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2021年11月28日日曜日

書評『渋沢栄一伝』(幸田露伴、岩波文庫、2020)-江戸っ子だった明治の文豪が書いた渋沢栄一伝

 
『渋沢栄一伝』(幸田露伴、岩波文庫、2020)をスキマ時間をつかって断続的に読む。昨日読了。  

明治を代表する文豪・幸田露伴が渋沢栄一の伝記を書いていたことは、この文庫本が昨年出版されるまでまったく知らなかった。原本は、1939年の出版。頼まれて執筆を引き受けたのだという。 

さすが漢文漢籍の豊かな素養の持ち主であった幸田露伴のものだけに、格調が高い名文だが、難読漢字のオンパレードである。だが、漢字にはルビが振られているので心配無用だ。文脈に沿って意味を取れたらそれで十分だろう。ただし、小見出しもなく、行替えが極端に少ないのが問題ではある。 

渋沢栄一がつくった漢詩を引きながら、漢詩に託された真情を描けるのも、明治の文豪ならではだろう。ちなみに、渋沢栄一(1840~1931)は幸田露伴(1867~1947)より27歳年長である。約1世代の違いとなる。 

渋沢栄一には、みずからが語って口述筆記でまとめられた『雨夜譚(あまよがたり)』という自伝がある。語り口の面白さもあって読ませる本なのだが、自伝ならではの問題点もある。記憶違いや、都合の悪い話は省略してしまう傾向があることだ。  

この点にかんして露伴は、執筆の最中にこう語っていたという。 文庫解説から引用しておこう。

今までもらっている資料も、若い頃のものはいいが、晩年のは渋沢が自分で話したことが主になっているから、人間六十を過ぎると確なようでも、どうもひとりよがりになり勝ちなものさ

さすが『努力論』など人生論も書いている、人生の大家ならではの洞察力だ。

渋沢栄一を称賛することを期待しているはずの依頼主に忖度することなく、資料にもとづいて、事実を事実として淡々と記しながらも読ませる伝記になっているのは、さすがに見事な筆力だと大いに感心するものがある。

小説家の露伴ではあるが、想像力を膨らませて小説にすることなく、随筆的に取り組んだという。おなじく明治の文豪であった 森鴎外的にいえば「歴史其儘(そのまま)」というやつだろうか。

露伴は、渋沢栄一は「むしろ時代の児(こ)として生まれたと云った方が宜しいかとも思われる」と書き、この姿勢を最後まで一貫させている。 まさに時代が生み、時代が育て、時代を切り開いたのが渋沢栄一であった。これまた、見事な歴史把握であり、歴史解釈であるというべきだろう。 

事実を淡々と記したこの伝記だが、読んでいると「江戸っ子・露伴」の旧幕への感情がにじみ出ているのが垣間見られて面白い。栄一が仕えた一橋慶喜との関係だけでなく、慶喜とのあいだをつないだ平岡円四郎の取り上げ方に、それがよく現れているのだ。 

幕末から明治維新までの激動期を生き抜いて「日本資本主義の父」となった渋沢栄一。「時代の児」であった渋沢栄一という傑出した人物を描くことは、いっけん断絶しているとみえる明治維新前後の時代を、じつは連続したものと捉えることを可能にしているのである。 

NHK大河ドラマ「青天を衝け」も終盤に入ってきたが、この本でその復習をしてみるのもいいかもしれない。 時代が現代に近いだけに、今年2021年の大河ドラマは脚色がありながらも、かなり歴史的事実に忠実に描いているだけではない。 

渋沢栄一を描くことは、「最後の将軍・慶喜」を描くことであり、「薩長中心史観」へのアンチテーゼにもなっているのである。 

大河ドラマの放送にあわせて初めて文庫化された作品だが、意図せず時代の空気の変化を反映しているのかもしれない。 文庫版につけられた「人名解説」が索引の役割も果たしているので、一粒で二度おいしい本になっている。




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