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2021年11月3日水曜日

現代史の資料として「交渉の内幕」を記録に残すことは関係者の責務-『岡本行夫 現場主義を貫いた外交官』(五百旗頭真/伊藤元重/薬師寺克行、朝日文庫、2020)と『フテンマ戦記-基地返還が迷走し続ける本当の理由』(小川和久、文藝春秋、2020)

 
 
積ん読のままとなっている本を読む。昨年(2020年)に出版された政治的意志決定と実行にかんする本を2冊よんだ。いずれも、現代史の資料として「交渉の内幕」を記録に残すことは関係者の責務と認識していた「当事者」による記録だ。

*** 

まずは『岡本行夫 現場主義を貫いた外交官』(五百旗頭真/伊藤元重/薬師寺克行、朝日文庫、2020)  元外交官で外交評論家であった岡本行夫氏への聞き取りの記録。

まことに残念ながら、昨年2020年4月24日に新型コロナ感染症でお亡くなりになったため(*なんと、わたしの父が亡くなった前日だ)、「追悼」の意味で文庫化された聞き取りは2005年から2008年にかけて行われ、2008年に単行本化されていたらしい。 


岡本氏は大学の大先輩にあたる人。直接本人を存じ上げていたわけではないが、直接知っている先輩の同級生という形で間接的には知っていた。

そんなこともあって、ずいぶん以前から勝手に親近感を感じてきた。マスコミに登場することも多かったので、その名前とキラキラした活躍ぶりについては記憶している人も少なくないはずだ。 

大学卒業後の1968年に外務省に入省し、日米関係を中心に担当したキャリア外交官だが、45歳で退官して独立した。その後も、橋本内閣や小泉内閣で「首相補佐官」を歴任した。

橋本内閣では「沖縄の米軍基地問題」、小泉内閣では「イラク戦争」を担当、その熱い奮闘ぶりが政治学者たちのインタビューによって、本人の証言として引き出されている。編者による綿密な注がつけられており、オーラルヒストリーとしての記録という位置づけがなされている。 

もちろん、事実関係が精査されているとはいえ、本人の「主観」による解釈であり、岡本氏の認識とは異なる解釈は当然ありえるだろう。 

外交問題は、内政問題という政治と密接にかかわっているわけであり、政治の世界の内幕にかんしては、なおさらだろう。 

文庫版には「特別寄稿 岡本行夫さんを悼む」として16名の追悼文が掲載されている。徹底的に「現場主義」を貫いた岡本氏の仕事のスタイルを知ることができる。 読みごたえのある内容の本だった。 


目 次  
文庫版まえがき 薬師寺克行
第1章 アメリカとの出会い
第2章 外交の世界を知る
第3章 冷戦時代の安全保障の現実
第4章 自立的外交への挑戦
第5章 屈辱の湾岸戦争
第6章 沖縄の苦しみとともに
第7章 アメリカの戦争
〔解題〕日本の国際的役割の追求--岡本行夫(五百旗頭真) 
文庫版あとがき--外務省の枠に収まらなかった外交官(薬師寺克行)
特別寄稿 資料 岡本行夫氏関連年表 




***

 岡本行夫氏のインタビューによる証言録を読んだあとに、『フテンマ戦記-基地返還が迷走し続ける本当の理由』(小川和久、文藝春秋、2020)をつづけて読む。  


小川和久氏は軍事アナリストで、『在日米軍-軍事占領40年目の戦慄』(小川和久、講談社、1985)は、出版された直後に読んで、大いに目を開かれる思いをしたものだ。 

『日米同盟のリアリズム』(文春新書、2017)もまた読みごたえのある内容だった。軍事知識のリアリズムを前提にして、政治経済まで視野に入れた分析は信頼に値するものであり、安全保障と危機管理の分野では、第一人者である。 

本来は、『岡本行夫 現場主義を貫いた外交官』とは別個の書籍として取り上げるべきだろと思うが、「沖縄の基地問題」の解決にあたって、岡本行夫氏との見解のズレが大きいので、その点の関心もあって読むことにした次第だ。 

同年生まれの岡本氏とは見解を異にするとはいえ、小川氏もまた、現代史の資料として交渉の内幕を記録に残すことは関係者の責務という認識をもっているようで、交渉の経緯が現存者も含めて実名入り(!)で詳細に書かれている。 

その岡本氏にかんしては、367ページの本書で12ページも割いて「首相補佐官 岡本行夫」として取り上げている。小川氏の見解は、以下のようなものだ。引用してみよう。 

実を言えば、岡本氏は安全保障問題については意外なほど知見に乏しい。しかし、外務省安全保障課長、北米第一課長という経歴と、自らも安全保障に詳しいような言動をする中、政財界とマスコミが「エキスパート」として祭り上げるようになった。ここに普天間問題の悲劇のひとつがある。岡本氏自身にとっても悲劇だったかもしれない。

リアルな軍事知識を欠いた官僚や、元官僚を信頼して頼り切った政治家たちの罪は大きいと、小川氏は見ているのである。

小川氏が岡本氏についてページを割いて取り上げている理由は以下のとおりだ。 

官僚だけではないが、きらりと光る部分を備えた人物を客観的にとらえるためには、負の部分をも直視して相対的な評価を下す必要があることは言うまでもない。

この発言には全面的に賛成だ。小川氏の見解に対して、岡本氏自身の反論やコメントが欲しかったところだが、小川氏の著者が出版された2020年3月の翌月4月に、岡本氏は亡くなってしまった。先にも触れたように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死である。まことにもって残念としかいいようがない。 

『フテンマ戦記』を最初から最後まで読んでみると、軍事知識のリアリズムを欠いた政治家や官僚の問題は、日本だけの問題ではないことがわかる。交渉のカウンターパートである米国側も似たような状況なのだ。

「現場」のリアルを知らないのである。 日本側のシロウトが米国側のシロウトと交渉して、普天間基地移転問題の当事者である米海兵隊の基地運用の実際について知らず、また知ろうともせず、机上のプランで不毛な交渉が延々と続いているのである。 

無責任きわまりない鳩山由紀夫元首相だけが記憶に残るが、迷走の原因はそれだけではなかったのだ。 いつまでたっても、最重要課題である普天間基地移転がまったく進展しない状況には、沖縄県民ではなくても、ため息をつきたくなる。 

『フテンマ戦記』は、普天間基地移転問題の迷走の原因を時系列にそって記述された記録だが、大きなテーマもさることながら、ディテールが興味深い。 

岡本行夫氏は、先にも触れたように、わたしにとっては大学の大先輩にあたる人で、人物物評価にあたっては、ある種の「学縁バイアス」が働きがちだが、小川氏の場合も同志社大学神学部の後輩にあたる作家の佐藤優氏(当時は外務省主任分析官)には、似たようなバイアスが働いていたようだ。詳細は、直接読んで確かめてみるといい。 

現代史というものは、ある意味では現在進行形の歴史であるが、そうはいっても、普天間基地移転問題が始まった1996年は、すでに四半世紀も前のできごとだ。すでに歴史の闇のなかに消えかけている。 記憶を新たにするためにも、ぜひ読むことを薦めたい。

ただ残念なのは、「人名索引」がついていないことだ。『フテンマ戦記』も『岡本行夫 現場主義を貫いた外交官』も、その点は大いに問題である。日本の出版物全体にかかわる問題だ。 たしかに電子版なら検索はできるが、ある特定の人物がどの程度まで量的に取り上げられているか知るには、索引という形で整理されていることが望ましい。

それにしても、政治の内部腐食もまた現在進行形だ。はたしてこの危機を乗り越えることはできるのだろうか・・・。 


目 次
はじめに なぜ普天間返還は進まないのか?
序章 チャンスは4回あった
第1章 迷走への序曲-自民党本部1996
第2章 小渕官邸 1998~2000
第3章 小泉・安倍・福田・麻生官邸 2001~2009
第4章 鳩山官邸 2009~2010「トラスト・ミー」の陰で
第5章 沖縄クエスチョン 1999~2011
第6章 鳩山だけが普天間を迷走させたのか? 2010~2019 
あとがき 信頼を回復する道
普天間移設年表




 


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