両国回向院(えこういん)で開催された善光寺出開帳にいってきた。江戸時代にはおおいに流行った「出開帳」だが、なんと戦後はじめての開催だという。
「牛に引かれて善光寺」のフレーズがあるが、牛にひかれたわけではないがわたしもこれまで3回参拝している。2009年には7年に1回の御開帳があり参加してきた。
善光寺御開帳は、次回は2016年ということになるが、せっかくの機会であるし、東日本大震災の死者の回向もかねているということもあるので、両国回向院の出開帳に参加してきた次第。
善光寺の御開帳といえば、なんといっても回向柱である。巨大な一本木から作った卒塔婆を垂直に立てたものだが、今回は東日本大震災の被災地で伐採された木であるという。
(回向柱)
回向柱と御本寺は糸で結ばれており、この柱にふれることで極楽往生が可能となる。本家本元の善光寺の御開帳とは違って、待ち時間がゼロであったのはよかった。これで回向柱にタッチするのは2回目。極楽往生の可能性は高まったかしらん?
つぎに本堂で善光寺如来(出開帳仏)との結縁。善光寺の秘仏じたいが複製ということだが、複製でも出開帳は出開帳である。ありがたく拝ませていただく。
つぎにお戒壇巡り。両国の回向院は鉄筋コンクリートの近代建築だが、その一階にお戒壇が設置されていた。真っ暗やみのなかを手探りであるいていくのだが、視覚がまったく効かない世界なので、触覚と聴覚をフルに働かせることになる。
本家本元のお戒壇めぐりと比べるとだいぶ違うなあ、という感がするのは仕方あるまい。善光寺のお戒壇は、いったん地下に下りていく下降感覚があり、しかもなかはひんやりとしているだけでなく、かなりの距離もあるからだ。とはいえ、東京で体験できるレアな機会なので、善光寺での未体験者がぜひお戒壇めぐりもしてみるべきだろう。
このほか、善光寺に伝わる寺宝を拝観し、びんずる尊者像にさわって結縁することになる。つくられてから300年以上もたている「びんずる様」だが。これはホンモノだ。タッチすることによって、功徳を得るというのは仏教そのものとは関係ないかもしれないが、民間信仰においては重要な意味をもつ。
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これで善光寺の出開帳関係はだいたい終わりだが、せっかくの機会なので浮世絵の展示もみておくとよい。「憂き世」が転じて江戸時代には「浮き世」となったわけだが、両国は浮世絵にも多く描かれてきた。
とくに見逃せないのが、5月4日から8日までの特別展「鳥居清長名品展」である。江戸のヴィーナスとも称される美人画の浮世絵師である。
美人画で有名な鳥居清長の浮世絵作品が展示されている。鳥居清長の菩提寺が回向院なのでだが、お墓そのものは関東大震災などで行方不明なのだという。顕彰碑が建立ささた機会の名品展が開催とのことだ。美人画以外にも役者絵なども鑑賞できる。
出開帳を見終わって会場の外に出ると、そこは回向院の墓地となっている。
さまざまな供養塔があるが、動物や小鳥の起用頭が目に入る。そのほか大震災や海難事故の犠牲者などの供養塔が立ち並んでいる。もともと江戸時代には刑場のあった場所である。正称は諸宗山無縁寺回向院というだけあって、人間も動物もわけへだてなく弔う場となっているのである。
その奥になんと鼠小僧次郎吉の墓がある。その左隣が猫塚というのは、なんだか笑ってしまった。だが考えてみれば、鼠小僧も庶民のために盗みをした人だし、「猫の恩返し」にまつわる猫塚も、困っている主人のために小判を盗んだ猫の話なので、コンセプトは同じといっていいのだろう。
(鼠小僧次郎吉の墓 左隣に猫の恩返しの猫塚がある)
現在の両国回向院は鉄筋コンクリートの建築物なので、あまりありがたい感じは受けないが、墓地や供養塔は江戸時代以来のものも多く、散策するといろんな発見もある。
(境内ではネコが毛づくろいに専念 さすがに合掌はできないニャ)
処刑場が移転した先にある南千住の回向院にはかつてお参りしたことがあるが、両国回向院に参拝するのは今回がはじめてである。参拝がかなったのも、善光寺との結縁のおかげだろうか。
初夏のいい陽気にめぐまれた一日であった。
<関連サイト>
両国回向院 公式サイト
東日本大震災復幸支縁 善光寺出開帳 両国回向院 公式サイト
・・公式サイトから今回の出開帳の概要についてみておこう。
イベント名: 善光寺出開帳両国回向院
日時: 2013年4月27日(土)~5月19日(日) 9時00分~17時00分(最終入場16:30)
会場: 両国回向院(JR総武線両国駅西口より徒歩3分、地下鉄大江戸線両国駅より徒歩10分)
入場料: 出開帳参拝料 大人(高校生以上)1000円/小人(小・中学生)500円
※別途「お戒壇巡り券」大人500円/小人300円/未就学児は大人の同伴があれば無料
※本出開帳の収益は、全額被災地支援に充てられます。
主催: 善光寺出開帳実行委員会(善光寺・回向院で構成)
内容: (1)出開帳文化財の公開/法要 (会期中全日程・回向院)
【1】善光寺如来(出開帳仏)との結縁
【2】陸前高田の被災松による親子地蔵(父地蔵と小地蔵)の参拝
【3】びんずる尊者像との「復幸しゃもじ」による結縁
【4】善光寺に伝わる寺宝の拝観
(2)回向柱の建立/お戒壇巡り (会期中全日程・回向院)
7年に一度、開催される善光寺御開帳に準じ、被災地陸前高田の木(復興住宅の造成に伴い伐採される木)による回向柱の建立。善光寺参拝時に体験できる「お戒壇巡り」も回向院に再現。
<ブログ内関連記事>
善光寺御開帳 2009 体験記
・・7年に一回の善光寺ご開帳に参加した記録。善光寺は、天台宗と浄土宗が中心に管理
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・・77年ぶりの88か所本尊出開帳
書評 『霊園から見た近代日本』(浦辺登、弦書房、2011)-「近代日本」の裏面史がそこにある
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