものである。英国の産業革命後の成功者のエピソードを集めたものだ。
40歳代以上の「旧世代」の人間にとっては、「ポストモダン」(後近代)への適応は必ずしも容易ではないかもしれないが、30歳台以下の人間でやる気のある人間にとっては、まさに水を得た魚といった状況ではないだろうか。
いまこそ、「五箇条の御誓文」の精神を振り返り、あらたな時代の「御誓文」が必要となろう。
日本にこだわらず、「智識を世界に求め」、「広く会議を興し、万機公論に決すべし」。
職場でも、勉強会でも、ソーシャルメディアでも、いたるところで、「自由な議論」が行われている。
全体として衰退過程にある日本とはいえ、志(こころざし)のある者にとってはチャンスはまだまだ多い。
広く世界を見渡して、個人としての自己実現を図ることが、ひいては日本と日本人のための最大の貢献となるはずである。日本以外の市場に目を向けるべきだろう。
40歳代以上の人間は、新しい時代への「適応障害」を嘆くヒマがあったら、30歳台の人間の発言には大いに耳を傾け、今後の日本をリードしていくことになる彼らを支援するべきだろう。でなければ退場することもやむなしだ。時代の潮目は完全に変わったのだ。
個人的には、「レガシー・メディア」と命名された従来型のマスコミをはじめ、「レガシー××」と命名された、旧時代である「モダン」の悪しき遺産が次々と露見し、崩壊してゆくのをみるのは痛快である。
まさに「旧来の陋習を破」ることがいま求められている。
レガシー(legacy)とは本来いい意味のコトバだったが、GMの年金債務問題が legacy cost(負の遺産によるコスト)と米国でいわれるようになってから、悪い意味で使われるようになっている。
こんな面白い時代、私自身も、「あと10年若ければ・・・」と思わなくもないが、これだけは自分で決められないので致し方ない。
いずれにせよ、いま置かれている状況から、私としては30歳台の人間並みに踏ん張る道を選択した。
「見た目が若い」といわれるのことを褒めコトバであるとポジティブに受け止め、「撃ちてし止まむ」、新しい時代のなかで前進あるのみだ。倒れないように、褒め殺しされて有頂天にならないように・・・
いま求められるのは、何よりも「智識を世界に求め」、「広く会議を興し、万機公論に決すべし」である。
知力、体力、気力の面で負けないよう頑張りたい。
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