『超訳 自省録』の韓国語版がついに出版された。タイトルは、『초역 명상록』(超訳冥想録)。ハングルをあえてカタカナで表記すれば、「チョヨク ミョンソンロク」となる。
原本は、2021年発売の『超訳 自省録エッセンシャル版』(ディスカヴァー社)。現地での出版日は、昨年2024年の12月15日。1ヶ月遅れでサンプルが権利関係いっさいを仕切っている日本の版元を経由して送られてきた。
当初の出版予定日は2024年9月であり、しかも当初の韓国語版のタイトルは『초역 자성록(超訳 自省録)』であった。「チョヨク チャソンロク」である。
どうやら、『自省録』の韓国版は多数あるので、差異化を図るため『冥想録』に変更したようだ。日本でも、明治時代には『冥想録』として流通していたから、とくに問題はない。
韓国においては、16世紀の李朝朝鮮時代の儒者で1000ウォン札に肖像画のある李退渓(イ・テゲ)に『自省録』があるので、混乱を避けることもあるのかもしれない。ちなみに、李退渓(イ・テゲ)の『自省録』は日本語訳され、平凡社東洋文庫から刊行されている。
(李退渓の『自省録』 画像をクリック!)
ようやく韓国での出版が実現することになった。韓国語版は、これが人生初となる。
『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(ディスカヴァー社、2017年)の韓国語版は、残念ながら途中で立ち消えになってしまったからだ。
ちなみに、台湾で発売された『超譯沉思錄』(方舟文化、2020年)は、単行本版の『超訳自省録』の中文繁体字版だ。
これで『超訳自省録』は、台湾版につづいて韓国版も登場。翻訳された拙著は、これで総計3冊(台湾2冊、韓国1冊)となった。
■韓国語版の校正はテクノロジーの進歩で可能に。「自分史」における韓国語との取り組みについて
韓国語版の校正を開始したのは、昨年7月31日のことだ。韓国語で書かれた文章の内容をチェックする必要が生じたわけだが、仕事でかかわるのは20年ぶりくらいかな?
韓国語は、語順が日本語とほぼおなじだし、初級文法はいちおう自学自習した(つもりな)ので、韓国語の文章を「自動翻訳」にかければ、だいたいのところは理解できる。「自動翻訳」のおかげで、著者本人による韓国語版の校正が可能となったわけだ。
韓国語版の校正段階で日本側の窓口をつうじて何度もやりとりをしたが、それにしても、同音異義語の多い韓国語はややこしい。漢字語の読みは、日本語と違って韓国語では1通りしかないのだが、ほぼ漢字を廃絶してしまった現在、ハングル表記の漢字熟語は文脈のなかで判断しないと正確に理解できないのだ。
とはいえ、ケンチャナヨ~(=ドンマイ)と済まさせるわけにはいかない。日本人として「職人意識」が目覚めてくるのでね。日本語の訳にしっくりこなければ、英語に訳してみる。そうすれば、だいたい近似値を得ることができる。逆もまたしかり。
特定の外国語に精通しているわけではない者にとって、テクノロジーの進歩はじつにありがたい。それにしても、いい時代になったものだと思う。テクノロジーの進歩には感謝(カムサ)ハムニダ!
というわけで、韓国語版の「はじめに」は、かなりローカライズした内容に書き換えることが可能となったわけだ。
(1994年前期のテキスト マイコレクションより)
そんなこともあって、その昔に自学自習した『NHKラジオ アンニョンハシムニカ? ハングル講座』のテキストをコンテナ倉庫(ストレージ)から引っ張り出してきた。
1994年の放送である。もう30年も前になるのか。当時は「韓流ブーム」など存在すらなかった。K-POPS なるものも存在しなかった。
ラジオの語学講座の利点は、ちゃんと勉強できるということにある。テレビの語学講座は「お遊戯」のようなものなので、語学に親しむにはいいが、腰を据えて自学自習する人には向いてない。
当時の『NHKラジオ アンニョンハシムニカ? ハングル講座』の講師は、慶應義塾大学の渡辺キルヨン先生。4月から9月まで半年間の講座。
なんといっても、この先生が良かったのは、韓国語を母語としていて、しかも日本語に堪能なだけでなく、講座が開講されていた1990年初頭に流行していた韓国の歌を毎週取り上げてくれたことだ。
韓国社会は、1988年のソウルオリンピックを境に劇的に変化していったのだった。
そんなラジオ講座のテキストだが、あらためて眺めてみると、かなり韓国語については忘れてしまっていることに気がつく。
漢字語はハングルで表記されていても理解できるが、それ以外の固有語や細かい文法はかなり、いや、ほとんど忘れている。 韓国語は、ちゃんと勉強し直そうかな?
さすがに、いまから語学で飯を食おうなどとは思わないが、初級文法くらいは復習しておきたいものだ。
■韓国の書店で「平積み」!
さて、韓国語版の『超訳自省録』の話題に戻るが、韓国側の出版社からリアル書店の店頭に「平積み」になっている「『超訳 自省録』の韓国語版」の写真を送付していただいた。リクエストに応えていただき、感謝ハムニダ!
(禁無断転載)
撮影場所は、ソウルの「教保文庫」(キョボムンゴ)の江南店にて。「教保文庫」は韓国最大の書店チェーン。江南(カンナム)は、東京でいえば港区のような存在。江南店は、韓国最大の売り場面積の大型書店である。日本でいえば、丸善ジュンク堂書店のようなもの。
撮影日は、昨日(2025年1月14日)午後のことだが、昨年12月3日に「戒厳令」が発令され、「大統領による上からのクーデター」が不発に終わってから1ヶ月後になる。
本日(2025年1月15日)には、現職の大統領が拘束されるなど、政治の混乱状態がつづいているが、ソウルの書店のなかの空間はいたって平穏なようだ。
瞬間的に熱くなる傾向のある韓国の人たちも、書店のなかでは平静を取り戻すことができるのだろう。まさに本のもつ効用、さらにいえばストア派の古典のもつ効用といえるのかもしれない。
韓国最新情報でした。いや、正確にいえば、韓国の書店と書籍情報でした。
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