昨日(2013年7月24日)現地時間の9時に発生したスペインの特急列車脱線事故がたいへん痛ましい。死者が77人、負傷者が100人以上の大事故となっています。(*26日現在では死者80人)。
以前にはマドリードでも通勤列車の爆破テロがありましたが、今回はテロではなかったようです。200km近い高速を出した特急列車が急カーブを曲がり切れずに脱線したと報道されてます。2005年の福知山線の脱線事故を思い出してしまいます・・・
http://www.asahi.com/international/update/0725/TKY201307250014.html
ところで、事故の起こったスペイン北部のサンティアゴ・デ・コンポステーラはカトリックの巡礼地。サンティアゴはスペイン語で聖ヤコブのことだそうで、ちょうど7月25日が聖ヤコブの日なので世界各地から巡礼者が集まってきていた最中の事故だったようです。
「聖ヤコブの日」(毎年7月25日)とは、エジプトで亡くなったイエスの使徒ヤコブの遺骸が、9世紀にスペイン北部で発見されてサンティアゴに移葬された日とされています。
いまから20年以上前の1991年のことですが、わたしもマドリードから列車でサンティアゴ・デ・コンポステーラを往復したことがあります。わたしが乗ったのは深夜にマドリードを出発して現地には早朝に着く列車でした。当時はまだ世界遺産にはなっていなかったと思います。
サンティアゴ・デ・コンポステーラは、9世紀から建築がはじまった美しいロマネスク様式の教会建築が現在まで保存されており、ひじょうに風情のあるところです。本来はフランスから「歩き巡礼」するのが正式なのですが、なかなか時間には恵まれないのでそれは実現していません。
上掲の写真はそのとき現地で購入したスペイン語のガイドブックと巡礼者をかたどった金属製の置物。中世においてはサンティアゴ巡礼者は、貝と瓢箪(ひょうたん)のついた杖をもつのが目印だったそうですね。
日本でいえば四国巡礼の歩き遍路の「同行二人」の笠と杖のようなものですね。中世のサンティアゴ巡礼では、行き倒れてそのまま死ぬ人も少なくなったようです。五体投地で尺取り虫のように進むチベットのカイラス山巡礼よりかは体力的にはラクなはずなのですが・・・。
サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼は近世になってからはすっかり衰退してしまったようで、むかし読んだゲーテの『イタリア紀行』のなかに、乞食のような巡礼者を見かけたシーンがでてきたのを覚えています。18世紀末のことです。
今回の悲惨な大事故をうけて、ことしの「聖ヤコブの日」関連行事はすべて中止になったようです。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたします。
サンティアゴ・デ・コンポステーラには、またぜひ行ってみたいです。今度は巡礼の道を歩いてみたい。
<関連サイト>
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路(wikipedia日本語版)
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