『聖者たちの食卓』(2011年、ベルギー)をようやく見ることができた。Amazon Prime 特典で無料になったため視聴。
インドのグジャラート州アムリトサルにあるシク教の総本山「ハリマンディル・サーヒブ」(=黄金寺院)。巡礼者や旅行者のために、毎日(!)なんと10万食(!)が、しかも無料(!)で提供されている。驚くべきことに600年間も続いているのだ!
(黄金寺院の全景 映画よりキャプチャ)
農作業の収穫シーンから始まり、食事の下ごしらえ、巨大な給食センターのような厨房、そして無料食堂での食事風景。効果音楽もなく、淡々と追っていく1時間5分の映像。だが、この映像そのものに引き込まれるのだ。
ターバンを巻いてヒゲを伸ばしたインド人男性といえば、ほぼシク教徒である(女性はスカーフ)。色とりどりのターバンや服装がカラフルで、それだけで美しい映像になっている。
「無料食堂」では、老若男女問わず、すべての人びとが一堂に会して食事をとる。食事の準備をするのも老若男女で無料奉仕。 映画の原題は、Himself He Cooks(神自身が食事をつくる)。これは、黄金寺院の入り口に書かれているスローガンから取ったものだ。
(Himself He Cooks 映画よりキャプチャ)
Himself He Cooks Himself He Places It On Platter & He Himself Eats Too(神自身が食事をつくる。神自身が皿に盛り、そして食べる)。
シク教では、神の下ではすべての人が平等であることが教義にあるだけでなく、無料食堂での食事をつうじて教義を「見える化」しているのである。
シク教徒の名前はすべてシン(Singh ライオンのこと)であることもまた、同じ趣旨である。
また、このようなスローガンも掲示されている。
The Lord Himself Is The Farm Himself Is The Farmer Himself Grows & Grinds The Corn(神は農場 神は農民 神は穀物を育て粉にひく)
(シク教の創始者ナーナク 映画よりキャプチャ)
シク教は、インドのヒンドゥー教の多神教世界に支配者とともに入ってきた一神教のイスラームと融合し、16世紀に成立した宗教。カースト制度を否定し、宗教儀式や偶像崇拝、苦行やヨーガ、出家や迷信も否定、あくまでも世俗の職業で徳を積むことを奨励する。
(「無料食堂」での食事風景 映画よりキャプチャ)
この記録映画は、食事そのもの重点を置いたものだが、シク教について知るための映像資料でもある。まずはこの映像を視聴して、そのスケール感に圧倒されることが第一歩となる。
<関連サイト>
公式サイト 『聖者たちの食卓』
黄金寺院(ハリマンディル・サーヒブ) Wikipedia
シク教 Wikipedia
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