「サンダーバード博」(東京・科学未来館)にいってきた。
かつて『サンダーバード』に熱中していたかつての子どもにとってはうれしいかぎりである。じっさい入場者のほとんどは中年だけでなく高年までふくんだ中高年の男子が中心であった。
子ども夏休みが始まる前の平日の正午頃の入場であったが、先着500名には「オリジナル限定グッズ」がもらえた。聞いてみたらなんと496番目ということだった。セーフ(笑)
■『サンダーバード』はパペット・アニメーションの傑作
サンダーバード(Thnderbid)とは言うまでもなくパペット・アニメーションの傑作である。小学生時代、男の子であれば熱中して見ていた番組だ。プラモデルも爆発的に流行ったものである。
1960年代はパペット・アニメーション全盛時代だった。パペットとは人形のこと、つまり人形劇をアニメ化した作品のことである。NHKで放送していた井上ひさし原作の『ひょっこりひょうたん島』などもその一つだ。
だが、『サンダーバード』が傑出していたのは、たんなる人形劇というよりもドラマ性のきわめて高い作品であり、しかも臨場感のつよい爆発シーンなどがふんだんにあったことだろう。子どもの頃は、それが人形劇だとか、特撮だとかなにも考えることもなく、サンダ^バードの世界に没入していたものだ。
そしてまたこれは日本のすごいところなのだが、主題歌も日本語の歌詞に代えて歌われていたので(・・こんなのは日本だけ!)、子どもの頃、サンダーバードは日本の作品だと思い込んでいたほどだ。ガイジンが主人公であろうと、子どもというものはまったく違和感を抱かないもののようだ。
そう、サンダーバードは英国の作品なのである! 米国ではなく英国! パペット・アニメーションの傑作は英国で制作されたのであった。
なるほどレディ・ペネロープがロンドン・エージェント、その乗り物FAB1がロールスロイスの改造車、そして執事の存在など英国社会を反映したものになっている。
(第25話に登場する MI.5 は英国情報機関。その接点がレディ・ペネロープ)
冷戦崩壊まであまり知られることはなかったが、じつは旧ソ連圏、なかでもソ連(=ロシア)とチェコはパペット・アニメーション王国であった。日本の人形劇は、むしろ戦後の民主主義教育をつじた旧ソ連圏との交流のほうが意味合いとしては大きかったかもしれない。指人形もふくめた人形劇にかんしてはロシアもまた一級である。
■「サンダーバード展」について
今回の「サンダーバード展」は科学未来館での開催ということに特色がある。科学とのかかわりが大きなテーマなのである。
前半は、往年の『サンダーバード』ファン向けのノスタルジー喚起型の展示、後半は『サンダーバード』に使用されている技術と2013年現在の技術との比較展示。後半はやや説明文に依存したパネル展示が多く、ややインパクトに欠けるところがあった。
前半の『サンダーバード』ファン向けの展示は、サンダーバード1号、2号、3号、4号、5号に、FAB1などの模型展示と説明などに、特撮にかんする展示など。国際救助隊サンダーバードの基地があるトレーシー・アイランドの立体模型はよかった。
(トレーシー・アイランドの立体模型 サンダーバード2号発車中!)
ただ、子ども時代にいちばん印象のある、サンダーバードの隊員の写真パネルがピコピコして「パパ!」としゃべるシーンが復元展示されてなかったのは残念。わたし的にはなんだか画竜点睛を欠いた展示のように思われてならなかった。
あとはプラモデルの表箱の装画を担当した異能のSF絵師・小松崎茂の作品の展示など、先にも書いたがプラモデル作成に熱中していた時代を想起させてくれるよい展示であった。
今回の展示は試みとしてはきわめて面白いものなので、さらなるパワーアップのうえで第二弾をお願いしたいところである。
結論というわけではないが、なんといってもサンダーバード2号。子どもの頃の刷りこみというものはあなどれないものだ。どこの国の作品であろうが、熱中させるものがある作品がすぐれた作品なのである。
これほど息長く愛され続けている作品もなかなかないのではないだろうか?
(サンダーバード2号 考えてみたらナマズみたいな形だ)
開催期間: 2013年7月10日(水)~9月23日(月)
開催場所: 日本科学未来館 1階 企画展示ゾーンa・b
開催時間: 午前10時~午後5時(入館は閉館時間の30分前まで)
休館日: 火曜日(ただし、祝日と春・夏休み期間中は開館)
入場料: 共通料金(当日)大人 1,300円、18歳以下 700円
<関連サイト>
「サンダーバード博」(東京・科学未来館) オフィシャルサイト
サンダーバード OP(日本放送当時版) & ED (日本語歌詞)
Thunderbirds Are Go !!! (英国オリジナルバージョン)
(お土産には「サンダーバードまんじゅう」などいかが?)
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(2012年7月3日発売の拙著です)
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