(船橋大神宮の狛犬 筆者撮影)
狛犬はイヌじゃない。ほんとはライオンだ! 上掲の狛犬をじっくり見て欲しい。明らかにそれはイヌではないことがわかるはずだ。右足で球体を押さえている狛犬は、獅子舞の獅子の顔にそっくりではないか!
そう、狛犬は唐獅子だ。獅子である。つまるところ、それはライオンなのだ。
日本人は、見たことのない獅子(ライオン)の像を、狛犬と名付けて神社の守護として安置してきたのである。
唐獅子ということは、つまるところ中国の獅子ということだ。では、中国の寺院には獅子はいるのか?
中国の首都・北京に、雍和宮(ようわきゅう)という巨大なチベット仏教寺院がある。もともとは、清朝初期の康熙帝の時代、皇子時代の雍正帝の居館として建築されたものだ。チベット仏教寺院と中国式建築の折衷的要素がある。
その境内に獅子の像が安置されている。右足で球体を押さえた獅子の像。よく見て欲しい。狛犬とまったく同じではないか!
(北京最大のチベット仏教寺院 雍和宮の獅子像 筆者撮影)
狛犬らしきものはタイにもある。バンコクの王宮には、前足で球体を押さえてはいないが、似たようなポーズの狛犬(唐獅子?)がある。タイは基本的にインド文明圏に属するのだが、タイが位置するインドシナ半島という名称が示しているように、インドとシナ(=中国)が陸続きで交差する地域でもある。この唐獅子も、中国文明がもたらしたものだろう。
沖縄にシーサーという魔除けがある。姿形を見れば明らかにそれが獅子であることがわかる。唐獅子である。シーサーとは獅子(しし)がなまったものであろう。狛犬とそっくりだが、それを狛犬とは言わずにシーサー(獅子)という。
中国から伝来したものだろうが、唐獅子とも言わないのも興味深い。空手はかつては唐手と表記していたらしい。中国大陸から伝来した武術だからだ。だが、なぜだかシーサーには唐はつかない。
本土の狛犬と、沖縄(琉球)のシーサーは、別ルートで伝来したのだろうか?
沖縄のシーサーは、もともとは獅子。さらにいえば、獅子とは、サンスクリット語のシンハーがなまったものだという。シンハといえばタイを代表するシンハ・ビールのロゴを想起する。日本人はシンハ・ビールというが、タイ人はビア・シンという。
文化の伝播という観点から、日本独特と思いがちな事物について再考してみることをお薦めしたい。
(船橋大神宮の狛犬の左隣に百度石 筆者撮影)
狛犬らしきものはタイにもある。バンコクの王宮には、前足で球体を押さえてはいないが、似たようなポーズの狛犬(唐獅子?)がある。タイは基本的にインド文明圏に属するのだが、タイが位置するインドシナ半島という名称が示しているように、インドとシナ(=中国)が陸続きで交差する地域でもある。この唐獅子も、中国文明がもたらしたものだろう。
(バンコクの王宮にて 筆者撮影)
沖縄にシーサーという魔除けがある。姿形を見れば明らかにそれが獅子であることがわかる。唐獅子である。シーサーとは獅子(しし)がなまったものであろう。狛犬とそっくりだが、それを狛犬とは言わずにシーサー(獅子)という。
中国から伝来したものだろうが、唐獅子とも言わないのも興味深い。空手はかつては唐手と表記していたらしい。中国大陸から伝来した武術だからだ。だが、なぜだかシーサーには唐はつかない。
本土の狛犬と、沖縄(琉球)のシーサーは、別ルートで伝来したのだろうか?
(屋根に設置されたシーサー Wikipediaより)
沖縄のシーサーは、もともとは獅子。さらにいえば、獅子とは、サンスクリット語のシンハーがなまったものだという。シンハといえばタイを代表するシンハ・ビールのロゴを想起する。日本人はシンハ・ビールというが、タイ人はビア・シンという。
(シンハ・ビールのロゴ)
ローマ字で Singha と書いて「シンハ」と読む。だが、鼻濁音の g音をリエゾンで発音すれば「シンガ」である。シンガといえばシンガポール。シンガポールの観光名物といえばマーライオン。クチから水を吐き出している上半身がライオン、下半身が人魚のような怪物(?)である。マーライオン(merlion)のマー(mer)とは、マーメイド(mermaid)のマーと同じだ。
(シンガポールのマーライオン Wikipediaより)
シンガポールのマーライオンは観光目的として作られたのであって寺院を守っているわけではない。だが、おなじ東南アジアでもミャンマーにいけば、お寺には必ずといっていいほどあるのがライオンだ。日本の神社と同じように、二頭で対になって安置されていることが多い。正式名称をなんというのか知らないが、日本人はミャンマー・ライオンといっている。
(ミャンマーのチャウタン水中寺院にて筆者撮影)
寺院以外でも正門にライオン像が置かれているこtもある。日本の三越百貨店の銀座本店のライオン像が有名だが、HSBC(香港上海銀行)本店にもライオン像がある。これは中国というよりも、英国的なライオンというべきか。ちなみに、三越百貨店銀座店のライオン像は、英国の彫刻家によって製作されたものだ。
(HSBC香港本店ビル前のライオン像 筆者撮影)
狛犬はイヌではなく、ライオンなのだということは、東アジアから東南アジアに」脚を伸ばしてみれば一目瞭然である。
『獅子-王権と魔除けのシンボル- (アジアをゆく)』(荒俣宏、 大村次郷=写真、集英社、2000)という写真集を見れば、さらに南アジアから中東に至るまでライオンが魔除けのシンボルであったことがよくわかる。
南アジアのインドのシク教徒は、すべてシン(Singh)という名前である。プロレスラーのタイガー・ジェット・シンもまたシク教徒だ。
南アジアのインドのシク教徒は、すべてシン(Singh)という名前である。プロレスラーのタイガー・ジェット・シンもまたシク教徒だ。
中東から西に移動すれば、西欧では伝統的に王家や貴族の紋章にライオンが描かれていることは周知の事実であろう。英国王室の紋章は、ライオンとユニコーン(一角獣)が向かい合ったデザインになっている。
(英国国章 Wikipediaより)
狛犬はイヌではなく、ライオン。そう考えて狛犬に接すると、東アジアから東南アジア、南アジアから中東、さらには西欧に至るまで、じつにユーラシア全域に拡散したシンボルの一つとして位置づけられることが見えてくるのである。
文化の伝播という観点から、日本独特と思いがちな事物について再考してみることをお薦めしたい。
日本は、シルクロードの吹きだまりと言われるが、陸路か海路かは問わず、たしかにその通りなのだ。日本は島国だが、けっして文化的に孤立しているわけではないのだ。
(船橋大神宮の狛犬の左隣に百度石 筆者撮影)
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『新版 河童駒引考-比較民族学的研究-』(石田英一郎、岩波文庫、1994)は、日本人がユーラシア視点でものを見るための視野を提供してくれる本
・・ユーラシアと馬の関係
初詣は1月2日にするものだ!-2018年の初詣は久々に船橋大神宮(=意富比神社)にて
・・太陽神信仰は東アジア全域に拡がっていること
(2018年1月6日 情報追加)
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