(2010年に角川文庫から出版された自伝マンガ)
マンガ界の巨星・水木しげる先生がついに逝ってしまった。享年93歳。2015年11月30日のことだ。
小学生の頃、白黒の実写版テレビドラマ『悪魔くん』や『河童の三平』、白黒アニメの『ゲゲゲの鬼太郎』を見て育った世代としては、まことにもって残念としかいいようがない。
なんどもテレビアニメとしてシリーズ化された妖怪ものの『ゲゲゲの鬼太郎』がもっとも有名で、このほか「戦記もの」も有名だ。このテーマについては、水木しげるの「戦記物マンガ」を読む(2010年8月15日)と題したブログ記事ですでに書いている。戦争体験抜きに「水木ワールド」を語ることはできないのだ。
一般的には「妖怪もの」で有名だが、「神秘もの」というジャンルも多数ある。『水木しげるの古代出雲(怪BOOKS)』(水木しげる、角川書店、2012)は、待ちに待っていたマンガだ! に書いたが、出雲のある島根県の近くに生まれたため、「あっち側」の世界への感受性がとりわけ強い。
「妖怪もの」「戦記もの」「神秘もの」が「水木ワールド」の主要部分を形づくっているが、「自伝もの」もまた多い。
マンガ 『ビビビの貧乏時代-いつもお腹をすかせてた!』(水木しげる、ホーム社漫画文庫、2010)-働けど働けど・・・に収録されたマンガは、マンガ家としての貧乏時代を描いた作品集だが、「昭和もの」といっていいかもしれない。マンガに描かれた世界は時代の証言でもある。
「東京オリンピック」(2020年)が、56年前の「東京オリンピック」(1964年)と根本的に異なることには、『墓場の鬼多郎』(1964年)からのシーンを引用してある。高度成長時代の貴重な証言と読むこともできるだろう。
重要なジャンルである「神秘もの」については、いまだブログ記事を書いていないので、これはかならず書いておきたいと思う。
水木先生は、「あっち側」の世界と「こっち側」の世界をいったりきたりしているような人だったのに、ついに行ったきりになってしまったなあ、と。それが訃報を知ったときの感想だ。
「こちら側」の世界(=現世)においては水木先生の新作が読めなくなるのは残念であるが、残された膨大な作品は「日本人全体の財産」として、いや「世界遺産」として、長く後世に伝えてゆきたいものだ。
ご冥福を祈ります。合掌。
と書いたものの、どうも「幽冥境を異にする」という気がしないのだなあ、不思議なことなのだが。水木先生が描いてきた世界と同様に・・・。
「死んだ人は長く会っていないだけ」という感覚を、昔からもっているわたしが変わっているのかな、という気がしなくもないのだが、一般的にいっても、写真から映像へと進化し、さらにネットの浸透で生前の映像が繰り返し再生される現在、生と死の境目が不明瞭になってきているのではないか、という気がする。
これもまた「近代」が終わったことを如実に意味しているのではないかしらん。水木しげる先生は、「近代」に生きていながら、「前近代」への回路をつけてくださった方なのである。それは「超近代」への回路でもあったのだ。
これがまあ、結論めいたものとなるのだろうか。
<関連サイト>
水木しげるさん死去(朝日新聞)
・・関連新聞記事リンク集
ゲゲゲの鬼太郎(オープニング主題歌 (YouTube)
・・なんといっても1968年のファーストシリーズが最高! 水木しげる先生の訃報を伝えるテレビ番組では、1985年バージョンのカラー版の『ゲゲゲの鬼太郎』を流しているが、ファーストシリーズをリアルタイムで見ていた世代にとっては、「あれじゃないんだよ!」といいたくなる。 なんといっても1968年の白黒版のほうがいい。猫娘というキャラクターが登場する前のバージョンだ。おどろおどろしさとコミカルさがあいまって、いい味出しているのだ。作曲者のいずみたく先生がみずからハーモニカでこの曲を吹いてみせてくれたことは、わたしの少年時代のよい思い出のひとつ
悪魔くん(オープニング主題歌 (YouTube)
PS 「水木しげる サン お別れの会」
<日時>平成28年1月31日(日曜)14時より18時まで
<場所>東京都青山葬儀所
詳細は、ウェブサイトを参照。
(2016年1月10日 記す)
<ブログ内関連記事>
合気道・道歌-『合気神髄』より抜粋
・・神秘体験の豊富な合気道開祖の植芝盛平のことは水木しげる先生は取り上げていないが、出口王仁三郎のもとで霊的な修行をした弟子であった
『鉄人を創る肥田式強健術 (ムー・スーパー・ミステリー・ブックス)』(高木一行、学研、1986)-カラダを鍛えればココロもアタマも強くなる!
・・肥田春充(ひだ・はるみち)という超人のことは、水木しげる先生は取り上げていない
マイク・タイソンが語る「離脱体験」-最強で最凶の元ヘビー級世界チャンピオンは「地頭」のいい男である!
・・・・この人物のことは、水木しげるは取り上げていない
『奇跡を起こす 見えないものを見る力』(木村秋則、扶桑社SPA!文庫、2013)から見えてくる、「見えないもの」を重視することの重要性
書評 『オーラの素顔 美輪明宏のいきかた』(豊田正義、講談社、2008)-「芸能界」と「霊能界」、そして法華経
・・スピリチュアル世界を代表する人物の一人が美輪明宏
書評 『テレビ霊能者を斬る-メディアとスピリチュアルの蜜月-』(小池 靖、 ソフトバンク新書、2007)-宗教社会学者が分析した「テレビ霊能者」現象
「魂」について考えることが必要なのではないか?-「同級生殺害事件」に思うこと ・・目に見えない世界を軽視してはいけない
(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)
end